夫婦同姓合憲 司法判断と制度の是非は別だ

朝日新聞 2015年12月17日

「夫婦同姓」の最高裁判決 時代に合った民法を

婚姻や家族のあり方は時代とともに変わるものである。国の制度は現実に合っているか。個人を尊ぶ社会を築くためには、不断の見直しが欠かせない。

明治時代から続く民法の二つの規定をめぐり、最高裁がきのう判決を出した。問われたのは、憲法が定める「個人の尊重」と「両性の平等」に合うかどうかである。

結婚すると夫婦どちらかの姓を選ばなければならないとする750条について、合理性を認め、合憲とした。

男女の役割などが多様化し、家族像が大きく変化しているなか、この判決は時代に逆行する判断と言わざるを得ない。夫婦別姓を認めないことで、多くの不平等が生まれている現実を直視しているのか疑問である。

一方、女性だけに離婚後6カ月は再婚できないと定める733条がある。これについては、100日を超える部分が男女平等に反し、違憲だとした。

いずれの規定も1898(明治31)年施行の明治民法で定められた。戦後、基本的人権の尊重をうたった日本国憲法の下で新しい民法ができたが、二つの規定はそのまま残り、120年近く続いてきた。

再婚禁止規定は、生まれてくる子どもの父親が誰かという混乱を防ぐためにつくられた。しかし、医学が発達し、DNA型鑑定で親子関係がわかる時代を迎え、女性にだけ再婚禁止を課す根拠は揺らいでいた。

やっと禁止期間を短くすることは、司法による一定のチェック機能が働いたといえるが、それでも、今の時代に規定自体が必要なのかとの議論も残る。

新たな時代の民法はどうあるべきか、国会は真剣に論議を進めるべきである。

■憲法の番人の役割は

夫婦同姓を定める規定については5人の裁判官が、両性の平等などを定めた憲法24条に反すると述べた。3人の女性裁判官は、夫婦の96%が夫の姓を名乗るという不平等が起きている現実を踏まえ、「夫婦が別の氏を称することを認めない点で合理性を欠く」と指摘している。

「通称使用で不都合が一定緩和されている」などという理由で合理性を認めた多数意見は、およそ説得力に欠ける。

結婚後も夫婦が望めば別々の姓を選べる。そんな制度を盛った改正案を法制審議会がまとめたのは1996年のことだ。

しかし、「家族の崩壊につながる」などと保守系議員らが反対し、20年近くたっても実現の見通しは立っていない。

「結婚後も同じ姓で生き、同じ姓で死にたい」。そんな思いを抱えながら、苦しんできた人たちが、司法に救済の場を求めたのが今回の裁判である。

選挙で選ばれた代表でつくる国会が法改正を実現するのが民主主義の筋道ではある。しかし、一人ひとりの人権を多数決で奪うことはできない。

立法という民主的な政治過程を通じた解決が困難なとき、救済の手をさしのべるのが「憲法の番人」の役割であるはずだ。

■国際的な流れをみよ

夫婦同姓の規定を最高裁が合憲としたことは、法改正に動かない政治への免罪符にはならない。別姓を選べる制度に合理性がないとしたわけではない。

判決は「選択的夫婦別姓のような制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべきことだ」と述べている。この言葉を国会議員一人ひとりが、党派を超えて真剣に受け止めるべきだ。

国際社会の見る目は厳しい。日本政府は85年に国連の女性差別撤廃条約を批准したが、国連女性差別撤廃委員会から改正するよう勧告を受けてきた。

海外では、夫婦同姓を法律で義務づけている国はほとんどない。タイではかつて「結婚した女性は夫の姓を使う」と法律で定めていたが、憲法裁判所の違憲判断を機に05年に選択的夫婦別姓が導入されている。

国際的な流れをみても法改正に向けた議論を始めるときだ。

朝日新聞社の11月の世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成は52%で、反対の34%を上回り、20~50代のどの年代でも6割前後が賛成だった。若い世代になるほど抵抗感が少ない。

■女性に強いられる壁

女性の社会進出は進み、家族の形は多様化した。結婚したカップルの3組のうち1組が離婚する時代。男性が働き、女性が家事をするという家族モデルが時代に合わなくなって久しい。

ところが、姓を変えずに事実婚を選んだ人たちが様々な壁で苦労している。配偶者として相続人になれず、子どもが生まれても共同で親権を持つことができない。そんな女性たちの不利益をこれからも政治が放置し続けることは重大な怠慢である。

家族をめぐっては、無戸籍児など民法の規定が想定していなかった様々な問題が生じている。親や子どもが生きやすい社会にするには、民法をどう見直していくべきか。今回の判決を機に議論を深めていきたい。

読売新聞 2015年12月17日

夫婦同姓合憲 司法判断と制度の是非は別だ

日本社会に定着している夫婦同姓は合理的だ。そう結論づけた最高裁の判断は妥当である。

夫婦同姓を定め、別姓を認めていない民法の規定について、最高裁大法廷は合憲だとする判決を言い渡した。

事実婚の夫婦らが、同姓規定は個人の尊厳や男女平等を保障した憲法に反すると訴えていた。

大法廷が重視したのは、夫婦がどちらの姓を称するかについて、民法が夫婦間の協議に委ねている点だ。「男女間の形式的不平等は存在しない」と認定した。

夫婦が同じ姓を名乗るのは、同一の家族であることを示す意味合いがあるとも指摘した。いずれも、うなずける見解である。

社会での旧姓使用の広がりにより、「女性の不利益は一定程度緩和され得る」とも判断した。

今回の判決には、様々な受け止め方があろう。大法廷でも15人の裁判官のうち、5人が民法の規定を違憲だと判断した。

この中には3人の女性裁判官が含まれる。「多くの場合、妻のみが個人識別機能を損ねられている」と夫婦同姓を批判した。夫婦の96%が夫の姓を選んでいる現状を踏まえた意見だ。

旧姓を使い、仕事を続けてきた女性らが姓を変えたくないという心情は理解できる。

一方で、多くの国民が夫婦同姓を受け入れている現実もある。各種の世論調査では、別姓への賛否が、ほぼ拮抗きっこうしている。

法制審議会は1996年に選択的夫婦別姓の導入を答申した。だが、自民党内から「家族の一体感が損なわれる」との反対論が噴出し、法制化が長期にわたり見送られる異例の状態が続いている。

留意すべきは、最高裁の合憲判断と制度変更の是非とは、必ずしも論点が一致しないことである。生活に密着する法制の見直しは、国民の意識と歩調を合わせて検討されることが望ましい。

まずは社会の中で旧姓使用を認める範囲をより広げ、女性が働きやすい環境を整えるべきだ。

大法廷は今回、女性に6か月の再婚禁止期間を設けた民法の規定に対し、一部を違憲とする判断を示した。明治時代の旧民法施行以来、100年以上続いた制度の見直しを迫る歴史的判決である。

判決は、100日を超える部分を「過剰な制約」と断じた。離婚後100日が過ぎれば、生まれる子の父親が誰であるかの混乱は生じないとの判断からだ。結婚に対する制約は最小限であるべきだ。速やかな法改正につなげたい。

産経新聞 2015年12月17日

夫婦同姓「合憲」 家族の意義と「絆」守った

夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定について最高裁大法廷は合憲とする初判断を示した。

現行制度は、日本の伝統的な家族観に沿うもので社会に広く受け入れられている。夫婦が責任を共有して子供を育てていく家族の一体感につながる。それを崩す必要はない。最高裁の判断は妥当である。

最高裁は、夫婦が同一姓にすることは社会に定着し「家族の呼称として意義がある」と認め、「強制」などとする見方を否定した。また姓を変えることの不利益は旧姓の通称使用が広まることで「緩和され得る」とした。

夫婦同姓は、けっして男女差別を助長したり、個人の人格を傷付けたりするような制度ではないことも明確にされた。

最高裁は「この種の制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」とも指摘した。当然、伝統や社会の状況を踏まえて慎重に行うべきだ。

平成8年に法制審議会が、夫婦で同じにするか、旧姓をそれぞれ名乗るかの選択的夫婦別姓の導入を答申し20年近くがたっている。法改正されなかったのは、問題を放置したというより、十分な合意が得られないからだ。

産経新聞とFNNの最近の世論調査では選択的夫婦別姓に賛成51%、反対42%と賛否が分かれ、自分は別姓を「希望しない」という人が8割と圧倒的に多い。

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