日本とインドは、戦略的な利益を共有する大国だ。多角的な協力を着実に深めねばならない。
安倍首相が訪印し、モディ首相との会談で、原発、高速鉄道、安全保障などで連携する共同声明に署名した。
安倍首相は会談後、「日印新時代が始まる」と強調した。モディ首相は「日本企業の投資は飛躍的に前進するだろう」と語った。
特筆すべきは、日本からインドに原子力関連の資機材や技術を輸出する前提となる原子力協定の原則合意だ。インドは、米仏露や韓国などと協定を締結している。
インドは、深刻な電力不足の解消のため、原子力発電所の大幅な増設を計画中だ。日本の協力は、インドのエネルギー戦略にも合致し、日印関係をより高い次元に引き上げる重要な基盤となる。
インドは、核拡散防止条約(NPT)に未加盟の核保有国だ。2008年に核実験凍結の継続などを対外的に表明している。
安倍首相は会談で、核実験が行われた場合、協力を停止する方針を伝えた。協定は、平和目的の協力に限り、軍事転用に明確な歯止めをかける内容にすべきだ。
政府はインドに対し、核不拡散の国際的な枠組みに参加し、核軍縮を進めるよう、粘り強く促し続けることが重要である。
両首脳は、インド西部ムンバイ・アーメダバード間の高速鉄道計画に、新幹線方式を採用することで一致した。総事業費は1兆8000億円で、その約8割を上限に、日本は円借款を供与する。
海外での新幹線の採用は台湾に次ぐ2例目だ。インドネシアの高速鉄道受注競争で中国に敗れたことを踏まえ、資金支援を強化したことなどが奏功したのだろう。
原発や交通インフラの輸出拡大は、安倍政権の成長戦略の柱だ。官民が中長期的な視点を持ち、緊密に連携しなければなるまい。
共同声明は、南シナ海情勢に関し、「一方的な行動」の回避を関係国に呼び掛けた。人工島造成を進める中国が念頭にある。
中東とアジアを結ぶ海上交通路の安全確保は、自由な経済活動に不可欠だ。中国の強引な海洋進出には、様々な機会を通じて、異論や注文を唱える必要がある。
日印両国は、防衛装備品・技術移転協定と、軍事に関する情報保護協定に署名した。米印両海軍の共同訓練に、海上自衛隊が定期的に参加することも確認した。
日印の防衛協力の実効性を高めるため、米国や豪州などを交えた重層的な連携を強めたい。
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