民・維統一会派 野党結集の基礎となるのか

朝日新聞 2015年12月09日

民維統一会派 ようやくの第一歩

民主、維新の野党両党首が、衆参両院で統一会派を組むことで合意した。衆院で92人、参院では64人の勢力になる。

衆院で326人の自民、公明の与党勢力には遠く及ばない。それでも、巨大与党に対抗しようとようやく踏み出した第一歩ではある。

より広い野党共闘や選挙協力に向け、岡田、松野両党首はさらに努力を続けるべきだ。

野党が結集することの意義を改めて考えてみたい。

野党の最大の役割は、政権の権力行使に行き過ぎはないかをチェックするとともに、政府・与党に代わりうる「もう一つの選択肢」を示すことだ。

先の国会で民主など野党は、安倍内閣が提出した安保関連法案の違憲性や矛盾を指摘し、世論を喚起することに一定の役割を果たした。ただ、いまの野党の力ではそれが限界だった。

ただでさえ数が少ない野党勢力がバラバラでは、政権運営に緊張感すら生まれない。憲法に基づく臨時国会の召集要求が一蹴されたことも、その例だ。

できる限りの結集を図り、選挙に向けて共通の民意の受け皿づくりに努力する――。小選挙区中心の選挙制度のもと、与党の補完勢力か万年野党に甘んじるのでなければ、これが野党がめざすべき道である。

松野氏らは、3年前の民主党政権時代の消費税率引き上げをめぐる混乱で民主を離れ、橋下徹氏率いる日本維新の会に合流した経緯がある。その維新も泥仕合のあげく分裂した。

民主、維新は両党の「結集」をめざすというが、新党結成なのか吸収合併なのかで隔たりがある。民主党内でも野党共闘のあり方や安保政策をめぐって、なお路線対立がある。

こんな内向きの議論やまとまりのなさに有権者がうんざりしていることは、民主党の支持率の低さをみても明らかだ。

統一会派に向けた両党の党首会談では、七つの基本的政策で一致した。冒頭に外交・安全保障を掲げ、安保法制については憲法違反の部分を白紙化し、新たな法案を出すという。

両党首には、二つの使命があることを自覚してほしい。

一つは、合意した政策を法案の形で具体化することだ。年明け早々に通常国会が始まる。ここで説得力ある論を展開できるかどうかで真価は問われる。

もう一つは、「違憲」法制の白紙化に向けて、より多様な野党や市民との連携を実現することだ。容易な道ではないが、失われた有権者の期待と信頼を取り戻すには近道はない。

読売新聞 2015年12月08日

民・維統一会派 野党結集の基礎となるのか

「1強」の自民党に対抗するため、野党が勢力結集を目指すことは理解できる。国会活動での連携強化が、その布石となるのだろうか。

民主党の岡田、維新の党の松野両代表が会談し、年明けの通常国会で統一会派を結成することで一致した。

岡田氏は「巨大与党に対抗するため、一丸となる」と強調した。松野氏も「野党がバラバラでは太刀打ちできない」と語った。

新会派は衆院92人、参院64人となり、自民党の4割弱の規模を持つ。常任委員会の委員数や質問時間などが増え、国会で存在感を発揮しやすくなる。安倍政権との対決姿勢を強め、来夏の参院選に弾みをつける狙いだろう。

だが、勢力が拡大しても、政府批判に終始するだけでは、国民の支持は広がるまい。政府の政策の問題点を指摘し、具体的な対案を示すなど、建設的な国会論戦を展開することが重要だ。

岡田、松野両氏は、基本政策に関する合意も公表した。

疑問なのは、新会派が通常国会で、安全保障関連法の一部を廃止する法案などを提出するという点だ。日本周辺での米艦防護を否定するつもりなのか。対案をまとめるなら、厳しい安保環境を直視し、現実的な内容にすべきだ。

国家公務員の人件費削減については、労組との合意を前提に、2割削減を目標に掲げた。2割削減にこだわる維新に配慮しつつ、前提条件を付けることで、事実上は玉虫色の合意になった。

党首会談では、「両党の結集も視野に信頼関係を高める」ことも確認した。松野氏は、参院選前の新党結成を目指し、新党名は民主党以外にすべきだと主張する。

だが、岡田氏は、合併に期限は設けず、慎重に進めるべきだという考えだ。民主党内では、党名変更への反対論が強い。

第3極の政党は、離合集散を繰り返してきた。選挙目当てで「数合わせ」を優先させ、理念や基本政策の一致を怠ったツケだ。同じ過ちは避けねばならない。

共産党は、安保関連法廃止を目的とする連立政権構想を掲げる。民主党はこれを拒む一方、選挙協力は模索している。新党を作るなら、共産党との関係について明確にしておく必要がある。

維新の党は、大阪系との分裂騒動を決着させる方向だ。橋下徹大阪市長は、使い残しの政党交付金の国庫返納を求めている。事態を早期に収拾し、国政に専念できる体制を整えるべきだ。

産経新聞 2015年12月12日

民主・維新会派 政権担う基本理念見えぬ

民主党と維新の党が衆参両院で統一会派を結成する。来年の通常国会の攻防をにらみ、巨大与党に対抗できる勢力をつくる狙いだという。

両党党首は会見で「安倍晋三政権の暴走をチェックする」と表明した。確認文書には政権交代が可能な政治を実現するため「両党の結集も視野」に入れることも明記した。

数多くの政党、会派の離合集散が重ねられてきたが、常に問われるのは十分な政策合意がなされたかどうかだ。今回の両党の動きにも、この前提が欠けている。

「基本的政策合意」を発表したが、その不十分さを際立たせているのは安全保障政策だ。

「現実的な外交安全保障」を掲げているが、中国の軍事的台頭など厳しさを増す国際情勢の中で、日米同盟の抑止力をいかに高めるかという視点は見当たらない。

それだけでなく、先の国会で成立した安全保障関連法について、「憲法違反など問題のある部分をすべて白紙化する」とした。

安保関連法は、憲法の範囲内で集団的自衛権の限定行使の容認に踏み切ることで、日米同盟を強化し、戦争抑止を図る法制だ。

数十年前の冷戦期の情勢下に生まれた憲法解釈と、現実との乖離(かいり)から目をそらせたまま「白紙化」を唱えようとしている。

そのこと自体、安保を含む国政の重要課題について、建設的な議論を担える勢力とはみなされない要因とならないか。

とくに民主党は、来年の衆院北海道5区補選や参院選で、安保関連法を「戦争法」と決めつける共産党との共闘も模索している。

政権を担当する重みやその責任について、もう忘れてしまったのだろうか。

政策合意には「新陳代謝のある経済成長」「身を切る改革」といった聞こえのよい言葉が並ぶ。それを実現する具体的な方策や期限への言及も足りない。

「1強多弱」が続く中で、有権者も与野党間で緊張感のある政治状況は求めている。だが、反対のための反対を唱える勢力が、野党の中では相対的に幅を利かせ、兄貴分の顔をしているだけでは、国民の期待は得られない。

来年の国政選挙を前に、数合わせに走ったと思われるのは本意ではなかろう。現実的かつ具体的な基本政策を磨き、国会論戦に臨むことから始めてもらいたい。

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