日本を代表する企業としてあるまじき不祥事を起こした経営陣の責任は重大である。
東芝の不適切会計問題で、証券取引等監視委員会が、73億円超の課徴金を科すよう金融庁に勧告した。
会計不祥事に対する課徴金としては、IHIの16億円を大きく上回る過去最高額だ。虚偽の決算を基に3200億円もの社債を発行して資金調達するなど、長年にわたって投資家を欺いてきたことを問題視した。
原因について、監視委は「歴代社長が利益至上主義の下で、予算の達成や実績の上積みを強く求めた」と指摘した。監視委が不祥事の背景にまで言及するのは異例のことだ。今後、歴代社長の刑事告発も検討するという。
室町正志社長は記者会見で、「二度とこのような問題を起こさないようにする」と述べ、再生への決意を示した。だが、前途は多難だと言わざるを得ない。
前社長らが7月に引責辞任した東芝は、先月になって、子会社の米原子力発電大手、ウェスチングハウスが1000億円超の損失を計上していたと発表した。当初は開示に消極的だったが、東京証券取引所に促された結果だ。
都合の悪い情報は表に出さないという悪弊は一掃しなければならない。形骸化した社外取締役や監査委員会など、企業統治の仕組みが適正に機能するように改革する必要がある。
不適切会計が発覚した結果、東芝の株価が下落して損害を受けたとして、株主代表訴訟が相次いで提起される見通しだ。
業績の見通しも不透明だ。中間決算で営業赤字に転落した業績の回復が急務である。白物家電やパソコン事業などのリストラ策が立て直しのカギとなろう。
今回の問題では、有価証券報告書などへの虚偽記載を見抜けなかった監査法人の責任も重い。
監査法人は、企業から指名を受けて会計監査を行い、報酬を受け取る。このため、顧客である企業の損失が膨らむような対応を求めにくいとの指摘がある。
オリンパスやライブドアなど、過去の粉飾決算でも、監査法人が企業の不正会計を見過ごしたことが問題となった。
同様の事例が繰り返されたことで、監査法人に対する不信感が一段と高まったことは否めまい。
監査法人を監督する金融庁は、会計監査の実効性を上げるための方策の検討を急ぎ、再発防止に努めてもらいたい。
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