新国立競技場の建設を巡る大きな懸案が、ようやくクリアされた。
遠藤五輪相、馳文部科学相と舛添要一東京都知事が新国立競技場建設費の負担割合で合意した。
関連経費を加えた1581億円の建設費のうち、国が半分の791億円を負担し、残りを都と事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が折半する。
焦点だった都の分担額は、395億円となる。JSCは、スポーツ振興くじ(toto)の売り上げの一部を充てる。
新国立競技場は、2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる重要施設である。財源のメドがつき、いったんは白紙撤回となった建設計画が、前へ進むことになる。
舛添知事は、都議会の所信表明で、「大会を象徴するレガシー(遺産)が、都民の様々な利益となる」などと、巨額の負担を受け入れた理由を説明した。
競技場は、日本を代表するスポーツ施設としてだけでなく、大地震の際の帰宅困難者らを受け入れる防災拠点としての役割も担う。施設内には、8万人分の非常食を備蓄できる倉庫も整備される。
都の公費を投入する以上、都民に役立つ競技場として整備するのは、当然だろう。
下村前文科相が5月、都に工費の一部を負担するよう求めたことで、建設費問題が表面化した。舛添氏が「都民に拠出をお願いできるだけの論理が必要だ」と反発し、混迷が深まった。
安倍首相が7月、総工費が大きく膨らんだ旧計画を撤回し、その後、新たな整備計画が策定された。意思疎通を重視した政府と都のワーキングチームが、建設費の負担割合を検討してきた。
地方財政法は、自治体の権限外の事業について、国が自治体に費用を負担させることを禁じている。住民訴訟などを提起されるリスクもはらんでいるだけに、都の負担の合法性を担保する法整備が不可欠である。
政府は年内に設計・施工業者を決定する方針だ。国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪までに一定の準備期間が必要だとして、開幕半年前の20年1月の完成を求めている。
工費が再び膨張するのを抑えるため、政府は旧計画で失態を演じたJSCを厳しく監督し、工事を遅滞なく進めねばならない。
五輪の「負の遺産」とならないよう、将来にわたる維持・管理計画も練り上げてもらいたい。
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