沖縄・米軍普天間飛行場の辺野古移設工事を受注した建設業者が、昨年の衆院選の前、当選した6人に計90万円を寄付していたことが分かった。
国と契約を結ぶ業者からの国政選挙に関する寄付は、公職選挙法で禁じられた違法行為だ。
受注業者は、首長選でも候補者側への寄付を重ねていた。
辺野古移設という巨大な公共事業をめぐり、選挙支援と引き換えに政治家の利権に期待する建設業者――。そんな癒着が疑われても仕方がない構図だ。
政治家も、業者もきちんと襟を正すのは当然のことだ。
辺野古移設に関して、不透明なカネのやりとりが明るみに出たのはこれだけではない。
移設工事を環境面から監視する専門家委員会の委員3人が、委員就任決定後に受注業者から計1100万円の寄付金を受け、他の1委員も受注業者の関連法人から報酬を受けていたことも先に明らかになっている。
委員会は国が設置。移設事業を科学的に審議し、工事の変更などを国に指導する。その任をゆだねられた専門家が、事業を請け負う業者からカネを受けとっていた構図だ。
政府は「委員会は公平中立な立場で議論が行われている」としているが、カネを出す業者側に何らかの期待がないとは思えない。利害関係者から金品を受けとらないことは、委員の最低限の倫理ではないのか。
政府自身が不透明な公金を支出する例もある。
政府は先月末、名護市の移設先周辺の「久辺(くべ)3区」(久志、辺野古、豊原)に今年度は1区につき最大1300万円の補助金を出すことを決めた。
区といっても東京23区のような自治体ではなく、町内会のようなものだ。移設に反対する県や市の頭越しに、3区だけに公金を出す異例の施策である。
辺野古移設を急ぐあまり、行政としての公正さ、公平さを見失ってはいないか。
沖縄に限らず、公共事業をめぐる不透明なカネが地域に分断を生んできた例はこれまでも数多い。疲弊する地域の建設業者にとって、公共事業が「命綱」である側面もあるだろう。
だとしても、政治家や行政が不透明・不自然なカネのやりとりにかかわることは、住民の不信を広げ、ともに考える土俵を損ね、住民の間に分断を持ち込むだけだ。厳に慎むべきである。
手続きが公正・公平であることは、基地移設への賛否を超えて、この問題を議論する最低限の前提でなければならない。
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