COP21開幕へ 公平な「パリ合意」実現を

朝日新聞 2015年12月02日

温暖化とテロ 連帯すべき二つの脅威

「地球温暖化との戦いと、テロとの戦いを分けることはできない。我々が立ち向かわなければならない二つの大きなグローバルな挑戦だ」

同時テロが起きたばかりのパリで始まった国連気候変動会議(COP21)で、議長国フランスのオランド大統領が、開幕の演説で力を込めた。

その認識を共有したい。

温暖化とテロは21世紀の世界が直面する喫緊の課題であり、一国だけでは対応できない世界共通の脅威である。

COP21を契機に、国際社会はその危機感を改めてともにし、連帯して向き合う決意を新たにする必要がある。

確認したいのは、二つの脅威が実は関連していることだ。

温暖化がテロや紛争の土壌を生み出すという考え方は、これまでも複数の国際的な報告書などで指摘されてきた。

たとえば、こんな道筋だ。

気温の上昇で雨の降り方など気候が変動し、干ばつや洪水、海面上昇などを引き起こし、水不足や食糧不足を招く。

その被害は、とりわけ貧困層ほど大きくなる。難民が生まれ、政治の不安定化や国家機能の喪失につながる。

そこにテロや紛争のリスクが芽生える可能性が出てくる。統治の行き届かない空白地帯にテロ組織が入り込み、貧困にあえぐ人びとを巻き込んで、テロの温床が形作られていく――。

このような悪循環はどこで起きるかわからない。中東やアフリカかもしれないし、アジアかもしれない。気候変動のリスクは、国境も意味をもたない。

だとすれば、各国がそれぞれの国益を追い求める従来の発想を乗り越える必要がある。先進国と途上国の垣根も、取り払わなければならない。

国家の単位では対応しきれない問題でもある。国際機関やNGOなどとともに、国家を超えた枠組みで取り組まなければ、解決の糸口はつかめない。

温暖化防止も、テロ対策も、容易な解決策はない難題だ。各国が得意分野を生かした役割分担をしながら、息長く、粘り強く立ち向かうしかない。

安倍首相はCOP21の首脳演説で「先進国、途上国がともに参画する新たな枠組みを築くべき時だ」と訴え、途上国の温暖化対策への支援を年約1兆3千億円にする方針を表明した。

人道支援の分野を中心に、日本として、さらに何ができるか。何をすべきか。

NGOなど民間の意見にも耳を傾けながら、具体的な連帯の方策を探る必要がある。

読売新聞 2015年12月08日

米国のテロ対策 「イスラム国」の扇動を許すな

インターネットなどで過激思想に染まった個人や小グループによるテロをどう防ぐか。国際社会共通の困難な課題だ。

オバマ米大統領は、緊急テレビ演説を行い、「テロの脅威は新たな段階に移っている」と警鐘を鳴らした。米西部で今月初めに14人が殺害された銃乱射テロを受けたもので、テロ対策を強化する方針を示した。

事件を起こしたイスラム教徒の夫妻は、過激派組織「イスラム国」の関連サイトを閲覧していた。妻はネットで忠誠を誓う書き込みも行っていた。自宅からパイプ爆弾や銃弾数千発が見つかった。

「イスラム国」からの犯行指示はなかったが、米欧を敵とみなし、テロをあおる過激思想に感化され、犯行に及んだのだろう。

懸念されるのは、今回のような自国に長く住む「ホームグロウン・テロリスト」による「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型のテロが世界的に増加傾向にあることだ。

今年1月にパリで発生した政治週刊紙襲撃事件や11月のパリ同時テロも、「ホームグロウン」による犯行と分析されている。

米国は、国際テロ組織アル・カーイダが実行した2001年の同時テロ以来、過激派の動向を常時監視し、再発を阻止してきた。

だが、「一匹狼」は外部との情報交換が乏しく、犯行の端緒をつかむのは容易ではない。オバマ氏がネット業界との協力を通じて、通信情報を得られる仕組み作りの重要性を指摘したのは妥当だ。

社会に潜む「テロリスト予備軍」をあぶり出し、犯行を防ぐことが肝要である。

米国への渡航者の査証審査の厳格化もやむを得まい。

米国では、50州の半数以上の知事がシリア難民の受け入れに反対し、下院では停止を目指す法案が可決された。移民や難民の潜在力を国力に変えてきた伝統と、テロ阻止の両立が求められよう。

世界各地の穏健なイスラム教指導者の側でも、「米欧に対する聖戦」という過激派の宣伝を明確に否定する取り組みが必要だ。

テロリストの武器調達の阻止も急務である。米国では、ネットでの銃器売買で、身元確認が行われないなどの抜け穴がある。殺傷能力の高い武器を個人が購入できるのも問題だ。オバマ氏が銃規制強化を提唱したのは理解できる。

「イスラム国」の扇動を許していては打倒は難しい。米欧だけでなく、日本などアジアにとっても人ごとではない。宣伝戦への対応や情報共有で連携を強めたい。

産経新聞 2015年12月08日

米大統領演説 テロ浸透に危機感共有を

オバマ米大統領がテレビ演説で、カリフォルニア州の銃乱射事件を「罪のない人々の殺害を狙ったテロ行為」と断定し、過激組織「イスラム国」壊滅へ決意を語った。

ホワイトハウス執務室からの演説は、経済、外交などの重要局面で行われるのが慣例で、オバマ氏の強い危機感を反映している。対テロで連携する国際社会も重く受け止めるべきだ。

オバマ氏は、今回の事件が海外テロ組織から指示されたような犯行であることは否定した。

だが、警察に射殺された容疑者夫婦宅からは、複数のパイプ爆弾や数千発の銃弾が押収された。ソーシャルメディアなどを通じて過激思想に感化された者が、より大規模な凶行を企てようとすれば、実行できたかもしれない。

過激組織の根は、社会のさまざまなところに浸透する可能性を持っている。それを前提としたテロ対策を講じる必要があることを、事件の教訓とすべきだろう。

過激主義はソーシャルメディアを用い、組織的に勧誘を狙って発信している。住民啓発などで対抗していかなければならない。

改めて浮上したのは、米国内の銃規制の問題だ。仮に過激主義に感化されたとしても、武器の入手が容易でなければ、大規模な凶行に至らないケースもあろう。

米国は銃保有の権利を尊重し、銃を自由の象徴としてきた。それと銃規制の調和をどう図るかは、長く抱えてきたジレンマだ。

だが、年間3万人が銃による殺人・事故で死亡する状況は異常だ。テロとの戦いの一環としての観点からも、新たな銃規制を考えるべきだろう。

イスラム国掃討戦では、英国がシリア空爆を開始し、ドイツも有志連合支援のため、偵察機や艦船の派遣を決めた。

軍事作戦では連携強化が極めて重要なだけに、米国にはより主導的な役割を果たしてほしい。イスラム国の台頭を許したシリアの内戦を解決するための協議も、継続しなければならない。

ロンドンの地下鉄駅ではナイフによる傷害事件が起きた。パリ同時多発テロ以降、欧州には不安が広がっている。フランスの地方選では、移民排斥や治安強化を掲げる極右政党が躍進した。

テロとの戦いを継続するため、強い指導力と結束が求められる局面である。

朝日新聞 2015年11月30日

COP21 日本も合意に貢献を

地球温暖化の行方を左右する国連気候変動会議(COP21)がきょう、パリで開幕する。

2020年以降の温室効果ガスの排出抑制や、気象災害などの被害の軽減、そのための国際協力などについて決める。

これに先立ち世界気象機関は先週、今年の世界の平均気温が観測史上最高になりそうだと発表した。工業化で人類が化石燃料を大量に使い始める前に比べて1度上がり、5年単位でも11~15年が過去最高という。

世界の気象学者らは、温暖化は確かに起こっていて、人類による二酸化炭素などの大量排出が原因だとする報告書をまとめた。このまま手をこまぬけば、今世紀末に世界平均で最大5度近い気温上昇を招くとの予測も示している。

国際社会はCOP21での合意をめざして交渉を重ねてきた。万が一決裂すれば今後何年も空費するのは確実だ。温暖化が人命や経済、生態系に与える被害はさらに甚大になるだろう。

幸い、これまで決定的な対立は生じていない。従来は消極姿勢が目立った米国と中国が前向きに転じたことが大きく、先進国も途上国も温暖化対策に取り組む機運は維持されている。

とはいえ、課題は山積している。最大の焦点は、気候変動枠組み条約に明記されている「共通だが差異ある責任」をどのように実現するか、である。

歴史的に化石燃料を使い放題に使って早期に経済発展を遂げた先進国は、途上国以上の責任を引き受けるのが当然だ。程度の問題はあるが、資金や技術の提供で誠意を見せなければ途上国はそっぽを向くだろう。

安倍首相は首脳会合で、温暖化関連の途上国支援を官民で年1兆3千億円に3割増やすことや、地熱発電などの技術提供を表明するという。

一方、日本のガス削減目標は先進国の中でも見劣りし、環境団体などから批判されている。

今さら、会議で目標を引き上げることは難しいかも知れない。だが、現在の各国の目標が達成されても気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標は実現しそうにない。

将来の各国の目標引き上げにつながる有効な合意づくりが重要になる。日本は、そうした議論で積極姿勢を示して、会議の成功に貢献すべきである。

日本のガス排出量は14年度は5年ぶりに減った。東京都は30年までに00年比30%削減と、政府を上回る目標を発表した。

日本がすべきこと、できることはまだまだある。政府は覚悟を持って臨んでほしい。

読売新聞 2015年12月05日

国内テロ防止 縦割り排して総合力を高めよ

テロ防止の取り組みは待ったなしだ。関係省庁の力を結集し、隙のない体制を構築したい。

政府がテロ防止の強化策を打ち出した。海外のテロ情報を集約する「国際テロ情報収集ユニット」の新設や、空港での水際対策の充実が柱だ。

ユニットは首相官邸主導の組織で、8日に約20人規模で外務省に発足する。省庁の縦割りの弊害を解消することが狙いだ。外務、防衛両省、警察庁などの職員を集め、全員が内閣官房兼任となる。

中東などの在外公館にも約20人が新たに配置される。

ユニット設置は当初、来春の予定だったが、パリ同時テロで大幅に前倒しした。政府の強い危機感の表れだろう。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の開催まで、既に半年を切っている。

「寄り合い部隊」だけに、各省庁が培ってきたノウハウを共有し、総合的な情報収集・分析力を向上させることが大切だ。

断片的な情報を集約し、テロ計画をあぶり出すには、高度な専門性が要求される。中長期的な視点に立った人材育成が肝要である。海外の情報機関と信頼関係を構築することも欠かせない。

水際対策では、空港での入国審査時に、テロリストらの顔画像と瞬時に照合できるシステムを活用する。搭乗者の衣服を透視する高精度の探知装置も積極的に導入する。時間との闘いを意識し、対応を急ぐ必要がある。

パリでは、多数の民間人が集まる劇場などの「ソフトターゲット」が狙われた。警察は、同様の事態を想定した訓練を重ね、対処能力を高めてもらいたい。

施設側にも、手荷物検査の自主的な実施など、発生防止に向けた取り組みが求められよう。

欧米では、テロ対策で通信傍受の果たす役割が大きい。事件の未然防止を目的とする「行政傍受」を捜査機関などに認めている国も少なくないとされる。

これに対し、日本で可能なのは、特定の犯罪捜査のために行う「司法傍受」だけだ。裁判所の令状を必要とするなど、要件は極めて厳しい。今のままではテロ防止に役立たないとして、行政傍受の導入を望む声が警察などには強い。

重大犯罪の計画段階で処罰対象とする共謀罪についても、河野国家公安委員長らが創設に前向きな姿勢を示している。

捜査権乱用などへの懸念から、通信傍受の対象拡大や共謀罪創設には慎重論も根強い。欧米での先例も踏まえて議論を深めたい。

産経新聞 2015年12月07日

国際テロ対策 情報機関の創設が急務だ

パリ同時多発テロなど世界情勢の緊迫化を受け、政府が国際テロ対策の強化策を決定した。

関係情報を一元的に集約する「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に、同ユニットに対する司令塔となる組織を首相官邸に、それぞれ8日に設置する。

対策の強化は、世界的課題となった「テロとの戦い」の基本である。政府が、来年4月を予定していた情報収集ユニットの発足を前倒ししたのは当然だ。

ただし、今回の措置は緊急避難的な対応の印象が否めない。欧米などの民主主義国が備えているような対外情報(インテリジェンス)機関創設に踏み切らなければ、日本はいつまでも「情報弱国」のままである。

海外のテロリストの魔の手は、日本人にも及んでいる。今年1、2月には、過激組織「イスラム国」が邦人2人を殺害するテロ事件があった。

11月に靖国神社で爆発音がした事件では、日本に入国してきた韓国人の男が容疑者として浮上している。

来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や、2020年の東京五輪・パラリンピックの開催などを控え、テロ対策の徹底的強化が欠かせない。日本がテロリストから狙われる「弱い環(わ)」になってはならない。

情報収集ユニットは外務、防衛両省や警察庁、内閣情報調査室などから選ばれる要員約20人で構成する。中東、北・西アフリカ、東南アジア、南アジアの地域別の班で情報収集と分析に当たる。

現地大使館へ専門要員約20人を派遣する。良質な情報を収集することを期待したものだ。

それでも、ユニット、海外派遣ともに規模は小さい。首相官邸の「司令塔」は官房副長官のもとに関係省庁の局長級を集めた「幹事会」で、事務局も付随するが、あるべき情報機関を検討する役割は持たない。

真に機能する対外情報機関は一朝一夕にできるものではない。だからこそ制度設計を進め、早期に発足させるべきではないのか。

安倍晋三首相は、テロ対策の抜本的強化を図るよう指示した。対外情報機関や共謀罪の創設など「テロとの戦い」に有効な手立てを進めていくことをためらってはなるまい。それが人々の生命を救う方策となる。

読売新聞 2015年12月02日

パリ首脳外交 対テロ連帯アピールする場に

同時テロの発生から2週間余りのパリで、約150か国・地域の首脳らが一堂に会した。国際社会の「反テロ」機運の高まりを示すものだ。

これを過激派組織「イスラム国」制圧に向けた関係国の連携強化につなげることが肝要である。

国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)で、議長国フランスのオランド大統領は、「テロとの戦いと地球温暖化との戦いはいずれも、重要な世界規模の課題だ」と演説した。

ドイツのメルケル首相も、「どこで起きようが、テロを糾弾する」と強調した。

首脳らがそろって同時テロの犠牲者に黙祷もくとうをささげた姿は、世界中に強い印象を与えただろう。

安倍首相は、オランド氏との会談で、「テロ行為は共通の価値に対する挑戦だ」と述べ、テロ対策で連帯することを確認した。

オバマ米大統領はプーチン露大統領と会談し、シリア内戦の停戦と新政権移行に向けた行程表の履行の重要性で一致した。

シリアのアサド政権の排除を目指す米国と、支援するロシアの間で依然溝は残るが、対「イスラム国」協調の流れが維持されたのは評価できる。

オバマ氏は「イスラム国」に標的を集中すべきだと主張した。プーチン氏は、複数のシリア反体制派組織を、空爆の対象とする過激派と、交渉相手の穏健派に区分けする必要性を提起した。

アサド政権と反体制派の和平協議の実現のためにも、区分けに取り組む意義は小さくない。

オバマ氏は、トルコ軍機に撃墜された露軍機パイロットへの弔意を示し、ロシアがウクライナ東部の停戦合意を履行すれば、制裁を緩和する方針も表明した。対「イスラム国」での大同団結を目指すフランスへの配慮だろう。

懸念されるのは、撃墜に伴うロシアとトルコの関係悪化が国際社会の結束に影を落としていることだ。ロシアは、貿易や観光などを制限する経済制裁をトルコに科し、トルコ側の謝罪を首脳間の対話の条件にしている。

ロシアは、トルコが「イスラム国」の石油密売に関わっていると非難した。トルコは「石油を買っているのはアサド政権だ」と反発している。

国連安全保障理事会は資金源遮断の取り組み強化を求める決議を採択している。シリアとの国境管理を徹底し、「イスラム国」への人やモノの流れを封じ込める努力も求められよう。

産経新聞 2015年12月02日

パリに150首脳 対テロ団結の決意示した

「テロに屈しない」との国際社会の強い決意が示されたといえよう。

先月中旬、約130人の犠牲者を出す同時多発テロが起きたパリで、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が予定通り始まり、約150カ国の首脳が結集し、対テロでの団結を表明した。

オランド仏大統領は、テロと温暖化への対処は「われわれが立ち向かうべき地球規模の2つの大きな課題だ」と述べた。

指摘の通り、人類の未来が懸かった重要な会議である。先送りはできない。テロを乗り越えての開催に敬意を表したい。

温暖化による異常気象が食糧不足を誘発し貧困と結びつけば、テロの温床は広がる。2つの課題はけっして無関係ではない。

約2週間のCOP21の交渉では、地球温暖化に歯止めをかけるための「結果」が求められることを忘れてはならない。

事件後、仏警察特殊部隊はテロリストのアジトを急襲して新たな攻撃を阻止し、非常事態は延長され、国内治安が固められた。

こうした当局の対応を、テロの不安や厳戒態勢の不自由に耐える仏国民が支えた。首脳の結集は、テロと戦う人々の努力のたまものである。

開会式の演説では、多くの首脳がテロとの戦いに言及した。安倍晋三首相やオバマ米大統領はテロ現場に赴き献花した。

首脳らのパリでの言動は、対テロでの国際連携の意識を高める。テロとの戦いは、それをどう具体化していくかだ。

テロを首謀した「イスラム国」と、この過激組織の台頭を許したシリア内戦をめぐっては、連携が困難な状況が続いている。

オランド氏はテロ発生後、米国やロシアを訪問し、欧米首脳の他、プーチン露大統領からも、イスラム国掃討戦での協力を取り付けた。だが、トルコによるロシア軍機撃墜事件で、両国が鋭く対立し事態は悪化している。

安倍首相はオランド氏との会談で、テロは共通の価値に対する挑戦だとして「断固非難する」と述べたほか、トルコのエルドアン大統領には、ロシアとの仲介の用意があることを伝えた。

テロとの戦いは幅広く、関係国間の調整もその一つだろう。日本ができることは、積極的に進めていかねばならない。

読売新聞 2015年12月01日

COP21開幕 新興国も責任果たす枠組みに

京都議定書に代わる新たな枠組みに合意できるのか。今後の地球温暖化対策を左右する重要な会議である。

同時テロから日が浅いパリで、厳戒態勢の中、国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)が開幕した。

会議冒頭に首脳会合が行われる異例の日程となった。約150か国の首脳が、テロに屈せず、人類共通の課題に立ち向かうことを確認する意義は大きい。

ただ、会議の行方は予断を許さない。先進国と途上国の主張に大きな隔たりがあるためだ。

温暖化対策は、経済発展に伴って多量の温室効果ガスを排出してきた先進国には、途上国より重い責任がある、という考え方に基づいている。1997年に採択された京都議定書では、先進国のみが削減義務を負った。

当時とは状況が大きく変化している。削減義務のない中国やインドなど、新興国からの排出量が大幅に増えた。中国は今や、米国を上回る最大の排出国だ。

2020年に発効する新たな枠組みを、全ての主要排出国が応分の責任を果たす仕組みにできるか否かが、会議の最大の焦点だ。

COP21に向け、各国は独自の削減目標を掲げた。中国は、国内総生産(GDP)当たりの排出量を、30年までに05年比で60~65%削減するという内容だ。

これでは、経済が大きく成長すれば、排出量は増加する。不十分な目標と言わざるを得ない。

一方で、中国に厳しい目標を求めれば、新たな枠組みから離脱しかねないジレンマがある。

米国の目標は、25年に05年比で26~28%減だ。日本も、30年度に13年度比で26%減を掲げている。先進国が削減に積極姿勢を示すことは、中国など新興国にも前向きな取り組みを促す上で有効だ。

各国が示した削減量を積み上げても、今世紀末の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2度未満に抑えるという国際的な目標は達成できない。

各国が定期的に削減状況を報告して検証を受け、可能な限り目標を引き上げる。こうした仕組みを構築することも課題である。

新興国・途上国は、先進国からの資金援助の拡充や技術移転を強く求めている。

安倍首相は、日本としての支援額を年1兆円から1・3兆円に引き上げ、再生可能エネルギー技術などを提供することを表明する。世界全体の排出削減に向けて、役割を果たしたい。

産経新聞 2015年11月29日

COP21開幕へ 公平な「パリ合意」実現を

パリで国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が30日に開幕する。

現行の「京都議定書」に代わり、2020年以降の地球温暖化対策の新たな枠組みの基礎となる「パリ合意」を目指し、世界の国々が最後の詰めを行う。

各国にとって公平で実効性の高い制度を構築し、温暖化による気候変動やそれに伴う自然災害の抑制につなげたい。

京都議定書による二酸化炭素などの排出削減は、先進国のみに義務付けられ、しかも米国が抜けていたので効果に限界があった。

新枠組みでは、米国の参加だけでなく、中国を含めた途上国も加わり、全ての国による自主的な削減の積み上げで温暖化抑制に取り組む。

削減目標を提出済みの国・地域は180以上で、排出量で全世界の9割超をカバーしている。

実際の排出量や削減量の検証方法などで課題は残るが、新枠組みへの大きな流れは、既に形成されている。心強い前進だ。

だが、パリ合意のゴール前には高いハードルが残る。先進国から途上国への資金供与の問題だ。途上国が20年までの年1千億ドルの支援と、それ以降のさらなる拡大を求めているからだ。

温暖化は、工業化を先行させた先進国の責任という理屈に基づく要求だが、1870年以降の累積排出量でも中国は、既にドイツ、英国、日本を抜いている。1990年以降の累積では欧州連合(EU)28カ国分を2008年ごろに凌駕(りょうが)している。

地球温暖化問題の解決では、最貧国などを除いて、途上国側も一定の自助努力が求められて当然である。途上国側には節度ある交渉を求めたい。

パリ合意を目指し、初日には安倍晋三首相、オバマ米大統領、中国の習近平国家主席ら全世界の首脳が集う。首脳会合で安倍氏は日本の革新的エネルギー・環境技術による国際貢献とともに「20年までに年間1兆3千億円」規模の途上国支援を表明するという。

合意成立の呼び水としたいのだろうが、かえって過大な要求の導火線にならないか。

これまでの日本の努力は、先駆的であるにもかかわらず、世界から正当に評価されていない感がある。国益を損なうことなく尊敬を勝ち取る国際交渉が望まれる。

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