自民立党60年 保守進める力量を高めよ

朝日新聞 2015年11月30日

自民党60年 敵対から統合への道を

自民党が1955年の結党から60年の節目を迎えた。

3年前の政権復帰以来、安倍自民党は国政選挙に3連勝中だ。安倍氏は先の総裁選で無投票再選し、党は一枚岩の結束を保っているように見える。

内実はどうだろう。朝日新聞が実施した党員調査では、歴代で最も評価する総裁は19%を集めた安倍氏だった。

一方で、党員の意見が党運営や政策に十分反映されているか聞いたところ、54%が「されていない」と答えた。

こう答えた人の中では、安保関連法の議論は「つくされていない」が71%、憲法改正を「急ぐ必要はない」が65%に上る。最も評価する総裁では田中角栄氏の方が多くなる。

歴史を振り返ると、党の性格は大きく二分される。93年に党分裂で下野するまでの「55年体制」の時代と、その後の小選挙区制の時代と――。

55年体制下では、結党時に掲げた「国民政党」の色あいが濃かった。多様な意見をくみ上げることで国民合意を形成し、社会党とはよくも悪くもある種の共存関係を築いた。

一方、衆院の小選挙区と政党助成導入後の90年代後半から、資金配分や選挙の公認などの権限が党執行部に集中した。派閥間での権力闘争の矛先は、小選挙区でのライバル民主党に向けられるようになった。

第1次政権での中途退陣と野党転落をへた安倍氏は、右寄りの理念と力で党内を抑えつつ、民主党やそれを支える労組などを激しく攻撃する敵対姿勢を先鋭化させている。

国民の分断へのおそれも感じられない。先の国会での安保法案の強引な進め方も、沖縄の民意に耳を傾けない普天間飛行場の辺野古移設もそうだ。

田中氏や大平正芳氏らが党を率いた時代は、高度経済成長の果実を分配すればよかった。

いまは少子高齢化と財政難の下、負担の分かち合いが求められる。国民統合の重要性はいっそう高まっている。

そんな時代に日本のかじ取りを担う政治のありようとして、安倍自民の姿勢は妥当だろうか。そうとは思えない。

安全保障や社会保障政策は、政権が代わっても安定して継続することが望ましい。野党と敵対姿勢ばかりでは、政策の幅も狭まらないか。

「単色」と言われる自民党だが、ひと皮めくれば「それでよいわけがない」という声は議員にもある。多様性を踏まえつつ統合をめざしてこそ、政権党にふさわしい。

産経新聞 2015年11月30日

自民立党60年 保守進める力量を高めよ

昭和30年11月の保守合同から60年の節目を、自民党は恵まれた時期に迎えたといえよう。

衆院で過半数を大幅に上回る議席を持つ一方、野党第一党の民主党は低迷し、第三極勢力も分裂などを繰り返す。

「1強多弱」といわれる中、自民党は公明党との連立で当面は政権与党を続けられようが、最も重要なのはそのことではない。「保守」としての課題に取り組み、どれだけ進められるかである。

60年のうち、自民党が衆院で第一党の座を明け渡したのは、民主党政権の3年3カ月だけだ。

大きな歴史の流れに沿って、自民党が国のかじ取りをしてきた結果だろう。自由と民主主義を掲げ、日米同盟を堅持しつつ独立と経済発展を図ってきた。現実的な選択だった。

数的優位を持つ現状において、より求められるのは、課題の実現に向けた多様で活発な議論ではないか。

立党60年を機に、先の大戦後の占領政策や現憲法の制定過程、慰安婦など歴史認識問題を検証する組織を、総裁直属のものとして設置した。

だが、そこで議論はしても結論は出さないという。「歴史修正主義」といった批判が出て、対外摩擦が生じるのを恐れているのだろうか。中途半端な姿勢には、史実と日本の名誉を守り抜こうという覚悟が初めから欠けている。

党是であるはずの憲法改正に向けた動きも、足踏みしている印象が拭えない。

安全保障関連法の制定にあたっては、集団的自衛権の行使に公明党がより慎重な立場をとった。抑止力を強化し、日本の守りに資する内容にする観点で、自民党としての議論は十分だったのか。

法案審議の過程で、国民への説明を個々の自民党議員がどれだけ果たせたのか。

政党の務めは、国や社会が抱える問題を見極め、不人気な政策で国民への説明が難しい事柄であっても、果敢に訴え、責任をもって対応策を講じることだ。

先の大阪ダブル選での完敗など、戦い方のうまい相手には歯が立たないもろさも抱える。

政策を柔軟に展開し、国民の支持をつなぎ留めていける多様で力量のある人材、世代をいかに育てていくか。徹底した政策論議こそ、政党の生命線である。

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