韓国の朴教授起訴 自由な議論を封じ不当だ

読売新聞 2015年11月25日

韓国朴教授起訴 自由な歴史研究を封じるのか

これでは、歴史を巡る自由で冷静な研究活動や議論が成り立たない。

学術研究を立件するのは、公権力の乱用になりかねず、日韓関係に微妙な影も落としている。

韓国の地検が、朴裕河・世宗大教授を名誉毀損きそんの罪で在宅起訴した。著書「帝国の慰安婦」で、慰安婦の強制連行を否定し、元慰安婦の名誉を傷つけたという。

「『強制連行』という国家暴力が朝鮮人慰安婦に関して行われたことはない」とする朴教授の主張を「虚偽」だと決めつけた。朝鮮人慰安婦が「基本的に軍人と『同志』的な関係を結んでいた」とする記述なども問題視した。

これらの表現が、元慰安婦の人格権を侵害し、憲法が保障する「学問の自由」を逸脱している、と起訴理由に示している。

昨年6月に元慰安婦ら11人が告訴し、ソウル東部地検が捜査していた。検察が、専門家でも見解が分かれる史実の中身にまで立ち入って判断を下すのは疑問だ。

朴教授は、「曲解だ」と反論している。慰安婦の境遇は多様で、「性奴隷」「売春婦」などと一くくりにはできないと主張する。

著書では、戦時勤労動員だった挺身ていしん隊と慰安婦が今も混同されているという問題点も指摘した。

看過できないのは、地検が朴教授の主張を虚偽と断じた根拠として、河野官房長官談話や国連人権委員会のクマラスワミ報告なども挙げていることだ。

河野談話の作成過程では、旧日本軍による慰安婦の「強制連行」を裏付ける文書は見つかっていない。談話は日韓の政治的妥協の産物であったことが、昨年6月の日本政府の検証で判明している。

クマラスワミ報告には、20万人の朝鮮人女性が「性奴隷」となり、その後、大半が殺されたといった、根拠に乏しい記述が多数、含まれる。韓国の済州島で慰安婦を強制連行したという吉田清治氏の虚偽の証言も引用されている。

いずれも、慰安婦強制連行説の根拠とするには無理がある。

「帝国の慰安婦」は、一部修正された日本語版も刊行され、早稲田大主催のジャーナリズム大賞の受賞が決まっている。

朴教授は、朝鮮人慰安婦は旧日本軍の協力者でもあったと指摘する一方で、その過酷な境遇を作り出した責任は「大日本帝国」にあったと厳しく批判している。

こうした客観的な見解の表明さえも制約するようなら、慰安婦問題を巡る日韓の建設的な対話は困難と言わざるを得ない。

産経新聞 2015年11月22日

韓国の朴教授起訴 自由な議論を封じ不当だ

韓国の検察が、慰安婦問題をテーマにした『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河(パク・ユハ)・世宗大学教授を、元慰安婦に対する名誉毀損(きそん)罪で在宅起訴した。

慰安婦の「強制連行」を否定した同書の一部記述などを「虚偽」だと断じたもので、歴史研究を妨げる不当な起訴だ。これでは学術研究を支える自由な議論はできない。

『帝国の慰安婦』は一昨年、韓国で出版され、話題となった。

韓国では慰安婦を強制連行された「性奴隷」とする見方が広められ、言論界も異論を唱えにくい。そうした風潮の中、朴教授の著書は、帝国主義時代に慰安所が世界各地にできた歴史的背景や多様な境遇にあった慰安婦の実態を踏まえた議論により、日韓の理解を深めることを意図したものだ。

構成などを変えて日本向けに書き下ろされた同名の日本語版が朝日新聞出版から昨年刊行され、「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」の文化貢献部門に選ばれるなど、一定の評価もある。

もちろん、朴教授の著書内容に賛否はある。しかし、事実を踏まえて学問的に反論、議論を重ねることによって学術は発展してきたのではないか。

ソウル東部地検は「虚偽の内容で被害者らの人格権と名誉権を侵害し、学問の自由を逸脱している」とした。しかし同書は特定個人を非難したものではなく、一部記述を捉えた判断は不適切だ。

朴教授が「誤読」だと反論したのは当然である。

検察は「言論と出版、学問の自由」について「韓国憲法が保障する基本的権利」だとし、制限できるのは秩序維持や公共福利のため必要な場合、「自由と権利の本質的な部分を侵害しない範囲内」と述べている。「秩序維持」に偏りすぎた判断ではないのか。

検察が「虚偽」とした根拠も問題だ。1993年の河野洋平官房長官談話や、96年の国連人権委員会のクマラスワミ報告などが「客観的資料」とされた。だが、河野談話は根拠なしに作文された政治的妥協の産物である。

クマラスワミ報告も、引用した「慰安婦狩り」に関わったとする吉田清治証言はこれを紹介した朝日新聞も虚偽であるとして誤報と認めた。依拠する豪州ジャーナリストの著作も誤りが多い。

到底、客観証拠とはいえず、起訴の根拠とはなり得ない。

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