日露首脳間の対話を重ねる中で、北方領土問題の着地点をじっくりと探るしかあるまい。
安倍首相はトルコで、ロシアのプーチン大統領と会談した。第1次内閣を含めると、両氏の会談は12回目だが、成果に乏しかったのではないか。
焦点のプーチン氏の来日については、「最も適切な時期」を目指すことで一致した。当初は、今年中の予定だったが、事実上、年明け以降に先送りしたものだ。
ロシアの一方的なクリミア併合などに対して、米欧の反発は根強い。特に米国は、プーチン氏来日に否定的な立場だ。
現時点で、北方領土問題が進展する見通しも立たない。
国際情勢も、2国間関係も、来日の環境が整っていない以上、延期するのはやむを得まい。
日本は来年、先進7か国(G7)の議長国となる。G7の協調を大切にし、シリア情勢などの行方をにらみながら、来日時期を適切に判断することが求められる。
会談では領土問題について、2013年の日露共同声明に基づき「双方に受け入れ可能な解決策」を目指す方針を改めて確認した。
安倍首相は、「ロシアとは戦後70年を経ても、平和条約を締結できていない異常な状態が続いている」として、領土問題の解決に強い意欲を示している。
日露関係の強化は、中国を牽制する戦略的な狙いもある。焦らず、腰を据えて取り組みたい。
ロシアは、日本の出方を試すような揺さぶりを強めている。
ラブロフ外相らは、領土問題について一切譲歩しない考えを繰り返す。先月中旬には、シベリア抑留に関する資料の世界記憶遺産への登録に対し、突然、登録申請の取り下げを求めた。
ロシアで領土問題に関して重大な決断を下せるのはプーチン氏しかいない。首相が会談で「重要なことは、こうした形で2人で話し合うことだ」と指摘したのは、そうした認識に基づいている。
中国などとの国境を画定したプーチン氏は、日本との領土問題解決を政治的遺産にしたいはず。そう分析する外務省幹部もいる。
ただ、プーチン氏の真意はなお見えない。今回の会談でも、「ロシアの地方で会えればうれしい」と語り、首相の訪露を要請した。地方視察を通じて日本の投資に期待する、経済協力優先路線の一環とも解される。
首相の訪露を含め、首脳外交をどう進めるのが効果的か、慎重な見極めが必要だ。
この記事へのコメントはありません。