GDPマイナス 成長基盤を地道に強化したい

朝日新聞 2015年11月17日

さえない景気 ばらまきは許されない

今年7~9月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比0・8%減(年率換算)となり、4~6月期に続いてマイナス成長だった。

個人消費や、輸出から輸入を引いた外需は前期のマイナスからプラスに転じたものの、力強さに欠ける。企業の設備投資も過去最高水準の高収益が続いているにもかかわらず、水面下に沈んだままだ。

外需や設備投資の不振は、世界第2の経済大国である中国の変調が主因だろう。ただ、その中国経済も夏の株価急落後は小康状態にあり、リーマン・ショック時のような世界的な動乱にはなっていない。

ここは、足元の数字の浮き沈みに一喜一憂するのではなく、中長期的な視点で今後を見すえるべきだ。世界経済が頼む中国は、投資・輸出頼みの成長から内需中心の安定成長へ体質転換を迫られている。かつてのような高成長の継続は望み薄だけに、日本の成長率にもおのずと限界があろう。

安倍政権は「GDP600兆円」を掲げるが、それには毎年度、実質で2%、名目だと3%超の成長が必要だ。経済のパイを大きくすることは大切だが、実現の道筋が見えない高い目標を設定し、それに伴う税収増を財政再建計画に織り込むのでは、計画への不信感を高めるだけではないか。

財政面の当面の試金石は、今年度の補正予算と、その前提となる緊急対策である。

甘利経済再生相は、人手や資材の不足を踏まえ、景気刺激を狙った公共事業の追加を否定した。安倍首相は「1億総活躍社会」に関して掲げた目標に沿って、出産・子育てや介護分野に直結する項目に絞るよう、指示した。

しかし、補正予算は、災害復旧費や疾病流行の対策費など、予測できなかった緊急の支出に対応するのが役割だ。今年度の補正では、社会保障分野とともに、環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けた農林漁業対策も柱になりそうだが、そうした政策は本来、来年度の当初予算案の編成作業を通じて吟味するべきだ。

今年度の税収が見込みを上回りそうだとしても、その増額分を補正に回すことが当然のように語られているのはどうしたことか。国債の追加発行さえ避ければ財政規律は保たれると考えているのなら、とんでもない。国の今年度当初予算では、37兆円近い新規国債が計上されている。それを忘れてはならない。

読売新聞 2015年11月17日

GDPマイナス 成長基盤を地道に強化したい

景気の先行きを過度に悲観せず、中長期的な経済の成長基盤を強固にしなければなるまい。

内閣府が発表した今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は、前期より0・2%減少した。年率換算では0・8%減だ。2四半期連続のマイナス成長となった。

最大の要因は、企業の設備投資が前期比1・3%減と、予想以上に落ち込んだことである。

中国、新興国など海外経済の先行きへの懸念から、投資に二の足を踏む企業が多かったためだろう。膨らんだ在庫を減らすため、生産を抑制した影響もある。

一方で、個人消費は、0・5%増と、2四半期ぶりに伸びた。円安による食料品などの値上げが続いた反面、賃上げが広がり、実質賃金が上昇したためだ。

輸出も、円安の定着が追い風となって、前期のマイナスから2・6%増に改善した。住宅投資も3四半期連続で増えている。

景気回復の足踏みは否めないものの、甘利経済財政相は「雇用、所得環境の改善が続き、緩やかな回復基調にある」と説明する。

人口減に伴い、日本の潜在成長率は0%台に低下しているとされる。2四半期連続のマイナス成長は、少しの外的要因によって、デフレ脱却が遠のく日本経済の足腰の弱さを象徴している。

今、最も大切なのは、官民を挙げて、成長戦略を地道に充実・強化することである。

安倍首相は、名目GDPを600兆円に増やす目標を掲げる。子育て支援や介護施設の整備、環太平洋経済連携協定(TPP)参加に伴う農業強化策を柱とする緊急対策を今月中に策定し、15年度補正予算案に盛り込む方針だ。

対症療法的な公共事業の積み増しでなく、少子化に抗して成長力を底上げするような政策メニューを考えるべきである。

企業が過去最高水準の好業績を賃上げや配当増につなげることが重要だ。家計が潤うことで、個人消費を押し上げ、さらに企業収益も伸ばす「経済の好循環」を確実なものにしたい。

ここ数年、企業の設備投資計画自体は高い水準にある。経営者がデフレマインドを払拭し、計画を実行に移せるよう後押しすることこそが政府の役割だ。

経済団体の代表と意見交換する「官民対話」で要望のあった施策の検討はその一つだ。法人税実効税率の引き下げに加え、企業に新規事業の展開を促す医療、農業分野などの規制改革が急がれる。

産経新聞 2015年11月17日

GDP連続減 停滞脱却へ攻めの戦略を

企業がいくら業績を改善したといっても経済の好循環につながらない。そんな景気の現状がいつまで示されるのか。

7~9月期の実質国内総生産(GDP)が年率で0・8%減となり、2四半期連続のマイナス成長に陥った。

背景には中国経済の減速や消費の力不足があり、投資に対する企業のためらいが成長の足かせとなっている。

安倍晋三政権が掲げる成長路線に対し、企業が確信を持ちきれていない現実が底流にあるのではないか。だとすれば、首相にとっても見過ごせない状況だろう。

むろん、企業の責任は重い。経団連の榊原定征会長は「景気刺激策を導入してほしい」と語ったが、主役はあくまでも民間だ。政府の対症療法を期待する前に、自ら需要を開拓する前向きな経営を根付かせるよう求めたい。

「連続減」のなかでも、力強さには欠けるものの個人消費が2四半期ぶりに増加した。輸出もプラスだった。成長を押し下げた大きな要因は、設備投資の減少に加え、在庫調整が進んだことだ。

景気を過度に悲観する必要はない。かといって、停滞を長引かせるわけにはいかない。カギを握るのが企業の経営姿勢である。

企業の9月中間決算は、円安などで収益改善が続いていることを裏付けた。先の日銀調査では、設備投資への意欲もみられた。

問題は、景気回復に勢いがないため慎重姿勢から抜けられず、実際には企業の本格的な国内投資が進んでいないことだ。中国経済の変調がそれに拍車をかける。

経済再生には、収益に見合う投資や賃上げが欠かせない。政権が官民対話で設備投資を促すのも、企業の対応が不十分だという認識があるからだ。いくら法人税率を下げても、企業に内部留保がたまるばかりではないかといういらだちもある。

企業の投資は自社の成長に向けて判断する経営の根幹だ。政権の意向で動くものでないことは言をまたない。大切なのは、企業自らがリスクを踏まえ、攻めの戦略を構築できるかである。

政権として、「民」の力を十分に引き出す努力がさらに必要だ。名目GDP600兆円などを掲げても、看板が先行している印象は拭えない。税制、規制緩和などで企業の経営マインドを好転させる具体策に知恵を絞るべきだ。

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