パリ同時テロ 非道な「戦争行為」は許されぬ

朝日新聞 2015年11月27日

ロシア機撃墜 目標見失わぬ冷静さを

パリでの同時多発テロという不幸な事件は、国際社会の結束を促す機運を生んだ。国境を越えた暴力に団結して立ち向かう流れを乱してはならない。

ところが、トルコによるロシアの戦闘爆撃機の撃墜が、不穏な空気を漂わせている。両政府は非難の応酬をやめて、冷静に自制すべきである。

欧米各国、日本も、仲介を急ぎ、この事件がシリア問題への国際的な取り組みに水を差すことがないよう努めるべきだ。

両国の主張は食い違う。ロシア機はトルコの領空を侵したのか、警告はあったのか、トルコ機による攻撃は自国領の外だったのか。真相は見えない。

もともと両国間には最近、シリアのアサド政権と戦う少数民族トルクメン人の問題がくすぶっていた。トルコにとっての同胞民族の地域を、ロシアが爆撃していたとされる。

その渦中におきた撃墜をめぐり、ロシアは対抗措置としてシリア側の国境近くに地対空ミサイルを配備するといい、トルコ側も今後の侵犯に「あらゆる措置をとる」としている。

いずれも国内向けにあえて強硬発言をしている面もあろう。だが国際情勢を考えれば、対立はだれの利益にもならない。

ロシアはパリのテロ後、フランスなどとの協調姿勢に転じており、ウクライナ問題をめぐる孤立感がやや和らいでいる。

トルコもこれまで、ウクライナ問題をめぐる対ロ制裁に加わらず、欧米と異なる良好な関係を続けてきた。両政府とも頭を冷やし、穏当に事件の影響を落ち着かせるのが賢明だ。

各国が向き合うべき相手は、過激派組織「イスラム国」(IS)であり、目標はシリア内戦の収束におくべきだ。足並みの乱れはISを利するだけだ。

今回の撃墜事件の背景には、ロシアやトルコなどがそれぞれの思惑で勝手な軍事行動をシリアで進めている問題がある。

IS掃討といいつつ、ロシアはトルクメン人を含む反アサド各派を爆撃し、トルコもクルド人組織への攻撃を加えているという。そうした関係国の利己的な行動が続く限り、偶発的な衝突のおそれはぬぐえない。

事件を機に、トルコを含む米欧中心の有志連合とロシアは、シリアへの介入行動をしっかり調整する作業を急がねばならない。軍事行動の狙いをISに絞るとともに、アサド政権と、内戦を続ける各派に対話の席につくよう説得に動くべきだ。

関係国が互いにいがみ合うようでは、テロ対策でも難民支援でも、希望の光は見えまい。

読売新聞 2015年11月27日

露軍機撃墜 非難合戦を続けている場合か

パリ同時テロで生まれた米欧とロシアの協調機運に水を差す事態だ。非難合戦で過激派組織「イスラム国」掃討の足並みを乱してはならない。

トルコ軍機が、シリアとの国境付近で露軍の爆撃機を撃墜した。トルコは、露軍機が領空に侵入し、再三の退去警告にも応じなかった、と主張している。領空侵犯については、これまでも繰り返し抗議してきたという。

9月末から「イスラム国」掃討を名目にシリアで空爆を始めたロシアは、シリアのアサド政権を擁護する。トルコはアサド政権の打倒を最優先し、反体制派を支援する。今回の撃墜の背景には、両国の立場の根本的な違いがある。

プーチン露大統領は侵犯を否定し、「重大な結果をもたらす」と強く反発した。ラブロフ外相がトルコ訪問を中止し、トルコ産農作物の輸入を制限するなどの対抗措置も取り始めた。

だが、北大西洋条約機構(NATO)はトルコの言い分を支持し、米軍も露軍機が警告を受けていたことを確認した。ロシアの主張は信用性に欠けるのではないか。

重要なのは、ロシアとトルコが批判の応酬をやめ、再発防止と事態の沈静化へ動くことだ。

米国を中心とする有志連合とロシアは個別に、シリアで空爆を続けている。今回のような不測の事態を防ぐために、軍同士の連絡体制を整えることが急務である。

国際社会は、共通の敵である「イスラム国」の弱体化に集中すべきだ。シリア内戦終結と政権移行に向けた関係国の協議の空転も避けねばならない。

国連安全保障理事会はテロ防止決議を全会一致で採択し、「イスラム国」打倒の決意を新たにしたばかりだ。英国はシリアへの空爆拡大方針を示し、フランスは空母投入で攻撃態勢を強化した。

オランド仏大統領は、ロシアも含めた大包囲網の構築を目指し、活発な首脳外交に乗り出している。オバマ米大統領とワシントンで会談し、「イスラム国」対策で協力を深めることで一致した。一連の国際連携を大切にしたい。

プーチン氏は、フランスを対テロの「同盟国」と位置づけ、協調姿勢を見せている。ウクライナ介入に伴う米欧の制裁緩和を実現させ、国際的孤立から脱却する狙いがあるのだろう。

しかし、アサド政権を温存したまま、軍事力に頼ってシリア情勢で主導権を握ろうとする戦略に変化は見られない。これでは、米欧が「共闘」するのは難しい。

産経新聞 2015年11月26日

ロシア軍機撃墜 「真の敵」見失わず共闘を

シリアへの軍事介入を続けるロシア軍の戦闘爆撃機が、トルコ・シリア国境付近でトルコ軍機に撃墜された。

パリの同時多発テロを受け、国際社会は過激組織「イスラム国」掃討に向けて結束を強めようとしている。ロシアやトルコも、イスラム国の脅威と戦う側にいる。「真の敵」を見失ってはならない。

米国はフランスなどとともに両国に緊張緩和を働きかけ、イスラム国壊滅への共闘のあり方などを改めて構築する必要がある。

撃墜事件が拡大し、中東地域をめぐる混乱にさらに拍車がかかるような事態は避けるべきだ。

オバマ米大統領はフランスのオランド大統領とのワシントンでの会談で、ロシアとトルコの対立激化に懸念を示した。

オランド氏はロシアのプーチン大統領との会談を近く予定している。空爆など単独的行動が目立つロシアに対し、危機拡大を避けるよう強く呼びかけ、米仏との連携を求めることが重要だ。同様の外交努力はオバマ氏にも積極的に果たしてもらいたい。

撃墜について、トルコ側は度重なる警告にもかかわらず、ロシア軍機がトルコ領空を侵犯したためだとしている。トルコが加盟する北大西洋条約機構(NATO)も領空侵犯があったという認識を示した。

これに対し、ロシア側は領空侵犯を否定している。聞き捨てならないのは、トルコを「テロの共犯者」などと決めつけて反発するプーチン氏の発言である。

トルコがイスラム国の石油密輸ルートになっているなどと指摘しており、撃墜が両国関係に「重大な結果」をもたらす、という言い方は脅しにも等しい。

トルコとの国境付近で軍事作戦が必要だったとすれば、まさにトルコや関係国と情報共有を図るべきだ。作戦全体の調整にも米国は主導的な役割を果たすべきだ。

米国、ロシアなど関係各国は、シリアのアサド政権と反体制派の直接交渉を年内に開始し、1年半以内に民主選挙を実施する行程表で合意している。

アサド政権存続の是非などについては、依然、対立点が残されている。だが、各国が妥協点を見いだし、内戦終結への具体的な道筋を描かなければならない。それが、イスラム国の包囲網強化につながる。

朝日新聞 2015年11月20日

パリ同時テロ 冷静で着実な対処こそ

同時多発テロがおきたフランスのパリは、いまも緊張状態にある。関係先とされる現場では当局による銃撃戦もおきている。平穏な市民生活が一日も早く戻るよう望みたい。

オランド大統領には、当面の治安を回復し、国民の動揺をやわらげる責任がある。同時に、大局的にみてテロの土壌をなくすには何が必要か、冷静で着実な施政を考えてほしい。

オランド氏は、自国が「戦争状態にある」と宣言した。呼応して、米国とロシアはシリア空爆での連携を確認した。欧州連合では、相互防衛条項を発動することになった。

テロに怒り、高ぶる世論があるのは仕方あるまい。だが一方で、暴力の連鎖を抑えるうえで有用なのは、力に傾斜した言動ではなく、落ち着いた分析と対応である。

「対テロ戦」をかかげて軍事偏重の戦略にひた走った米国のあと追いになってはならない。イラク戦争が、今回の事件を企てたとされる過激派「イスラム国」(IS)の台頭をまねいた教訓を思い起こすべきだ。

テロ対策は、組織網を割り出し、資金源や武器ルートを断つ警察、諜報(ちょうほう)、金融などの地道な総合力を注ぐ取り組みだ。病根をなくすには、不平等や差別、貧困など、社会のひずみに目を向ける必要がある。軍事力で破壊思想は撲滅できない。

とりわけ今回のテロで直視すべき事実は、容疑者の大半は、地元のフランス人とベルギー人だったことだ。欧州の足元の社会のどこに、彼らを突き動かす要素があったのか、見つめ直す営みが必要だろう。

オランド政権は、治安対策を強める憲法改正や、危険思想をもつイスラム礼拝所の閉鎖、外国人の国外追放手続きの簡素化などを提案している。

それらは本当に自由主義社会を守ることにつながるのか、深い思慮を要する。異分子を排除するのではなく、疎外感を抱く国民を包含するにはどうすべきか。人権大国として、移民社会の現状や国民の同化政策をめぐり、開かれた議論を進めることも肝要だろう。

冷静な対処はむろん、フランスだけでなく、米国、ロシアを含む国際社会にも求められる。

事件の背後にいるISに対し、有志連合を主導する米国は空爆を拡大し、ロシアもISの拠点都市などを爆撃した。巻き添えになる人びとの被害は、改めて憎悪の連鎖を広げる。

テロを機に国際社会が最も連携すべき目標は、シリアの停戦を含む中東和平づくりにある。

読売新聞 2015年11月21日

パリ同時テロ 「イスラム国」打倒へ結束せよ

米欧やロシアなど国際社会が、過激派組織「イスラム国」打倒という共通の目標に向けて結束することが急務である。

世界を震撼しんかんさせたパリ同時テロから1週間がたった。フランスは、国内のテロ抑止とシリアにある「イスラム国」拠点への空爆に力を入れている。

仏当局は、事件の首謀者とされる「イスラム国」幹部が潜伏しているパリ近郊のアジトを強襲し、テロ再発を辛うじて阻止した。

同時テロの犯行グループには、フランスやベルギーで育ち、過激思想に染まっていた共通点がある。同時テロ実行前、シリアと欧州を行き来していたという。

欧州連合(EU)内の国境自由往来の普及がテロリストの移動を容易にした面は否定できない。

問題なのは、欧州諸国の治安当局が、国際手配された幹部がシリアから欧州入りしていた事実を把握できなかったことである。

EUは、域外と接する加盟国の国境での出入国管理を早急に厳格化せねばならない。各国の治安当局による情報共有も緊密化する必要があろう。EU法相・内相理事会や首脳会議の課題だ。

オランド仏大統領は、非常事態の延長により、捜査態勢を拡充し、国内の治安維持を図る。

一方で、仏軍空母を地中海に出動させ、米国と連携して、シリアでの「イスラム国」に対する空爆を強化している。

EUは初めて集団的自衛権を発動し、各国がフランス支援策の検討に入った。キャメロン英首相はシリア空爆に参加する意向を示した。空爆を巡って、米欧の協調が深まったことは評価できよう。

ロシアも、エジプトで先月起きた露旅客機の墜落を爆弾テロと判断し、独自に実施してきたシリア空爆を自衛権によるものと位置付けた。プーチン大統領は、オランド氏と、対「イスラム国」作戦での連携で合意した。

ロシアが対仏協調姿勢をアピールするのは、ウクライナ介入などで陥った国際的孤立から脱却する狙いもあるのではないか。

「イスラム国」との間に対話は成立しない。空爆など軍事力行使に加え、インターネットによる宣伝戦への対抗措置など、包括的な対策を講じるしかあるまい。

国連安全保障理事会では、フランスが中心となって、「イスラム国」打倒を目指す決議案の検討が始まった。テロ対策が、欧州や中東だけでなく、世界規模の優先課題であることを、改めて確認しなければならない。

産経新聞 2015年11月25日

靖国神社で爆発音 テロと戦う法改正を急げ

新嘗祭(にいなめさい)や七五三でにぎわう靖国神社に爆発音が響いた。現場のトイレでは天井に穴が開き、タイマーや乾電池、リード線や束ねられた金属製パイプなどが見つかった。

爆発物としてはお粗末な代物であり、おそらくパリの同時多発テロに刺激を受けた卑怯(ひきょう)者の単独犯行であるのだろう。

ただ、不特定多数の人が集まる警備対象の場所が襲われた事実は重い。テロ警備のあり方を根本から問い直すべきだ。

国内では来年5月に伊勢志摩で主要国首脳会議、2019年にラグビーのワールドカップ、20年には東京五輪と世界の注目を集める催しが続く。日本が、いつテロの標的とされてもおかしくない。

しかも、国際テロリストが犯行に多く用いるのは、軍用爆薬、軍用爆弾である。靖国神社の事件は、いつ、どこにでも爆発物が仕掛けられる可能性があることを示している。

警備に隙や穴がないよう、万全を期すことはもちろんだが、すべてを守りきることは難しい。だからこそ守りの警備に特化することなく、並行して攻めの警備態勢を整える必要がある。そのための法改正を、まず急ぐべきだ。

朝日新聞 2015年11月17日

テロとシリア 内戦の収束へ団結を

国際社会は、喫緊の人道問題に団結して向き合えるか。暴力と迫害の連鎖を断ち切るための世界の力量が試されている。

フランスを襲った同時多発テロを機に、中東シリアの内戦をめぐる論議が再燃している。

首謀したとされる「イスラム国」(IS)は、シリアを拠点にしつつ、戦乱に乗じて伸長した過激派組織だからだ。

テロの翌日にウィーンであったシリア問題の多国間協議は、異例なことに、和平づくりの具体的な目標の合意をみた。対立してきた米欧とロシアが一気に危機感を強めたためだ。

パリの市民らの悲劇によって生まれた機運を無駄にしてはならない。国連を含むあらゆる場で、内戦の収束へ向け、国際社会は本腰を入れるときだ。

17カ国が集ったウィーン協議は、シリアのアサド政権と反体制派による移行政権を6カ月内につくる目標を定めた。来年元日までに、政権と反体制派の公式交渉を国連が開くという。

ウィーン協議に政権も反体制派も参加しておらず、反体制派には統一された組織もない。目標のハードルは極めて高いが、テロを共通の脅威とみて論議の歩を進めた意義は小さくない。

アサド大統領が退陣すべきかどうかをめぐり、米欧とロシアはいまも意見が食い違う。国連安保理がシリア問題に大きく動けずにきたのもそのためだ。

だが事態は急を要する。アサド大統領の処遇問題は当面棚上げして、停戦の枠組みづくりを急ぐべきだろう。混乱を放置すれば、ISを利するだけだ。

もはやどの主要国にとっても、ISは遠い中東の問題ではあり得ない。エジプトでのロシア旅客機墜落、レバノンの連続爆発、そしてパリのテロと、先月から相次いだ事件はいずれもISが犯行声明を出した。

さらに、ISが支配していたイラク国内の町では、多数の女性の虐殺遺体が見つかるなど、蛮行が横行している。

パリの悲惨なテロにより、中東の人々が日々さらされているISの脅威が、日米欧など世界にも「可視化」された形だ。

オバマ米大統領はテロ直前まで、これまでの空爆の成果を強調して「ISを封じ込めた」と語っていたが、それは希望的な見方に過ぎなかった。

ISの掃討に米欧の軍事的関与は必要ではあるが、空爆で過激思想の病根を絶つことはできない。シリアはじめ中東の和解と安定化があって初めて、ISの温床をなくすことができる。

そのためにも、国際社会が真剣に結束せねばならない。

読売新聞 2015年11月19日

国内テロ対策 水際を固めて発生を阻止せよ

海外のテロ情報を収集し、国内での犯行阻止につなげる。その体制整備が喫緊の課題である。

安倍首相は、主要20か国・地域(G20)首脳会議からの帰国直後に開いた国家安全保障会議(NSC)で、「テロの未然防止に全力を尽くしてほしい」と指示した。

パリ同時テロを引き起こした過激派組織「イスラム国」は、日本も標的に挙げている。来年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)や2020年東京五輪・パラリンピックを控えるだけに、対策に時間的な猶予はない。

パリのテロでは、不特定多数の民間人が集まる劇場や競技場が狙われた。ソフトターゲットと呼ばれ、政府機関などに比べて警備が手薄になりがちだ。

ソフトターゲットになり得る場所は日本にも多い。入場者の手荷物検査といった対策が必要だ。ただし、全ての施設で手厚い警備を実施するのは不可能だろう。

重要なのは、テロリストを入国させないことだ。そのためには、国際テロ組織や個々のテロリストに関する情報が欠かせない。事前に機密情報をどこまで入手できるかに、水際対策の成否がかかっていると言えよう。

「イスラム国」は日本人の人質2人を殺害した。この事件を受け、政府は今年5月、「国際テロ情報収集ユニット」を外務省に設置することを決めた。

政府の全関係機関が共同でテロ情報を収集する官邸主導の組織となる。来春の設置を目指してきたが、前倒しも検討するという。

独立した対外情報機関を持たない日本は、テロ情報の保有量が少ないとされてきた。特定秘密保護法の施行で、その弱点は改善されるだろう。早急にユニットを始動させ、外国の情報機関との連携を強めてもらいたい。

今後も観光などで来日する外国人の増加が見込まれる。空港などの入国審査で、不審人物を迅速にチェックする必要がある。

法務省は、テロリストらの顔画像をデータベース化し、瞬時に照合できるシステムを来年度から全国の国際空港に導入する方針だ。指紋によるチェックと併せ、有効に機能させねばならない。

組織的犯罪の対策を巡っては、重大犯罪を計画した段階で処罰対象とする共謀罪の創設の是非が議論されてきた。現行法で適用範囲が厳しく制限された通信傍受の柔軟な運用を望む声もある。

人権に配慮しつつ、実効性のある方策を見極めたい。

産経新聞 2015年11月19日

「イスラム国」 壊滅へ国際連携を強めよ

ロシアは、エジプトのシナイ半島で224人の乗員乗客が亡くなったロシア機の墜落事故を爆弾テロと断定し、過激組織「イスラム国」が首都と称するシリア北部ラッカを空爆した。

パリが多発テロの舞台となったフランスのオランド大統領は、イスラム国掃討作戦で米露との協力態勢を強化すると表明した。英国のキャメロン首相もシリア空爆に参加する意向を示した。

ロシア機のテロ断定については、菅義偉官房長官も「ロシアへの強い連帯を表明する」と語り、テロの未然防止に向けた国際社会との連携を強調した。

イスラム国の卑劣なテロは、全世界に向けられている。テロリスト集団の壊滅に向け、国際社会はこの機を逃してはなるまい。

注目したいのは、ロシアが空爆に際し、米国に事前通告を行ったことだ。米露両軍の偶発的な衝突回避に向けて、双方が先月合意した手続きに基づく初の通告だったという。

米欧とロシアは、シリアのアサド政権の評価をめぐり対立してきた。国際協調、協力、調整がなければ掃討作戦の実は挙がらない。テロ震源地の壊滅が先決だという認識を持ち続けてほしい。

オランド大統領は、パリの同時多発テロを「シリアで計画し、ベルギーで組織され、フランスで実行された」と述べた。

主犯格のベルギー国籍の男は、シリアのイスラム国支配地域に出入りしていたとされる。震源地はシリアにあるということだ。

もちろん、空爆だけでイスラム国を壊滅させることはできない。「国」を名乗るテロ集団の存在を許した、シリアの内戦を終結させることが不可欠だ。

米欧露やアラブ諸国などがウィーンで開いた外相級協議では、シリアのアサド政権と反体制派の交渉を年内に開始し、18カ月以内に民主選挙を実施するなどの行程表で合意している。

アサド政権の扱いなど主要な対立点は残されたままだが、内戦への対応の遅れはイスラム国を利する。失敗を重ねてきた政治交渉の進展を期待したい。

対テロでの連帯は、ロシアがウクライナ南部クリミア半島を武力で一方的に併合したことを見逃すことにはならない。国際社会の一員として、責任ある行動をとるべきことは言うまでもない。

朝日新聞 2015年11月15日

パリの同時多発テロ 許せぬ自由社会への暴力

非道なテロに慄然(りつぜん)とする。無差別に多くの人命を奪った蛮行はフランスだけでなく、世界にとっての悲劇である。

金曜夜のパリが血に染まった。中心部の複数の場所でほぼ同時に銃の乱射や爆発があり、おびただしい死傷者が出た。

襲われたのは、いずれも多数の人々でにぎわう場だ。若者が集うロックコンサートの会場ホールをはじめ、レストラン、カフェで銃の乱射があり、郊外のサッカースタジアムでは自爆テロとみられる爆発が起きた。

被害者のほとんどは、紛争や過激思想とは無縁の、ふつうの市民である。犠牲者や遺族の無念さは察するにあまりある。

市民を狙った卑劣な暴力を断じて許すことはできない。

フランス政府は、当面は治安の回復により、国民の不安を取り除くことが大切だろう。同時に、テロの実態と背景の解明をしっかり進めてほしい。

日本を含む国際社会は、力を合わせてその取り組みを支えたい。テロの矛先が向いているのは、フランスだけではない。明日は自国に突きつけられる問題だとの意識を肝に銘じたい。

■市民の分断を防げ

パリではことしの1月、風刺週刊紙「シャルリー・エブド」編集部と、ユダヤ人の食品雑貨店が相次いで襲われた。市民や警官ら17人が死亡した。

その記憶がまだ薄れていない時の出来事である。人びとが受けた衝撃は甚大だ。

パリではまた、今月末から国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)が開かれる予定で、不安は世界に広がっている。テロリストたちはそれも狙いだったのかもしれない。

1月以降、仏政府は警備を強化し、再発防止に全力で努めていたはずだった。しかし、それでも今回のような同時多発テロを防げなかった。

軍などの施設と異なり、民間施設は「ソフトターゲット」と呼ばれる。攻撃に弱いとわかっていても、人の動きへの規制を強めれば、自由主義社会の原則が侵食される。

テロが自由に対する挑戦と言われるゆえんである。

直接の政治的な動機が何であれ、平和な文明社会に恐怖をもたらし、人々の間に亀裂をつくる意図があるのがテロの常だ。

今回も1月と同様に、イスラム系過激派の関連が指摘されている。だとしても、テロとイスラム教徒や移民社会とを安易に結びつけるべきではない。

フランスのイスラム教徒団体がテロを非難する声明を出したのは当然だろう。こうした事件の後では、イスラム教徒らへの攻撃や移民排斥をあおる言動がしばしばみられる。

テロがもくろむ社会の分断をみすみす許してはならない。冷静に着実に、自由の原則を曲げずに対策を進めるべきだ。

■紛争と混乱の連鎖

仏政府はこの事件について、中東で勢力を伸ばしてきた過激派組織「イスラム国」(IS)の犯行とみている。

ISに影響を受けた人物によるテロは世界各地で起きている。仏政府によると、今回の犯行は、フランスの国外で計画、組織されたものだという。

仏政府は昨年から、中東での軍事行動に踏み切った。米国主導の有志連合に加わり、イラクに加え、この秋からはシリアでもISを狙う空爆を始めた。

今回がその報復であるとしたら、世界はあらためて、国境や地域を越えた地球規模の暴力の連鎖を目の当たりにしていることになる。

01年の米同時多発テロは、当時アフガニスタンに拠点を置いた過激派のアルカイダと呼ばれる組織による攻撃だった。

04年のスペイン・マドリードでの列車爆破や、05年に英国を襲った同時爆破テロは、イラク戦争と中東の混乱に関連して起きた。今回も、IS問題をめぐる中東の戦火が欧州に及んだものである可能性が高い。

収束の兆しが見えないシリアの内戦は二十数万もの死者と、数百万の難民や避難民をだしている。その混沌(こんとん)が、テロの拡散や、難民の流出という深刻なグローバル問題を生んでいる。

遠い海外のどこであれ、地域の荒廃、戦乱、貧困はやがて、国際社会全体の安定をむしばむ。いまの世界を覆う病理と、それに立ち向かう国際社会としての意思をいま一度、こうしたテロの惨禍を機に確認したい。

■克服へ国際連帯を

今回のテロを受けて、オランド仏大統領は非常事態を宣言し、国境を閉鎖した。人々に外出しないよう呼びかけ、パリ市内の移動も制限している。

安全確保と捜査の必要性を考えると当然の対応だが、市民生活が停滞するのは免れない。世界をリードする人権国家としての誇りも忘れずに、この難局を乗り越えてもらいたい。

日本を含む各国も、フランスの人びとの苦しみ、悲しみに心を寄せるとともに、テロなき世界への決意を新たにしたい。

読売新聞 2015年11月18日

G20対テロ声明 国境管理の徹底で封じ込めよ

パリ同時テロを機に生まれた国際社会の結束を実効性ある対策につなげねばならない。

主要20か国・地域(G20)首脳会議は、テロと戦う決意を示す緊急声明を採択し、閉幕した。

声明は、パリ同時テロと10月のトルコでの爆弾テロを「最も強い表現で非難する」と明記した。

テロとの戦いを「すべての国の優先課題」と位置付け、テロ資金の遮断やテロ組織の宣伝戦への対抗措置を各国に求めた。急増する外国人戦闘員に関する情報の共有や国境管理の徹底も促した。

どの具体策も目新しさはない。関係国は既に取り組みを進めているが、大規模テロを防げずにいる。国際社会の連帯を強め、その効果を高めることが求められよう。

オバマ米大統領は、シリアでの空爆作戦などを強化する意向を表明した。プーチン露大統領も、「力を合わせることでのみ、戦いの効果がある」と述べた。

G20を欠席したオランド仏大統領は、過激派組織「イスラム国」と「戦争している」と力説した。掃討に向けた協力要請に、米露は積極的に応じるべきだ。

フランスは近く、「イスラム国」打倒に関する決議案を国連安全保障理事会に提出する。安保理は決議を迅速に採択し、国際社会の総意として、掃討作戦を後押しすることが重要である。

テロは、人やモノの流れを滞らせ、世界経済の不確実性を高める。G20は、貧困や若者の失業など、テロの背景にある課題の克服を目指し、各国の成長底上げに努めねばなるまい。

新興国での雇用創出や生活向上に効果的なインフラ(社会資本)投資の拡大がカギを握る。G20首脳宣言が「最優先事項は雇用を生み、不平等を減らす成長戦略だ」と指摘したのはもっともだ。

会議では、中国の景気減速や米国の利上げも議題となった。いずれも新興国経済に打撃を与えかねない問題だ。テロの芽を摘むという観点からも、悪影響を最小限にとどめることが大切である。

中国の景気が腰折れすれば、石油などの資源輸出国は苦境に陥る。各国から、中国が世界経済の波乱要因とならないよう、構造改革の努力を迫る声が相次いだ。

安倍首相が「過剰生産設備の解消など構造的課題への努力が求められる」と語ったのはうなずける。

米国が利上げすれば、新興国からの資金流出が加速しかねない。首脳宣言が金融政策の慎重な判断を促したのは妥当だろう。

産経新聞 2015年11月18日

国内のテロ対策 官民で警戒水準を高めよ

パリの同時多発テロの映像は衝撃的だった。平和な街が一瞬のうちに戦場のごとき緊張を強いられる。そしてこれを、遠い欧州の脅威と意識から遠ざけてはならない。テロは、いつ国内で起きてもおかしくはない。

日本では来年5月、伊勢志摩で主要国首脳会議が開かれ、2019年にはラグビーのワールドカップ、20年には東京五輪が開催される。

世界の注目を集める国際会議やスポーツ大会は、テロリストの格好の標的となり得る。官民を挙げて、テロへの警戒水準を高めなければならない。

フランスとドイツのサッカー代表戦が行われていたパリ郊外サンドニの競技場を襲ったテロリストの1人は、観戦チケットを所持していたとされる。スタンドへの侵入を許していれば悲劇はさらに膨らんでいただろう。

パリのテロで犯行声明を出した過激組織「イスラム国」は今年1月、日本人2人を殺害し、日本もテロの標的であると表明した。

日本が歩むべき道は、テロと戦う国際社会とともにあることであり、その恐怖から目を背けることではない。

テロを未然に防ぐため、何より重要なのは情報である。テロリストの動向を把握する上で外国情報機関との連携が不可欠であり、これを担う自前の対外情報機関の創設も喫緊の課題である。

自民党の谷垣禎一幹事長はパリのテロを受け、重大犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となる共謀罪の新設を訴えた。これまで共謀罪新設のための組織犯罪処罰法改正案は3度提出されたが、いずれも廃案となっている。

先の通常国会で4度目の提出はなく、司法取引の導入や通信傍受の適用範囲を広げる刑事司法改革関連法の成立も見送られた。政治の都合によるもたつきをテロリストは待ってくれない。

過激組織や過激思想は、健全なイスラム社会にとっても敵である。彼らを偏見の対象とすることがあってはならず、国際テロ対策のパートナーとして情報収集の協力を求めるべきだ。

空港や競技場などのゲートでは手荷物検査をより徹底すべきで、乗客や観客が不便に思うこともあるだろう。だがこれは、わが身を守る手立てでもある。テロ対策は国に任せるだけでは成立しない。一人一人の覚悟を必要とする。

読売新聞 2015年11月17日

対「イスラム国」 米露の主導権争いは不毛だ

シリアを巡る米国とロシアの不毛な対立は、パリ同時テロを実行した過激派組織「イスラム国」を利するだけである。

泥沼化するシリア内戦と難民流出を収拾し、「イスラム国」対策で国際社会の足並みをそろえることが急務だ。

米欧露やアラブ諸国などによる関係国会合は、シリアのアサド政権と反体制派の交渉を年内に開始し、18か月以内に民主選挙を実施するなどの行程表で合意した。

シリア内戦への対応が遅れたことで、「イスラム国」の伸長を許し、パリ同時テロを招いたとの認識が広がったためだろう。

オバマ米大統領とプーチン露大統領も、主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせトルコで非公式に会談し、停戦や新政権への移行の必要性で一致した。行程表を「外交的進展」と評価した。

米国が、アサド政権寄りのロシアが主導した行程表を受け入れたのは、関係国の結束を優先した、苦渋の譲歩と言えよう。

ただ、アサド政権の継続を容認するかどうかについて、米露はなお対立している。行程表の着実な履行に向けて対話を続け、歩み寄らねばならない。

オバマ政権は10月末、「イスラム国」との戦いでシリアに米地上軍を駐留させない方針を転換し、特殊部隊派遣を決めた。ロシアがシリア空爆で本格的な介入を始めたことへの対抗策とみられる。

特殊部隊の規模は50人未満で、反体制派やクルド人部隊の訓練、支援を行う。前線には配置せず、戦闘任務は担わないという。

オバマ氏は、シリア国外で反体制派の戦闘員を訓練し、地上戦に送り込む意向だった。しかし、志願者が少なく、計画が事実上破綻したことから、米軍によるてこ入れを余儀なくされた。

情勢悪化のたびに小出しの対応をするのでは効果は望めまい。

米国はロシアの空爆について、「8~9割が反体制派を狙ったものだ」と批判する。ロシアが中東に強固な足場を築くのを警戒しているのだろう。

「イスラム国」の掃討は、米露共通の目標のはずである。

10月末にエジプト・シナイ半島で起きたロシアの旅客機墜落は、爆破テロとの見方が濃厚になっている。「イスラム国」は以前からロシアのシリア空爆に対する報復を宣言し、傘下組織が墜落後に犯行声明を出した。

報復テロと確認されれば、米露が情報交換などで協力する必要性が一段と高まろう。

産経新聞 2015年11月17日

テロとの戦い 強固な連帯で分断許すな

パリ同時多発テロの直後に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合で、フランスへの連帯が相次いで表明された。

国際社会がテロに屈せず、結束を確認したことは極めて重要である。

今回のテロは、過激組織「イスラム国」が有志連合の空爆に追いつめられ、フランスを対テロの輪から脱落させようとして決行したとの分析もある。

この数日、世界各国は市民レベルを含め、フランスへの連帯をさまざまな形で表明した。テロと戦う国家側の分断を図る狙いが相手にあるとすれば、明確にはねつけなければならない。

仏空軍は事件の2日後、シリア北部のイスラム国拠点に激しい空爆を加え、テロに屈しない断固たる姿勢を行動で示した。

再発防止のため、警備に万全を期すなど、仏政府は引き続き対テロ戦の最前線に立つ。国際社会は強力にこれを支援すべきだ。

喫緊の課題は、外国人戦闘員の流入阻止や国境管理の厳格化、テロ資金の供給遮断などである。

昨年前半には約1万5千人とされたイスラム国の外国人戦闘員は、最近では3万人に増えたと推計されている。

今回、実行犯グループは隣国のベルギーで組織され、仏国内で支援を受けて事件を起こしたとみられている。

国境をまたぐネットワークがあり、テロは周到に計画され、実行された。オランド大統領が「戦争行為」と批判したのも、そうした背景をつかんだからだろう。

周辺国とテロに関する情報を有効な形で共有できたのか。その検証に基づき、情報共有のあり方を再検討すべきだ。フランスのみならず各国共通の課題である。

安倍晋三首相は首脳会合で、「どこの国でも起きる問題だ」と述べた。各国がパリの事件に学ばなければならない。

実行犯の1人が難民に紛れていた可能性も指摘されている。欧州では難民問題が難しい状況にあるなかで、人の流れをどこまでチェックできるかは地道な戦いだ。

シリア内戦の打開など、テロの温床とされる問題の解決も欠かせない。対立する米露は、オバマ、プーチン両大統領が会談する機会があったものの、空爆をめぐる調整などもできなかった。さらに協議を重ね、内戦終結への道筋を模索してほしい。

読売新聞 2015年11月15日

パリ同時テロ 非道な「戦争行為」は許されぬ

一般市民を無差別に襲った残虐なテロである。いかなる動機であれ、断じて許されない。

国際社会はテロ組織の蛮行を阻止するため、改めて結束を強めねばならない。

パリの劇場やレストランなどで13日夜、銃撃や爆発がほぼ同時に発生し、120人以上が犠牲となった。フランスのオランド大統領はテレビ演説で、「前例のないテロが起きている」と述べ、非常事態を宣言した。

過激派組織「イスラム国」の傘下組織が14日、インターネットに犯行声明を出した。オランド氏も記者会見で、「イスラム国」による「戦争行為」と断定した。

フランスは今年9月から、シリアで、米国が主導する有志連合による「イスラム国」への空爆に加わっている。これに対する報復との見方が有力だ。

犯人グループはロックコンサートが行われていた劇場で、自動小銃を乱射し、観客を殺害した。郊外の競技場付近では、自爆テロとみられる爆発が起きた。サッカー仏独代表の親善試合をオランド氏が観戦していた最中だった。

複数の実行犯が死亡したとされている。犯人の一味は逃走している恐れもある。

仏当局は、事件の早期収拾と治安の回復に努め、犯行の全体像を解明してもらいたい。

パリでは今年1月、「イスラム国」とは別の過激派につながる犯人が、政治週刊新聞社などを銃撃する事件があった。事件後、仏当局は過激思想に染まった人物らへの監視を強め、兵士1万人を動員するなど、厳戒を続けていた。

欧州では、イスラム系の若者が過激派組織の仲間に引き入れられる問題が深刻化している。

パリは、国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議(COP21)の開催を今月末に控える。会議には各国の首脳級が集まる。警備態勢の見直しが急務だろう。

オバマ米大統領は、今回のテロを、「人類全体と我々が共有する普遍的な価値への攻撃だ」と非難した。キャメロン英首相も、フランスに対し、「支援できることは何でもする」と語った。

安倍首相は「テロ防止に向けてフランスをはじめ国際社会と緊密に連携し、取り組んでいく」と強調した。世界各国がテロ情報を共有し、出入国管理などで協調を一層深めることが肝要である。

日本や関係国は、トルコで開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議を、対テロ協力の仕切り直しの第一歩とすべきだ。

産経新聞 2015年11月15日

パリ同時多発テロ ともに立ち向かう決意を

パリの劇場、レストランなどを狙った同時多発テロで120人以上が死亡、多数が負傷した。

オランド仏大統領は過激組織「イスラム国」による「戦争行為」だと非難した。

主要国の首都で、無差別に罪のない人々の命を奪った卑劣な犯行だ。自由と民主主義などの普遍的価値観と相いれないテロを許すことはできない。

オバマ米大統領は直ちに「フランスとともにテロや過激主義に立ち向かう」と表明した。安倍晋三首相が、テロの未然防止に向けて国際社会と緊密に連携する決意を示したのも当然である。

折から、日米首脳も出席して15日からトルコで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合は、テロとの戦いにおける国際連携をうたう場とすることが重要だ。

テロの容疑者は自爆などで死亡したと伝えられるが、一部が逃走している可能性もある。事件の解明と同時に、さらなるテロの抑止に全力を挙げる必要がある。

今年1月の風刺週刊紙本社銃撃事件以降、仏政府は「テロリスト予備軍」の監視の常態化など、国内警備を強化していた。

それでも、今回のような大がかりなテロを阻止することができなかったことは、重く受け止めなければなるまい。国内の警備に加え、近隣諸国との連携などもさらに強化する必要があろう。

今回のテロに際し、実行犯はアラビア語で「神は偉大なり」と叫び、フランスのシリア介入やイスラム国への空爆について批判したとされる。

シリア内戦の長期化などが、テロを誘発している側面もあろう。エジプトのシナイ半島で起きたロシア機墜落事故も、結論は出ていないものの、ロシアのシリア介入を不満とする爆弾テロの可能性が指摘されている。

シリア問題をめぐり欧米とロシアの対立が続いているが、そうした状況がテロ抑止を妨げるものとなってはならない。G20首脳会合では、テロ根絶に向けた協調を確認することが必要だ。

日本も来年は主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の議長国として、国内で重要な国際会議を多く予定している。

これらの開催を万全にする備えも、テロとの戦いの一環だ。国内対策の強化と同時に、各国との情報共有に力を入れるべきだ。

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