日本初となる「日の丸ジェット旅客機」が、初飛行に成功した。
三菱航空機が開発した三菱リージョナルジェット(MRJ)だ。プロペラ機のYS―11以来、半世紀ぶりとなる国産旅客機である。
国内の航空機産業を活性化させる契機としたい。
MRJは、都市間を結ぶ近距離路線用の小型機だ。燃料効率に優れた新型エンジンと軽量化した機体が売り物で、ライバル機より2割程度、燃費が良い。2017年に初号機の納入が予定される。
小型機の分野は、世界的に有望な市場だ。経済成長が著しい東南アジアなどの新興国を中心に、今後20年間で5000機を超える需要が見込まれる。MRJは、その半数の受注を目指している。
MRJの初飛行は、相次ぐ設計変更などで、当初の予定から4年も遅れた。その間にMRJの優位性が低下したことは否めない。
現在、カナダ・ボンバルディア、ブラジル・エンブラエル両社が高い占有率を保持している。これをどう切り崩すかがカギとなる。
MRJには既に、400機超の受注がある。上積みするには、政府による海外へのトップセールスが欠かせまい。
受注が増えれば、航空機が、日本の経済成長を牽引する基幹産業に育つことも期待できよう。
日本の航空機産業では、東レやIHIなども米ボーイング社の旅客機開発に参画し、主翼用の炭素繊維部品などを供給しながら技術を磨いてきた。大企業が培ったノウハウを中小企業に波及させていくことが重要である。
具体的には、現在は3割にとどまるMRJの国産部品の比率を、可能な限り引き上げることを目指したい。MRJの部品点数は、自動車の30倍の100万点に及ぶ。産業の裾野は広い。
高い技術を有する中小企業の参入を促し、日本のもの作りの力を結集させる必要がある。
長野県飯田地区に設立された「エアロスペース飯田」には、中小の精密機械加工業が集結し、コックピットや翼などの関連部品の生産に取り組んでいる。MRJに採用されている部品もある。
MRJの尾翼骨格を製造する愛知県内の企業は「低コストで品質の高い部品を供給できるかが勝負」と意気込んでいる。
自動車部品の製造などで実績のある中小企業に、航空機向けの技術指導をするなど、政府や元請けの大企業が連携して支援することが求められる。
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