野球賭博処分 信頼回復に全力を尽くしたい

朝日新聞 2015年11月11日

野球賭博 再発防止を迅速に

プロ野球の賭博問題で日本野球機構(NPB)の調査委員会が調査結果を公表した。これまでに関与が認められた巨人の3投手以外に該当者はいなかったという。3人は無期の失格処分となった。

プロ野球界には、かつて「黒い霧事件」があった。この歴史を踏まえれば、試合の公正さに自ら疑いを招く行為は厳禁のはずである。3人は、あまりに自覚がなさ過ぎた。

調査委は重要な関係者から聞き取りで十分な協力が得られず、携帯電話の提出も受けられなかったという。警視庁は任意の事情聴取を行っている。これで幕引きとせずに、今後も全体像を明らかにする努力を続けるべきだ。各球団にも自己点検の徹底を求めたい。

調査委はまた再発防止策として、有害行為や処分を定めた野球協約についての研修や、賭博常習者の選手らへの接触に関しての球団間の情報交換などを提案した。始められるものは、すぐに始めてほしい。

12球団合同の新人研修が開かれているが、2年目以降も実施してもらいたい。巨人が実施することにした契約更改時の暴力団排除講習は、ほかの球団にとっても参考になる。大切なのは教育活動を継続して、この問題の教訓を風化させないことだ。

巨人の調査では、選手たちの間で金銭を賭ける行為が頻繁に行われている実態が明らかになっている。

2軍の練習後の球場のロッカールームでは、「大富豪」「ポーカー」といったトランプに1回1万円がかけられていた。全国高校野球選手権大会などでは1口5千円から1万円で、結果によって「賞金」が分配されるやりとりがあった。

これは見過ごせない。取り返しのつかない問題に発展する土壌にもなりかねない。金銭授受を伴う賭け事の全面禁止に踏み込むのは当然だ。

アマチュア側にもできることがある。東京六大学野球連盟は、ドラフト指名された選手を集めて研修を開く。突然、見たこともない大金を手にする選手に、税や法律面での知識を伝える初めての試みは12月の予定だ。日本高校野球連盟でも同様の研修を模索してはどうか、という声が出始めた。

早い段階で社会のルールや自分の周囲に潜む落とし穴を学ぶことで、不祥事の芽を未然に摘み取ることができる。

今回の問題はプロ野球界の問題ではある。だが、野球の将来を考えたとき、野球界全体で対処することが必要なはずだ。

読売新聞 2015年11月11日

野球賭博処分 信頼回復に全力を尽くしたい

プロ野球の歴史に汚点を残す不祥事を猛省し、再発防止を徹底しなければならない。

読売巨人軍の選手が野球賭博に関与していた問題で、日本プロフェッショナル野球組織(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは、福田聡志、笠原将生、松本竜也の3選手を無期の失格処分とする裁決を下した。

熊崎コミッショナーは「プロ野球の品位を甚だしく汚した」などと処分理由を述べた。プロとしての自覚を欠いた3人の愚行が、球界全体の信用を失墜させたことを考えれば、当然の処分である。

コミッショナーは、巨人軍に対しては、「指導・監督が不十分だった」として、1000万円の制裁金を科した。巨人軍は3選手との契約を解除した。

巨人軍の原沢敦・専務取締役球団代表は引責辞任した。球団首脳は役員報酬を返上する。久保博社長は「深刻かつ重大な事態と受け止めている。ファンに心からおわびしたい」と謝罪した。

野球賭博に絡み、コミッショナーが失格処分を下したのは、1969年の「黒い霧事件」以来だ。当時の西鉄などの選手が八百長をしたとして永久失格となった。

巨人軍は、信頼回復に全力を尽くさねばならない。

華やかな職業であるプロ野球選手は、反社会的勢力に狙われやすい存在だ。選手との付き合いを吹聴し、自らの存在を誇示する。そのために、選手に接近する暴力団員らもいるだろう。

処分を受けた3選手が、いずれも投手だったのは偶然だろうか。3人に八百長行為はなかったが、投手が試合の勝敗を左右させやすいポジションであるのは間違いない。3人を抱き込もうという賭博常習者の意図がうかがえる。

選手には、交友関係への細心の注意が求められる。

巨人軍の調査によると、3人以外の複数の選手が、頻繁に賭けマージャンなどに興じていた。「こうした行為が賭け事に対する認識を鈍らせる土壌となっていたことは否定できない」という球団の見解は、その通りだろう。

巨人軍は再発防止のため、紀律委員会を発足させ、入団時に加え、キャンプや契約更改の際にも暴力団排除講習を開くことを決めた。野球を対象とした選手間の金銭のやり取りは一切、禁じた。

NPBの調査委員会がまとめた最終報告書にも、研修の充実などの再発防止策が盛り込まれた。

グラウンド外でも選手教育の在り方を再構築する必要がある。

産経新聞 2015年11月12日

野球賭博 「反社」の認識が甘すぎる

日本野球機構(NPB)は、野球賭博に関与した巨人の現役3選手に無期の失格処分を決定した。巨人は3選手との契約を解除し、球団代表が引責辞任して「再発防止と信頼回復に全力を尽くす」と陳謝した。

だが、3選手と反社会的勢力の関係について、巨人は「ない」とし、NPBの報告書も「確実な証拠は得られていない」としている。

これは、おかしい。野球協約第180条は「暴力団、あるいは暴力団と関係が認められる団体の構成員又は関係者、その他の反社会的勢力」との交際や、金品の授受などを禁じている。

「反社」とは何か。法務省は「反社会的勢力による被害を防止するための指針」で、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義している。

対象は必ずしも暴力団員に限られない。3選手が行動を共にした野球賭博の常習者や、選手らが出入りした非合法な裏カジノも反社と解釈すべきだった。球団や球界のそうした甘い認識が現役選手による野球賭博という致命的不祥事の根源にあるのではないか。

例えば平成24年、当時の原辰徳監督が自身の不祥事を隠すために野球関係者を名乗る男らの要求に従い、現金1億円を渡していたことが明らかになった。巨人は原監督が恐喝の被害者であり、男らは「反社ではない」と強調した。

11111 - 2015/12/14 09:11
最高でした
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