プロ野球の歴史に汚点を残す不祥事を猛省し、再発防止を徹底しなければならない。
読売巨人軍の選手が野球賭博に関与していた問題で、日本プロフェッショナル野球組織(NPB)の熊崎勝彦コミッショナーは、福田聡志、笠原将生、松本竜也の3選手を無期の失格処分とする裁決を下した。
熊崎コミッショナーは「プロ野球の品位を甚だしく汚した」などと処分理由を述べた。プロとしての自覚を欠いた3人の愚行が、球界全体の信用を失墜させたことを考えれば、当然の処分である。
コミッショナーは、巨人軍に対しては、「指導・監督が不十分だった」として、1000万円の制裁金を科した。巨人軍は3選手との契約を解除した。
巨人軍の原沢敦・専務取締役球団代表は引責辞任した。球団首脳は役員報酬を返上する。久保博社長は「深刻かつ重大な事態と受け止めている。ファンに心からおわびしたい」と謝罪した。
野球賭博に絡み、コミッショナーが失格処分を下したのは、1969年の「黒い霧事件」以来だ。当時の西鉄などの選手が八百長をしたとして永久失格となった。
巨人軍は、信頼回復に全力を尽くさねばならない。
華やかな職業であるプロ野球選手は、反社会的勢力に狙われやすい存在だ。選手との付き合いを吹聴し、自らの存在を誇示する。そのために、選手に接近する暴力団員らもいるだろう。
処分を受けた3選手が、いずれも投手だったのは偶然だろうか。3人に八百長行為はなかったが、投手が試合の勝敗を左右させやすいポジションであるのは間違いない。3人を抱き込もうという賭博常習者の意図がうかがえる。
選手には、交友関係への細心の注意が求められる。
巨人軍の調査によると、3人以外の複数の選手が、頻繁に賭けマージャンなどに興じていた。「こうした行為が賭け事に対する認識を鈍らせる土壌となっていたことは否定できない」という球団の見解は、その通りだろう。
巨人軍は再発防止のため、紀律委員会を発足させ、入団時に加え、キャンプや契約更改の際にも暴力団排除講習を開くことを決めた。野球を対象とした選手間の金銭のやり取りは一切、禁じた。
NPBの調査委員会がまとめた最終報告書にも、研修の充実などの再発防止策が盛り込まれた。
グラウンド外でも選手教育の在り方を再構築する必要がある。