小泉純一郎政権下で始まった郵政民営化が大きな節目を迎えた。
日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の郵政グループ3社が同時に上場を果たした。
政府の関与が段階的に薄まり、3社の経営は市場を通じて厳しい目にさらされる。収益基盤を確立し、企業価値を高める経営に尽力せねばならない。
だが、郵政民営化が道半ばだということを忘れてはなるまい。国の後ろ盾による官業体質を排し、民間との公正な競争を促すのが本筋だ。金融2社の完全民営化への道筋など、具体的な将来像を早急に示すことが肝要である。
3社の初値は、いずれも売り出し価格を上回る人気をみせた。個人株主が中心であり、「貯蓄から投資へ」という市場活性化の流れを確実にする契機としたい。株の売却収入が復興財源に充てられることも踏まえ、安定的に株価を高める取り組みを徹底すべきだ。
郵政民営化法は、全国の郵便局で一律のサービスを提供するよう義務づけている。公共性を保ちつつ、確実に収益を高めることは容易ではない。
課題ははっきりしている。日本郵政が全株式を保有する日本郵便の郵便・物流事業は、電子メール普及などの逆風を受け赤字体質だ。オーストラリアの物流大手買収を生かし、国際物流事業の強化などを急ぐ必要があろう。
グループの利益の多くを稼ぐゆうちょ銀とかんぽ生命の体質強化も重要だ。国債に依存した資金運用の多様化は急務である。民間金融機関との連携で収益を高める戦略も深化させたい。
懸念は、当面、日本郵政が保有する金融2社の株式売却が5割程度にとどまることだ。政府の間接的な保有が残るままでは「民業圧迫」の恐れが解消できず、融資などの新規事業に無条件で参入することは適切ではない。
最終的な郵政グループの組織形態が見通せない現状では、市場が3社の中長期的な経営を見極めるのも難しいのではないか。
政治との関わりにも不安が残る。自民党からはゆうちょ銀の預入限度額引き上げなどの提言もあった。現状では国の信用を背景にした肥大化につながりかねず、民営化の趣旨に逆行する動きだ。
政治に翻弄され続けた宿痾(しゅくあ)を断ち切れるかが、民営化の成否を握るのは言うまでもない。
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