核燃料サイクル事業は日本のエネルギー政策の重要な柱だ。その継続のためには、体制の立て直しが急務である。
高速増殖炉「もんじゅ」の運営主体である日本原子力研究開発機構について、原子力規制委員会が「十分な能力がない」との判断を示した。
監督官庁の文部科学省に対しては、半年をメドに別の運営主体を探すよう勧告することを決めた。新たな運営主体が見つからない場合には、もんじゅの在り方を抜本的に見直すことを求める。
一般の原子炉とは異なり、もんじゅは、ナトリウムを冷却材に使う特殊な炉だ。新たな担い手を探すのは容易ではあるまい。
規制委の勧告決定は、廃炉の可能性を含めて、文科省に厳しい対応を迫る内容と言えよう。
もんじゅは1994年に初臨界を達成した。だが、95年にナトリウム漏えい事故が起きた後は、ほとんど運転できていない。
運転再開の準備中だった2012年11月、立ち入り調査した原子力規制庁は、5万点近くある機器のうち、約1万点の点検期間の設定などが適切ではないと指摘した。規制委は13年5月、運転準備作業の停止を命じた。
その後も、点検の不備が相次いで問題視され、現場の技術陣の対応も後手に回った。
原子力機構の対処能力に問題があることは否定できまい。規制委が「原子力機構は改善すると説明してきたが、結果が伴わない」と批判したのは、無理もない。
事態を改善できなかった文科省の責任も極めて重い。
政府は、昨年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で、核燃料サイクルの推進を改めて掲げた。政策を変更すれば、将来にわたる原子力発電の有効活用が困難になると判断したためだ。
もんじゅについては、放射性廃棄物を効率良く燃やす性能などを試験するために不可欠な原子炉と位置付けている。
今回の事態は、基本計画に綻びを生じさせかねない。菅官房長官は記者会見で、「文科省が速やかに解決すべきだ」と述べたが、政府として、立て直しに向けた打開策を幅広く検討すべきだ。
もんじゅ建設時の技術陣の多くは既に退職している。現在の苦境は、技術を維持・継承していくことの重要性を物語る。規制委も「技術の劣化」が、事態を深刻化させているとの見解を示した。
原子力に携わる人材の育成策も強化せねばなるまい。
この記事へのコメントはありません。