大阪ダブル選 橋下市長は何を問いたいのか

朝日新聞 2015年11月04日

大阪ダブル選 大都市再生の道筋を

大阪府知事選があす告示される。8日告示される大阪市長選とあわせ、22日の投開票に向けたダブル選が幕を開ける。

両選挙とも橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会と自民党が候補を立てる。自民の候補を共産、民主も支援し、維新と反維新が正面からぶつかる構図だ。

4年前のダブル選以来、維新と反維新の各党は泥沼の政争を続けてきた。大阪の厳しい現状をよそにした非難合戦はもうたくさんだ。大都市をどう再生していくのか。その道筋が見える建設的な政策論議を望みたい。

維新は、大阪市の住民投票で5月に否決された大阪都構想を再び公約の柱に据える。

住民投票の後、自民党が提案した大阪戦略調整会議(大阪会議)が機能不全に陥ったことが理由だ。だが、強硬姿勢で反対派の各党を突き放したのは橋下氏だ。民意に拒まれた都構想をもう一度持ち出す前に、対話で解決を目指す道をもっと模索すべきではなかったか。

ダブル選を見越したタイミングで維新の党を分裂させ、新党結成に動いた橋下氏の行動や、政界引退を表明しながら選挙戦の前面に出るわかりにくさも、選挙で是非が問われよう。

一方、反維新の各党は大阪会議を通じて大阪をどう立て直すつもりなのか。

自民、公明は大阪市の行政区の権限を強める「総合区」の導入も提唱したが、都構想で市を解体しようとした橋下氏への対抗案との色合いが濃く、意義がいま一つはっきりしない。

省庁の誘致や首都機能の分散といった自民の選挙公約も、スローガン先行の印象が強い。

改めて、いまの大阪が直面している状況を直視したい。

大企業は次々と東京に本社を移し、経済の地盤沈下が進む。生活保護の受給者は29万人にのぼり、半数が大阪市に集中する。少子高齢化も著しく、3大都市圏で最も早く人口が減少すると予測されている。

維新、自民の両陣営はともにリニア中央新幹線の東京―大阪同時開業や北陸新幹線の早期整備を政策の目玉とした。安倍政権に強く働きかけるという。

ただ、深刻な財政難にある国にすがり、大阪が抱える課題の解決につながるだろうか。

貧困や教育、災害対策など一つひとつの課題の処方箋(せん)こそ今求められている。各候補は具体的な考えを聞かせてほしい。

5月の住民投票の投票率は66%に達した。大阪を何とかしたいという思いの表れだろう。ではどうするか。選挙を通じ、有権者も考えてもらいたい。

読売新聞 2015年11月01日

大阪ダブル選 橋下市長は何を問いたいのか

大阪府知事と大阪市長の同日選に向けて、橋下徹市長がまたも、新党を旗揚げした。

政界引退を表明し、政治家としては今後の責任を負わない立場での新たな行動であり、違和感を禁じ得ない。

橋下氏と、維新の党を除籍された国会議員らが、国政政党「おおさか維新の会」の結党大会を開いた。橋下氏が12月の引退までの暫定的な代表に、松井一郎府知事が幹事長にそれぞれ就く。

橋下氏は「地方から改革を進めて、日本の行政・統治機構を変えていく」と強調した。基本政策には、「大阪都」をつくり、「副首都」にすることなどを掲げる。

大阪系の議員は、維新の分裂の方法などを巡って、残留組と泥仕合を続けている。新党に参加する国会議員は19人の見通しだが、一部は合流が遅れるという。

この時期の新党旗揚げは、大阪ダブル選の投票が今月22日に迫っているためだ。5日に知事選、8日には市長選が告示される。

ダブル選は、橋下氏らが擁立する独自候補と自民党推薦候補の対決が軸となる。民主、共産両党も自民系候補を支援する構えだ。

橋下氏にとって、知事と市長の一方でも失えば、大きな痛手だ。結党大会で注目を集めて「改革勢力」を強調し、選挙を有利に運びたい。そんな思惑があろう。

理解に苦しむのは、「大阪都」構想への再挑戦をダブル選の争点に据えようとしていることだ。

大阪市民が住民投票で構想を否定したのは、わずか半年前だ。本来なら、敗北を総括して修正した構想を示すか、「二重行政の解消」という目的に向けて別の方策を模索するのが筋ではないか。

構想の見直しを後回しにして選挙に臨む橋下氏は、市民に何を問うつもりなのだろうか。

一方、攻勢をかけたい自民党もちぐはぐさが目立つ。

自民陣営は、相次ぐ企業流出で地盤沈下の続く大阪経済の再生のため、政権政党として「国とのパイプ」を訴える戦略だ。

だが、最近も松井氏が菅官房長官と会談するなど、橋下、松井両氏は安倍首相や菅氏との親密さをちらつかせる。松井氏は知事選に出馬予定で、自民党推薦の栗原貴子府議と対決するだけに、地元の党関係者からは不満が漏れる。

橋下氏は2008年の知事当選後、勢力を拡大し続けてきた。大阪府、市の両議会では今、最大会派を占める。自民党がこの状況を転換したいなら、内輪もめをしている場合ではなかろう。

産経新聞 2015年11月04日

大阪ダブル選 「ノーサイド精神」で臨め

大阪府知事選が5日告示され、大阪市長選(8日告示)と併せて22日に投開票が行われる。

どちらも、大阪維新の会公認候補と自民党の推薦候補による事実上の一騎打ちとなりそうだ。

橋下徹大阪市長が府知事から転身した4年前のダブル選以来、維新VS非維新の対決が繰り返されてきた。それがもたらしたのは、府市政の混乱と停滞である。今回のダブル選によって、ピリオドを打ってほしい。

争点の一つに、これまでと同じく大阪都構想がある。5月の大阪市の住民投票で否決されたものの、維新は「議論の継続」を訴える。住民投票がわずか1万票余り、得票率にして0・8ポイントの僅差だったことから、都構想への期待はなお大きいとみている。

一方、非維新の側は「都構想は住民投票で決着ずみ」として、行政の広域的課題を話し合う「大阪戦略調整会議」(大阪会議)の活用を主張している。

その大阪会議は運営のルールをめぐって紛糾し、罵(ののし)り合いと欠席戦術などで暗礁に乗り上げている。維新はこの会議を府市の二重行政解消の都構想の対案と位置付けているが、「二重行政などない」とする非維新との間でそもそもかみ合うはずもない。

行政の無駄をなくし、低迷する経済を活性化し、災害に強い街づくりをめざす-。双方が描く大阪の未来像の方向性に大きな違いはないはずだ。

大阪市営地下鉄の民営化については先月、「橋下市長に白紙委任できない」と反対してきた自民、公明が賛成に回り、民営化の手続きを定めた条例が成立した。

ダブル選がどのような結果になろうと、試合が終われば敵味方の区別なく健闘をたたえ合うラグビーのノーサイドの精神で、合意できる政策は前進させるべきだ。

終わりなき不毛な対立は、それこそ大阪の“府市合わせ”だ。

ダブル選は全国的にも注目される。橋下氏が暫定的に代表となって結党した新党「おおさか維新の会」の行方にも影響しよう。

共産党は独自候補を立てず、自民推薦候補を自主的に支援するという。国政では、安全保障関連法を廃止する「国民連合政府」を掲げ、他の野党に共闘を呼びかけている。有権者は戸惑うしかあるまい。そうした支援を受けることの是非もよく考えてはどうか。

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