デフレ脱却を確実にするには、政府と日本銀行、企業が一体となった取り組みが欠かせない。
日銀は金融政策決定会合で、消費者物価の上昇率を2%にする目標の達成時期を、これまでの「2016年度前半頃」から「16年度後半頃」に先送りした。
一方で、追加の金融緩和は見送り、国債などを買い入れて年80兆円のペースで資金供給量を増やす現行政策の維持を決めた。
一時は前年比1%台まで高まった消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は、原油安の影響などでマイナスに転じている。
市場関係者には、日銀が物価上昇目標の達成へ強い決意を示すために、追加緩和に踏み切るのではないか、との観測もあった。
だが、食品や衣料品の値上がりが相次ぐなど、原油価格の影響を除けば、物価の基調は上昇傾向を保っている。企業収益も好調で、景気は底堅く推移している。
日銀の黒田東彦総裁が「(物価低迷は)エネルギー価格下振れによるもので、物価の基調は着実に改善している」と追加緩和見送りを説明したのは、理解できる。
「異次元の金融緩和」の目的は、企業や家計に長年染みこんでいるデフレマインドを払拭し、経済を活性化させることだ。
「2%」という数字の早期達成に必要以上にこだわることなく、粘り強くデフレ克服を目指すことが肝要である。
目標達成を急ぐあまり、追加緩和を実施すれば、円安が進んで輸入物価が上がり、景気を冷え込ませる恐れもある。今回、日銀が金融政策を現状維持とした判断は、妥当と言えよう。
無論、日銀だけでデフレ脱却が実現できるわけではない。
政府は、成長力の強化に資する規制緩和などを断行し、企業の新しいビジネス展開を後押しする。企業も、高水準の賃上げを継続し、生産性を向上させる設備投資に積極的に取り組む。
官民による一連の努力の積み重ねを、好循環経済の実現につなげなければならない。
欧州中央銀行(ECB)は、景気下支えのための追加緩和実施を示唆した。米連邦準備制度理事会(FRB)は、雇用や物価を見極めつつ、ゼロ金利からの脱却のタイミングを計っている。
欧米の金融政策は、新興国を含めた世界経済に影響を与える。
日銀は、こうした状況も注視しながら、金融政策の舵取りを慎重に進める必要がある。
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