幹部公務員人事 恣意的な政治介入を防げるか

毎日新聞 2010年02月20日

公務員制度改革 全体像を早く明確に

懸念を残しての決着である。政府は国家公務員の幹部人事の一元化に向け、内閣人事局の設置などを柱とする法案を閣議決定した。

縦割り行政の打破を狙い官邸主導による各省人事の実現を目指した内容だが、幹部の降格人事がうまく機能するかなど、課題も多い。国会審議で問題点を十分に洗い出し、公務員の人事体系全般の改革につなげなくてはならない。

「省あって国なし」とまで言われる官僚の省益優先の是正には、幹部人事を首相が統括し、民間人起用や省の垣根を越えた弾力運用をする必要がある。08年に成立した国家公務員制度改革基本法に沿い自公政権は具体化を目指したが難航し、やっと作られた法案も廃案になった。

政権交代を経ての今回の法案は首相が幹部の異動を求めたり、幹部人事にあたり閣僚が首相と事前に協議するよう定めた。幹部は適格性を審査されたうえ省庁横断の候補名簿に載ることが登用の前提となり、新設される内閣人事局がその管理にあたる。こうした一元化の方向は基本的に賛成だ。

だが、幹部の降格人事をめぐる規定は調整が難航した。結局、事務次官、局長、部長各級すべてが同じ職制上の段階に所属するとし、「転任」との位置づけで事実上の降格ができる規定に最終段階で修正された。

当初の案は局長から部長への降格に厳しい条件がついていただけに、修正は妥当だ。だが、実際には次官、局長、部長級の給与差は大きいだけに、通常の人事として降格をするような運用が本当にできるか、疑問とする見方もある。今回は急場の措置として、降格の規定をめぐる議論を続けるべきだろう。

内閣人事局が十分機能するかも、不安が残る。自公政権下でも議論になった人事院、財務省、総務省からの組織移管は今回、見送られた。人事局が各省からの出向組で仕切られては、官邸主導は骨抜きとなる。

一方で、政治主導の名の下で情実人事が行われたり、保身に走る官僚が増え士気に影響することも避けねばならない。適格性の審査や降格人事については国民に説明できる透明性の確保や基準作りが必要だ。

公務員制度改革をめぐっては定年延長、人事院勧告制度や公務員の労働基本権の制限見直しなど、多くの課題が残されている。仙谷由人担当相が提起する事務次官ポストの廃止論議もある。民主党が政権公約に掲げた「国家公務員の総人件費2割削減」の展望も示されぬままだ。

今法案はスタートに過ぎない。政府は秋にもさらなる抜本改革に着手するというが、明確な工程表と全体像を速やかに示すべきである。

読売新聞 2010年02月20日

幹部公務員人事 恣意的な政治介入を防げるか

これで国を支える幹部公務員を適材適所で任用できるのか。極めて問題の多い法案である。国会審議で、法案の問題点を徹底的に洗い出してもらいたい。

政府は、各府省の幹部人事を内閣で一元管理するための国家公務員法等改正案を閣議決定した。

内閣官房に「内閣人事局」を新設し、各省の局長、部長などの幹部職員、公募に応じた人などの「適格性審査」を実施する。

合格者を各省横断の「幹部候補者名簿」に掲載し、各閣僚は名簿の中から任命する。首相や官房長官は、幹部の任免に関して閣僚に注文を付けることができる。

各省の手にあった霞が関の幹部人事について、首相以下、内閣官房が主導権を取ろうというのだろう。これにより、省益を離れ、国家全体に目配りのきく官僚を選抜できるなら、それもいい。

だが、内閣人事局で、約1000人の官僚の職務遂行能力などを公正・的確に把握できるのか。公募に応じた民間人の能力をどう判定するのかもはっきりしない。

内閣人事局長に政治家を起用することは妥当なのかどうか。昨年、廃案になった改正案と同様の疑問は、解消されていない。

それ以上に問題なのは、事務次官や局長、部長を「同一の職制上の段階」、つまり任用上、同格とみなしたことだろう。

国家公務員は、勤務実績不良といった理由がなければ降格されることはない。しかし、改正案のように同格とみなせば、特別の理由がなくても、通常の人事異動の形で次官から局長などへの格下げが可能になる。

優秀な人材の抜擢(ばってき)なども含め、実績本位の中立・公平な人事が貫かれれば、意義もあろう。

しかし実際のところ、政治家の好悪に基づく、あるいは情実による恣意(しい)的な人事が行われないか。政権交代の場合は府省幹部が一掃されかねない、といった懸念の声が、各省から聞こえてくる。

法案の付則に「事務次官その他の幹部職員の位置付け、役割について検討する」ことが盛られた。法案作成段階で次官廃止論があったが、行政の継続性の観点からも事務職トップは欠かせない。

民主党が制度改革のモデルとする英国の大臣規範には、大臣は党利のため、公務員の任命権を乱用しない責務を負う、とある。

日本も例外ではありえない。行き過ぎた党派的人事にどう歯止めをかけるのか。法案審議の中で、真剣に検討する必要がある。

産経新聞 2010年02月20日

公務員制度改革 政治主導の中身問われる

政府が国家公務員法改正案を衆院に提出した。官僚組織は長年、「省益あって国益なし」と批判されてきた。幹部人事を政治主導とすることは、硬直化した組織にメスを入れる有効な手段となろう。国民を最優先する行政を実現する第一歩として期待したい。

だが、今回の法案で果たして政治主導が進むのか、問題や疑問が多い。

政治家がトップを務める「内閣人事局」を新設し、政治主導で幹部人事を一元管理する。官僚の頂点である事務次官から部長級までを同格と見なし、省庁を横断する幹部候補者名簿を内閣官房が作成して、その中から選任する仕組みに改める。

事務次官は各省庁の官僚人事を実質的に握り、政策立案にも強い影響力を行使してきた。内閣人事局は、幹部の政治任用を強化することで、閣僚や副大臣ら政務三役を中心とした政策立案を進めやすくするのが狙いだ。弾力的な人事配置や抜擢(ばってき)人事が進めば、縦割り行政の排除にもつながろう。

しかし、抜擢や降格を行うには、政治家が多数の官僚の職務経歴や手腕、能力を把握している必要がある。大臣など政務三役が短期間で交代する例も多く、一人一人に公正な人事評価を下すのは容易ではない。政治家が「お気に入り」を選ぶ恣意(しい)的な人事や、官僚が特定の政治家に媚(こ)びるといった新たな弊害も懸念される。政治家の見識と判断が問われよう。

事務次官から部長級までを同格と見なすのは、柔軟な異動を促す狙いだ。だが、国家公務員給与法などの見直しは先送りしたため、事務次官から部長級へ「降格」した場合、年収が700万円ほど減る可能性もある。これだけの急な収入減を伴う異動は、現実問題として可能なのか。

鳩山由紀夫首相は「やる気があれば(幹部に)抜擢する。公務員にやる気を持ってもらうためだ」と説明したが、公務員の意欲を削(そ)ぐ結果になりかねない。士気低下や混乱を招かぬよう、制度の細部を十分に詰めてもらいたい。

民主党は国家公務員人件費の2割削減も政権公約に掲げた。しかし、この取り組みは進んでいない。支持母体の労働組合に配慮して、難しい問題の決着を参院選後に先送りしたのではないのか。

国民の期待に応えるには、鳩山首相は早急に公務員改革の全体像を示さなければならない。

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