国民に分かりやすく、効果的な増税負担緩和策をまとめるべきだ。
与党税制協議会が、2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に導入する軽減税率に関する議論を、約1か月ぶりに再開した。
軽減税率で目減りする税収分の財源の一部に、増税時の低所得者対策に予定していた4000億円を充てることで一致した。ただ、対象品目の範囲などでは、なお与党内に意見の隔たりがある。
公明党は「酒類を除く飲食料品全般」を対象とするよう主張している。対象の税率を8%とすると、減収は約1・3兆円になる。
自民党は、対象品目を極力絞り込み、減収を最大でも4000億円に抑えたい考えだ。
無論、国家財政への配慮は大切だが、消費者の負担を緩和できなければ、本末転倒である。
公明党が「痛税感の解消には軽減対象を幅広く設定すべきだ」と指摘したのは、理解できる。
対象品目の選定には、税収への影響と政策効果の双方への目配りが求められよう。
17年4月の軽減税率の導入には今年末までの制度設計の完了が必要だ。両党は、集中的に協議を重ね、歩み寄らねばなるまい。
消費税の増収分は全額、社会保障費に充てられる。このため、自民党は、税収減の穴埋めはあくまで社会保障費の枠内のやり繰りで手当てすべきだ、との立場だ。
だが、軽減税率の実効性を保つため、社会保障費以外の歳出抑制や、他の税収を財源に活用することを前向きに考えてはどうか。
対象品目の線引きが複雑すぎないようにすることも重要だ。
食品表示法に基づく「生鮮食品」を対象とすると、マグロ単品の刺し身は税率が低くなるが、刺し身の盛り合わせは「加工食品」となり、標準税率が適用される。
消費者や商店が混乱しないように、消費実態に即した簡明な線引きにする工夫が欠かせない。
取引ごとに税額や税率を記入するインボイス(税額票)について両党は、事務負担が少ない簡易方式で始め、一定期間後、本格的な方式に移行することで合意した。経済団体が「納税事務が煩雑になる」と反対しているためだ。
公平な消費税負担は、インボイスの本格導入が前提となる。簡易方式でのスタートはやむを得ないが、せめて本格的な制度の開始時期は明示すべきだろう。
税額の一部が事業者の手元に残る、消費税特有の「益税」を縮小する方法も真剣に検討したい。
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