施工不良やデータ改ざんは、1か所だけの問題なのか。調査を急ぎ、結果を速やかに公表するのが施工業者の責務だ。
横浜市内の大型マンションに傾きが生じた問題で、杭打ち工事を請け負った旭化成建材が施工した建物の都道府県別の件数などが公表された。
該当する建物は約3000件に上る。このうち41件については、横浜のマンションで施工データを偽装した現場責任者の関与が確認された。マンションだけでなく医療機関や学校なども含まれる。
今回の問題で、建物の安全に対する国民の信頼は大きく揺らいでいる。不正はほかになかったのか。実態把握が急務である。
国土交通省は、旭化成建材に対し、3000件全ての住民や施設管理者に連絡するよう指示した。旭化成建材による施工が、直ちに安全性の欠如につながるわけではないだけに、連絡にあたっては、丁寧な説明が求められよう。
問題のマンションは、三井住友建設が元請けとして施工を受注した。旭化成建材は2次下請けの立場にあたる。
これまでの内部調査で、深度不足が確認された杭は、いずれも基礎工事の終了直前に打たれたことが判明している。工期に間に合わせる目的で、施工不良が放置された可能性が指摘される。
住民の安全よりも、コストや納期が優先されたのではないか。しっかり検証して、再発防止につなげることが肝要である。
三井住友建設は、杭打ち工事の途中経過に関し、詳細な報告書の提出を旭化成建材に求めていなかった。その結果、施工不良や、注入されたセメント量を含むデータの改ざんを見逃した。
全工程を統括する元請けとして無責任が過ぎるのではないか。
三井住友建設は今後、全ての杭打ち現場に社員を立ち会わせて、1本ずつ作業を確認するという。着実に実行してもらいたい。
ゼネコン各社が加盟する日本建設業連合会も、杭打ちに関し、統一的な管理指針を作成する方針を示した。建設業界の人手不足が深刻化する中、効率的な監督強化策を検討する必要がある。
国交省は、販売元の三井不動産レジデンシャルを含め、関わった各社が建設業法や宅地建物取引業法に違反する疑いがあるとみて、調査を始めた。
住民に損害を与えたことなどが裏付けられれば、業務停止などの処分を下すことができる。厳正な調査を求めたい。
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