秘書の違法行為を見過ごしたうえ、説明責任も十分に果たしていない。国会議員としての資質に疑問符がつこう。
小渕優子・元経済産業相の関連政治団体を巡る政治資金規正法違反事件に関し、弁護士らの第三者委員会が調査報告書を公表した。小渕氏の監督責任は「軽微とは言えない」としつつ、法的責任は否定している。
小渕氏はそれを受けた記者会見で、資金管理や収支報告書作成は秘書に任せ、内容を確認しなかったと説明した。監督責任が「私にも大きく降りかかる」と述べ、謝罪した。後援会の意向を尊重するとして、議員辞職は否定した。
虚偽記入は5年間にわたり、総額3億円を超える。「秘書任せ」で済む話ではない。自らが秘書を指導し、資金を管理するのは、政治家の最低限の責任である。
有罪判決を受けた元秘書は、父の恵三・元首相にも仕えてきた。古参秘書への小渕氏の甘えと遠慮が不正を招いた面は否めない。
事件の発端は、表に出せない慶弔費や選挙の陣中見舞いなどの支出が膨らんだことだ。帳尻合わせのため、虚偽記入を行った。
小渕氏は記者会見で、肝心の簿外支出の詳細は調査でも判明しなかった、と述べた。関係者の死去や資料の紛失が理由という。
だが、小渕氏が元秘書を直接問いただすなど、真相を究明する手段はいくらでもあったはずだ。
簿外支出の実態や他の不適切な支出について、どう説明するのか。その内容に政治家としての「再起」がかかっている、という危機意識が乏しいのではないか。
小渕氏は昨年10月の経産相辞任時、疑惑を解明し、説明すると約束したが、1年間も口をつぐんだ。こうした不誠実な姿勢が、国民の政治不信を増幅させている。
第3次安倍改造内閣では、新閣僚に関し、政治とカネの疑惑が早くも浮上している。
島尻沖縄・北方相は、支持者へのカレンダー配布による公職選挙法違反の可能性が指摘される。森山農相が代表の自民党支部は、談合に絡んで指名停止になった建設業者から献金を受けていた。
税金が原資の政党交付金が支給されている以上、国民の厳しい視線が注がれるのは当然である。
重要なのは、政治資金の管理の適正化と、透明性の向上だ。
各政治家は、実務を担う秘書らへの監督を強めるべきだ。責任あるポストを目指すなら、政治資金と秘書の管理能力も問われることを自覚する必要がある。
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