極めて広範な品目に及ぶ関税撤廃は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の大きな成果だ。
新段階に入る貿易自由化を、日本経済の成長拡大に生かしたい。
政府がTPP交渉で大筋合意した関税分野の全容を公表した。日本が輸入する農林水産品と工業品のうち、関税を撤廃する品目の割合は95%に上る。域内11か国への日本の輸出品は、国によって99~100%の品目で撤廃される。
貿易自由化の進展は、域内経済を活性化し、日本に多大な恩恵をもたらす。高い撤廃率の達成は支持できる。
自動車や電機など工業品では、日本製の品質の良さを売り込み、販路拡大の実績を上げたい。
域内国では、みそや日本酒などの関税がなくなる。日本産牛肉は、米国で無関税輸入枠が広がる。和食ブームを追い風に、輸出に弾みをつけることが大切である。
野党や生産者の間では、TPP交渉合意への批判も聞かれる。
特に、コメや牛・豚肉など「重要5項目」で、約3割の関税を撤廃することへの不満が目立つ。
民主党は、合意が重要5項目の関税維持を求めた2013年4月の衆参両院農水委員会の決議に違反すると主張している。
だが、政府は、輸入実績が少ないものや、国内に代替品がないものを中心に撤廃品目を選んだとしている。森山農相も「(決議は)しっかり守れた」と評価した。
果樹や野菜の農家らは、重要5項目以外の農産品で関税が撤廃されることに反発している。
ただ、日本に輸入される農産品に限れば、撤廃率は81%にとどまる。参加国で唯一の8割台で、突出して低い。最も多い例外措置を獲得したと言える。
甘利TPP相は「不満足な点はどの国にもある。1国が100%満足する協定では、残りの国には魅力がなく、誰も入らない」と強調した。もっともな指摘だ。
政府は、合意内容の詳細や交渉経緯に関する情報開示などを徹底し、国会での承認手続きを確実に進めるべきだ。消費者のメリットもよく説明し、国民の理解を広げることが肝要である。
政府は11月中に、農業強化や企業の海外進出支援を盛り込むTPP総合対策を策定する。
農家らに一定の支援を行うのは理解できるが、生産者保護に偏ったバラマキにしてはならない。
農業や製造業の国際競争力の向上に役立つ、「攻めの対策」を講じる必要がある。
この記事へのコメントはありません。