企業経営者に染み付いたデフレマインドを払拭し、攻めの経営にかじを切る契機としたい。
政府と経済界の代表が企業の設備投資の拡大などについて意見交換する「官民対話」の初会合が開かれた。
安倍首相は席上、「企業収益は過去最高だが、投資の伸びは十分ではない。一歩踏み込んだ投資拡大の見通しを示してほしい」と各経済団体に要請した。
消費税率が10%に引き上げられても、景気を腰折れさせず、成長を続けるには、個人消費とともに、設備投資の拡大が不可欠である。首相の問題提起はもっともだ。
官民対話は来春に向けて月1回のペースで開かれ、賃上げや規制緩和などもテーマとなる。実効性のある議論を期待したい。
日本企業の2014年度の経常利益は約65兆円で、2年前より約16兆円も増えた。利益剰余金などの内部留保も約50兆円増加し、総額350兆円超に達している。
ところが、14年度の設備投資は、2年前より5兆円増の約40兆円にとどまっている。
中国など海外経済の先行きに対する懸念から、経営者が必要以上に設備投資を控えているのではないか。工場の生産ラインなどで古い設備を更新しないまま、使っているケースが多い。
無論、企業が事業リスクを慎重に見極めることは重要である。一方で、経営者には、政府に注文を付けられるまでもなく、自らの判断で、成長が見込める分野に投資する決断力が求められる。
いつまでも守りの姿勢を続けていては、企業も日本経済全体も活路が開けまい。
労働人口が減少していく中、生産性の向上は、日本企業の避けて通れない課題だ。熟練工不足を補う機械化投資、環境問題に目配りした省エネ投資など、打つべき手はいくらでもあろう。
ドイツや米国では、官民を挙げた取り組みが本格化している。インターネット技術を使って需要を予測し、生産工程を綿密に管理するシステムが広がりつつある。
日本も手をこまぬいてはいられない。産官学が連携し、得意とするロボットや人工知能などの分野への投資を進めるのも一案だ。
官民対話では、経済団体が、法人実効税率の20%台への早期引き下げや、医療、環境分野などの成長産業の育成につながる規制緩和を促進するよう求めた。
政府が、こうした要望にしっかりと応え、企業の投資意欲を後押しすることも大切だ。
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