トヨタ米公聴会 社長は信頼回復の先頭に立て

朝日新聞 2010年02月26日

豊田社長証言 開放的経営へカイゼンを

世界の消費者のトヨタへの信頼が、ただちに回復へと向かうわけではないだろう。トヨタ自動車の豊田章男社長の誠実さと実行力が問われるのは、むしろこれからだ。

「リーダーシップを発揮して信頼を回復したい」。米議会下院の公聴会で証言した社長は、主力車種のアクセル関連でリコールが遅れたことを謝罪する一方、急加速とエンジンの電子制御システムの因果関係は否定した。

豊田社長は証言の冒頭で、トヨタの基本思想に触れた。「欠陥を発見したり、失敗したりした時に、必ず一度そこで立ち止まり、徹底的に原因を追究し、修正し改善する。問題から逃げたりごまかしたりということは伝統と誇りにかけて、やらない」

しかし、今回の問題は急速なグローバル化や製品の高度化などの変化に対して、この思想に沿って行動することに失敗した結果ともいえそうだ。

トヨタの思想は、車や設備の開発、製造ラインを中心とする現場で培われた。問題が発生したら即座にラインを止め、不良品を出さないようにする。現場で「なぜ」を5回繰り返し、原因をさぐる。社内総動員の取り組みは、労働強化への批判を伴いつつも、トヨタの強さを支えてきた。

ところが、製品が顧客に渡った後に発生した問題についての苦情など、消費者からの貴重な情報を全社的に生かす体制作りは後手に回ったようだ。世界規模での事業拡大を急いだため、このゆがみが拡大した。

今回は、リコールするかどうかを判断する権限を日本の品質保証部が独占し、米国など現地の判断が生かされなかったことも対応の遅れや誤りにつながったとされる。

製品が高度に複雑化するに従って、顧客が把握した欠陥や不具合などに関する情報の価値はますます高まる。それらを生かす開放的な経営システムをどう築くかが重要な課題だ。それが企業の成長と顧客の信頼を両立させることにつながる。

顧客がトラブルに遭遇したら、その現場で「なぜ」を5回繰り返して対策を考える。そんな意識と仕組みづくりが必要だろう。

企業にとっての顧客の意味や関係のあり方を根底から問い直し、「なぜ」を問いやすくする製品づくりを目指すことは、他のグローバル企業や輸出関連企業にとっても大切だ。

トヨタを象徴する言葉として世界に知られる「カイゼン」。安全と品質や効率向上のために現場の知恵や工夫を生かす改善運動のことである。

トヨタには、創業以来のこの危機を克服してもらいたい。リコールの遅れや急加速の原因を徹底究明するとともに、外の声に耳を傾ける経営への「カイゼン」が急務ではないだろうか。

毎日新聞 2010年02月26日

豊田社長証言 まだ霧は晴れていない

日本からやってきた世界一の自動車メーカートップは何を語るのか。異例ともいえる注目の中で、トヨタ自動車の豊田章男社長に対する米下院公聴会が開かれた。通訳を介しての証言だったこともあり、議員とのやりとりがかみ合わない場面もあったが、社長自ら出席し、発言した意義は決して小さくなかったはずだ。

だが、トヨタ車の安全性を覆った霧がすっきり晴れたわけではない。ここを出発点に、迅速でていねいな説明と改善の行動を重ね、一つ一つ疑念を取り払っていくしかない。

今回の公聴会を通じて議会側が解明したかった点は大きく二つある。まず、車の加速をめぐる異常にもっと早く対応できなかったのはどうしてかという問題。アクセルペダルの欠陥が2008年には欧州で報告され、トヨタも対策を取っていながら、なぜ米国での大規模リコール(回収・無償修理)は大幅に遅れたのかという疑問だ。

豊田社長や同席した稲葉良〓北米トヨタ自動車社長は、社内体制の不備などを挙げ陳謝したが、豊田氏が苦情を把握した時期や米当局とトヨタのやりとりに関する質問などで、回答にあいまいさが残り、「欠陥隠しではないか」との不信感が払しょくされたとは言い難い。

もう一つの疑問は、今回のリコールにより安全上の問題が解決されるかというものだ。米国では、電子制御システムの欠陥こそ真の問題だとする見方が根強い。豊田社長らは強く否定したものの、説得力のある証拠を提示できたわけではない。この問題がくすぶっている間は、消費者の信頼を取り戻すのも難しそうだ。

公聴会は、日米の文化的な違いも印象付けた。豊田社長は自身が「創業者の孫」である点に触れ、「私の名前を付けた車が傷つくことは私が傷つくようなものだ」と語った。トップとして責任を率直に認めたうえで、何度も謝罪した。そうした低姿勢には議会や米メディアの間で好意的な評価もあった。

しかし、肝心の原因や経緯の説明で客観的な事実に十分言及することなく謝罪だけ繰り返す姿は逆にいらだちも招いたようだ。原因がはっきりしない以上、謝ったり「再発防止策」を打ち出しても、利用者の安心にはつながらない。

米国でのトヨタ批判に対し、日本国内には「日本たたきだ」との見方もあるようだ。一方、米国には「米国の消費者の安全が後回しにされた」との不満がある。今回のトヨタ問題が両国の相互不信に発展するようなことがあってはならない。

そのためにも、トヨタは「顧客第一」に国境がないことを行動で表していく必要がある。

読売新聞 2010年02月26日

トヨタ社長証言 信頼回復に向け誠実な努力を

全米が注目する中、トヨタ自動車の豊田章男社長が米議会下院の公聴会に出席し、大規模リコール(回収・無償修理)問題で証言した。

予想通り、議員から厳しく追及されたが、トップ自らが問題解決に取り組む姿勢を、米国民に直接示すことはできた。信頼回復に向けた第一歩、と受け止められたのではないか。

豊田社長は公聴会で、事業拡大のペースが速すぎたため、自動車メーカーとして欠かせない安全や品質を重視する姿勢が、おろそかになっていたと率直に認めた。

リコールなどの対応の遅れについては、ユーザーの視点が足りなかったと反省の弁を語った。

「トヨタの伝統と誇りにかけて逃げたり、ごまかしたりしない」と述べ、今後も問題があれば、リコールに踏み切るなど、誠実に改善に取り組むことも約束した。

この前日には、別の公聴会で、トヨタ米販売子会社の社長が「リコールの是非は日本の本社が判断する」と証言していた。

豊田社長が今回、公聴会に出席していなければ、「責任者が逃げた」という批判が増幅しかねないところだった。

それでも、米国に渦巻くトヨタ批判が沈静化するには、なお時間がかかるだろう。

米国でのトヨタへの不信は、2002年前後から、トヨタ車で突然、急加速する問題が多発していることが発端となっている。

トヨタは、原因はアクセルペダルなどの不具合だとして、大規模な改修に乗り出したが、依然として、「真の原因は、エンジンの電子制御システムの欠陥にあり、トヨタはそれを隠している」という疑念がくすぶっている。

公聴会で豊田社長は、「システムに設計上の問題はない」と強調した。ただ、急加速の原因については「さらに究明に向けて調査する」と述べるにとどまった。

結局、原因を明らかにしない限り、不信感は完全には消えまい。問題を起こしたトヨタ車を1台ずつ、丹念に調べていく地道な努力が必要だ。

欠陥を特定するより、欠陥がないことを証明する方が、何倍も難しい。しかし、それは世界一の自動車メーカーとして、避けて通れない責務といえるだろう。

感情的な「トヨタたたき」の自制を求める声は、米国内からも出ている。秋の中間選挙を控え、保護主義色が強まっているが、米議会や政府当局には、冷静な対応を望みたい。

産経新聞 2010年02月26日

トヨタ社長証言 電子制御への不安なくせ

トヨタ自動車のリコール問題に関する米下院公聴会に豊田章男社長が証人として出席し、リコールの遅れを陳謝するとともに、安全対策を強化する方針を表明した。しかし、焦点となった加速・減速を調整する電子制御システムの安全性では双方の主張が対立し、解決の糸口を見いだせなかったのは残念だ。

電子制御システムは、高性能エコカーなど次世代技術の開発で重要な役割を担っている。トヨタは世界の自動車業界のリーディングカンパニーとして主体的に原因究明に当たる義務がある。

「トヨタ車で意図しない急加速があった」とする米側は電子制御システムに問題があるとの見方を示している。豊田社長は「これまでの調査で問題はみつかっていない」と欠陥の存在を否定した。米側も不具合を示す具体的証拠は提示していないが、何よりも利用者の不安を払拭(ふっしょく)し、信頼の回復に努めることが重要だ。

トヨタは10年ほど前から、車の燃費性能を向上させる電子制御システムの導入を進め、他社も積極的に採用しつつある。エンジンなどをきめ細かく調節できるシステムだが、ブラックボックス化されており、外部から不具合の有無を特定しにくい面もある。トヨタは今後、この問題の原因を追究するだけでなく、販売店で不具合をチェックできる体制を整備する努力も怠ってはならない。

また、豊田社長は、リコールなど安全対策の経営判断を世界各地域で自主的に下せるようにする考えを表明した。リコール問題などに迅速に対応するためには実効性のある権限委譲が必要だ。

日米関係は基地問題などでぎくしゃくしており、今回の問題が新たな摩擦に発展することのないよう日本政府も積極的に関与すべきだ。米側がトヨタに要求する安全対策の情報を政府間で共有化することなども必要だろう。そうすれば、米側の一方的な要求を排除できる。

一方で、米政府と議会には、政治的な思惑を排除し、法と証拠にもとづいて冷静に対処する姿勢を求めたい。

トヨタが米国生産に乗り出して25年以上がたち、販売会社を含め現地で20万人以上の雇用を生み出している。米国内では同社の貢献を評価する意見も出ており、今こそ問題解決に向けたトヨタの真摯(しんし)な姿勢が問われている。

朝日新聞 2010年02月24日

トヨタ公聴会 安全への誠実さが鍵だ

安全に対する疑念と批判が逆巻くなか、トヨタ自動車の豊田章男社長が米議会下院の公聴会に出席する。大きく傷ついた信頼を回復できるか。まさに正念場である。

今後もグローバル企業として成長し続けるのか、それとも坂をすべり落ちるのか。トヨタの運命を左右するだけではない。日本の企業や製品全体への信頼に響きかねないとの懸念もあり、豊田社長の責任は重大だ。

公聴会の論点の中には、新しい疑惑がある。そのひとつが、アクセル部品に絡んでリコール(回収・無償修理)中の主力車種について、トヨタが以前から問題を把握しながらそれを隠し、本格的な対処を避けていたのではないかという疑いだ。

また、「車が急加速した」という顧客の苦情が相次いだ原因は、エンジンの電子制御システムにあるのではないかという疑いが浮上した。

さらに、米運輸当局がトヨタのロビー活動を受けてリコールの判断に手心を加えたのではないか、との疑惑も絡む。当局との交渉で「1億ドル(92億円)以上節約した」というトヨタの内部文書まで暴露されている。

議員らの質問や追及は、かなり厳しいものになるに違いない。それに社長がきちんと答え、説明責任を果たすことができれば、信頼回復への契機とすることもできよう。

だが、ここに至るトヨタの対応はグローバル企業とは思えない拙劣なものだった。ハイブリッド車プリウスのブレーキ問題も今回の公聴会出席も、当初は担当副社長や北米トヨタ社長に任せる構えで、批判を浴びてから社長が乗り出すありさまだった。

昨年6月に発足した豊田社長体制の未熟さなど、さまざまな問題が噴き出した観がある中での公聴会出席だ。率直かつ明快な説明を貫き、安全と品質への責任から逃げない誠実なリーダーシップを示すことができるのか。トヨタと豊田社長の真価が問われようとしている。

トヨタ批判は米国で過熱している。連邦大陪審がトヨタに資料を請求し、刑事事件になる可能性も出てきた。

「高慢」「無神経」といったレッテルは従来、米自動車大手などに張られてきたが、トヨタが世界の首位に立ち、ゼネラル・モーターズとクライスラーが国有化されるに至り、風当たりがきつくなった。逃れられない試練という一面もあるのだ。

一方で、トヨタの米工場がある州の知事たちは議会に公正な対応を求める書簡を送った。貿易摩擦を背にした、かつての日本車たたきとは様相がだいぶ異なっている。

世界の消費者も注目している。米政府や議会には、真相解明に徹する冷静さを望みたい。

毎日新聞 2010年02月20日

トヨタ米公聴会 ばん回の好機にしよう

米国での大規模リコール(回収・無償修理)問題を受け、トヨタ自動車の豊田章男社長が米議会公聴会に出席することになった。豊田社長は、「(下院監視・政府改革委員会から)正式に招致されたので、喜んでうかがう」と語っているが、トヨタがこれまで社長ではなく現地法人のトップを送る方針だったことから、米国内では「トヨタの社長は議会や米国民に説明しようという熱意が足りない」(同委員会のアイサ筆頭理事)との見方が広がってしまった。議会への説明も含めた社長の渡米を、もっと早く決断することはできなかったのか。悔やまれる。

米国でのトヨタ批判は、日本国内でのそれとは比較にならないほど過熱している。レクサスを運転中、アクセルトラブルに見舞われて事故死した家族が携帯電話からかけた救急通報の生々しい叫びをテレビが繰り返し報じ、そうした報道に呼応するように議会でのトヨタ追及の声も強まっていった。

すでに大量のリコールを実施し、製品上の改善策もとっているトヨタだが、米議会やメディアは納得していない。トヨタが安全上の問題を認識しながら情報を隠したり、現在も開示をためらっているのではないか、という不信・疑念が根強い。

トヨタにしてみれば、米国の事情に通じた現地法人トップの方が公聴会での説明役に適しているとの思いがあったかもしれない。しかし、不信の深刻さを考えれば、今、企業全体を代表して疑問に答えられるのは最高責任者の豊田社長しかいない。

米国で強まるトヨタへの風圧の背景には、政治的な思惑もあるだろう。雇用情勢が好転せず国民の不満が高まる中で、中間選挙を控えた連邦議会の議員たちは選挙区を意識したパフォーマンスに走りがちだ。しかし、グローバルに展開する大企業であれば、現地の世論や政治の動向まで考えた危機管理が求められる。重大問題が起きた時どのように報道対応するかなど、トップは日ごろから訓練を受けているものだ。

トヨタは世界で32万人以上の従業員を雇い、世界で生産し、世界で製品を売っている。しかし、取締役は米現地法人の社長を含め29人全員が日本人だ。生産・販売のグローバル化に経営のグローバル化が追いつかなかったことが、「世界」と「豊田市」の認識のギャップを生み、対応の遅れを招き、事態をより悪化させてしまったのではなかろうか。

現地のよき企業市民になろうとトヨタが世界で続けてきた努力は知られている。それを無駄にしないためにも、豊田社長は先頭に立って説明を尽くさなければいけない。日本であっても米国であっても同じだ。

読売新聞 2010年02月20日

トヨタ米公聴会 社長は信頼回復の先頭に立て

強まる一方の逆風を、和らげることができるのか、トヨタはまさに正念場を迎えている。

トヨタ自動車の豊田章男社長が、大規模リコール(回収・無償修理)問題を審議する米議会下院の公聴会に出席することを表明した。

相次ぐ欠陥や不具合に対し、自ら消費者の目線に立って取り組む決意を示すためという。

世界中が注目する今回の公聴会は、トヨタにとって、安全性への疑念を晴らす好機でもある。誠意を持って説明に努め、早期の信頼回復に全力をあげてほしい。

トヨタは当初、豊田社長は招致されていないとして、公聴会に米国法人の社長を出席させる方針だった。「批判を浴びる公聴会でミスがあっては困る」との消極的な意見が強かったようだ。

これに対し、米議会の強硬派が激しく反発し、社長本人を招致することを決めた。

最終的に、豊田社長が「喜んで応じる」ことになったが、一時は出席を見送ることにしたのは、企業の都合を優先した「内向きの論理」だろう。

トヨタへの強い逆風は、一連の品質問題への対応が後手に回ったことが一因だ。それを教訓にするならば、議会に呼ばれる前に出席を表明すべきだった。

公聴会では、トヨタが不具合を早くから把握しながら対応が遅れたのは、欠陥を隠すためではないか、との追及が予想される。

これまでに発覚した不具合や欠陥とは別に、加速や減速を制御する電子システムに欠陥がある、とされる問題も取り上げられる公算が大きい。

トヨタはいずれの指摘についても否定しているが、限られた時間での説明で、疑念を完全に晴らすのは容易ではあるまい。

米国の消費者に、改善策を丁寧に説明し、理解を得る努力を粘り強く続けることが肝要だ。

米国製造業の象徴だったゼネラル・モーターズ(GM)が破綻(はたん)する一方で、トヨタは米政府の買い替え助成の恩恵を受け、業績を急回復させてきた。

今回のトヨタへの強い批判の背景には、米国民の複雑な感情もあるようだ。

秋の中間選挙を控え、米議会では保護主義色が急速に強まっている。トヨタが対応を誤れば、日本製品全体の信頼にも悪影響が及びかねない状況だ。

豊田社長は、日本の製造業の代表であることを肝に銘じ、公聴会に臨んでほしい。

産経新聞 2010年02月25日

トヨタ公聴会 冷静で公正な対応求める

トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題をめぐる米下院公聴会は、米国内世論を意識した「政治ショー」の様相をみせたのは否めない。冒頭からトヨタ車で「意図せぬ急加速」があったとする被害者が同社の対応を強く非難し、議員から矢継ぎ早に質問が浴びせられた。

米側の追及の的の一つは加速・減速を電子制御するシステムの問題だ。トヨタ側は「調査を続けているが、現時点で問題はみつかっていない」と繰り返したのに対して、議員らは「急加速の苦情が寄せられたトヨタ車をすべて調査すべきだ」と追及した。

公聴会に出席したレンツ米国トヨタ自動車販売社長は、リコール対応の遅れを謝罪し、再発防止に向けて安全対策を強化する姿勢を示した。信頼回復への第一歩といえよう。24日の豊田章男社長の証言も含めて、トヨタ側はあらゆる機会を通じて説明をつくすことが必要だ。また米政府、議会には改めて冷静かつ公正な調査と建設的な対応を求めたい。

レンツ氏と豊田社長は、日本の本社に一元化されてきたリコールの意思決定体制の見直しを表明した。リコール制度は国や地域によって異なり、安全基準も同じでない。顧客の情報に基づいて迅速な対応を図る努力は評価できる。世界を視野に機敏な対策をめざして知恵を絞ってもらいたい。

電子制御システム問題をめぐっては、米政府側責任者として公聴会に臨んだラフード運輸長官は、「トヨタ以外の車も調査する」との姿勢を示した。

トヨタが調査に協力すべきはもちろんだが、米当局には米国車も含めて、適正で公平な調査を求めたい。重要なことは客の安全を確保することであり、特定車種やメーカーを狙い撃ちにするような偏った対応は許されない。

豊田社長は記者会見などで、世界市場で生産が急速に拡大したために「兵站(へいたん)が伸びきっている」と述べ、品質管理などの面で懸念を示してきた。

同社の世界生産台数は、2000年に500万台強だったのが、世界経済の伸びを背景に07年のピーク時には850万台規模に急増した。高い品質と安全性で定評があったトヨタブランドが揺らぐ要因がそこにあったのではないか。世界の信頼を回復するには、以前のように地道な対策を積み重ねるしかない。

産経新聞 2010年02月21日

トヨタ公聴会 信頼取り戻す好機にせよ

トヨタ自動車の豊田章男社長が23日に開かれる米下院公聴会に証人として招致され、出席する意向を伝えた。

米国は一連のリコール(回収・無償修理)問題の震源地である。トヨタ側の対応は、常に後手に回ってきた印象を否めないが、社長自ら陣頭に立ち、対策を進める姿勢を訴える格好の場ともいえる。説明責任をしっかりと果たし、早期の信頼回復に繋(つな)げるチャンスと位置付けてほしい。

「ごまかしや逃げることはしない」としていた豊田社長だが、17日の記者会見では社内の慎重論を受け、「公聴会は現地トップが対応する」と述べていた。これが結果的に米国では公聴会出席に消極的だと受け取られ、今回の招致につながったとされる。お粗末な危機管理である。

トヨタをめぐっては、海外生産車のフロアマットやアクセルペダルに関する不具合で600万台程度の改修に乗り出している。さらにエコカーの代表車種「新型プリウス」についてもブレーキの「空走感」を解消するため、最終的に世界市場で40万台程度のリコール実施にも踏み切った。

こうした一連の問題で「高い品質と信頼性」に裏打ちされてきたトヨタブランドに傷がついたのは確かだ。最近ではトヨタ車が急加速するとの苦情が寄せられ、その原因として電子制御システムの問題も浮上している。

米議会の公聴会は政治ショーになりがちだ。今年秋には中間選挙を控え、トヨタ批判で世論にアピールする機会を狙う議員も少なくない。米国のカーメーカー各社が苦境に立たされる中で、これまで比較的好調だったトヨタへの反発が一気に噴出した格好である。

過去にもブリヂストンの現地法人「ファイアストン」がタイヤの大量リコールを迫られて現地法人トップが公聴会で批判を浴び、本社社長ともども辞任に追い込まれたケースがある。

トヨタは米国世論の風圧は日本で想像する以上に強いことを認識すべきだ。米国駐在の経験もある豊田社長なら、なおさらだ。

ひたすら陳謝すれば、世論の一定の理解は得られるとする“日本流”は米国では通用しない。公聴会ではメディアの報道も含め、米側に誤認・誤解があるなら、しっかりと正しておくことも重要だ。その意味でも公聴会は信頼回復に向けた同社の正念場となる。

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