アフガンの米軍 駐留延長は妥当な判断だ

読売新聞 2015年10月20日

アフガン情勢 米軍駐留延長で治安取り戻せ

アフガニスタンの安定へ、国際社会は多くの犠牲を払い、膨大な費用と時間を費やしてきた。この国をテロの温床に逆戻りさせてはなるまい。

オバマ米大統領が、約9800人のアフガン駐留米軍の撤収を2016年末に完了させる目標を撤回した。17年以降も約5500人を残留させる。妥当な判断だ。

米軍は、01年9月の同時テロ後に、タリバン政権を倒し、駐留を開始した。ピーク時には約10万人を派遣し、北大西洋条約機構(NATO)軍などと治安維持任務に従事した。近年はアフガン治安部隊の訓練に重点を置いている。

米国にとって最長の14年間も戦いを続けているのは、対テロ戦略の重要性が変わらないためだ。

オバマ氏は、08年の大統領選以来、イラクとアフガンでの戦争終結と米軍撤収を一貫して公約に掲げてきた。国内の厭戦えんせんムードが背景にあった。だが、米軍などが戦闘任務を終えた14年以降、アフガンの治安は再び悪化した。

ガニ大統領が米軍の駐留延長を強く求め、カーター米国防長官も「完全撤収は自滅的だ」と認めた。オバマ氏が公約撤回に追い込まれたのは、アフガン情勢に関する見通しが甘かったためだろう。

米共和党には、5500人規模の残留では不十分との声もある。イラクでは、米軍撤収後に過激派組織「イスラム国」が台頭した。イラクのてつを踏まないよう、戦略の再構築を急ぐべきだ。

アフガンでは昨年9月、国際社会の支援によって、初めての選挙を通じた政権交代が実現した。今年7月には、ガニ政権とタリバンが初の和平協議も行った。

しかし、タリバンは最高指導者オマル師の死亡発覚で混乱し、協議の再開は見通せない。

心配なのは、タリバンによる攻勢の激化だ。先月末には、北部クンドゥズの大半を一時制圧した。タリバンと敵対する「イスラム国」によるテロも深刻化している。

アフガンの自助努力が欠かせない。大統領と行政長官が力を競い合い、統治機能が低下している現状は放置できない。指導部の結束が安定への第一歩となろう。

治安部隊の強化も、喫緊の課題だ。米軍やNATO軍はアフガン政府と連携し、必要な兵力と装備を確保するとともに、組織的な訓練を継続することが重要だ。

日本は01年以来、武装解除や社会資本整備、警官育成、教育、医療などに約7000億円もの支援を実施してきた。今後も、非軍事分野の貢献に力を入れたい。

産経新聞 2015年10月17日

アフガンの米軍 駐留延長は妥当な判断だ

オバマ米大統領は、2016年末までにアフガニスタン駐留米軍を完全撤収させる計画を断念した。治安情勢の悪化をにらんでの決断だ。

アフガンでは、かつての支配勢力だったイスラム原理主義組織、タリバンが再び攻勢を強めており、過激組織「イスラム国」の浸透も新たな脅威となっている。

国際的な「対テロ戦」を主導する米国の指導者として駐留延長は現実的かつ妥当な判断である。

01年の米中枢同時テロを実行した国際テロ組織アルカーイダが拠点としたアフガンへの軍事介入は、対テロ戦の出発点だった。米軍はその要だ。民生支援を含む国際社会の努力が水泡に帰さないよう、米国はアフガン安定化への責任を全うしてほしい。

米軍は、現在の9800人規模の兵力を来年末まで維持し、17年1月以降も5500人を残し、アフガン軍の訓練とテロ組織掃討にあたる。

アフガンでは昨年、タリバン政権崩壊後に指導者となったカルザイ氏に代わり、選挙による初の政権交代でガニ政権が発足した。

政治プロセスは曲折を経ながらも進んでいるが、地元治安部隊の能力に対する懸念は、タリバンが9月末、北部の主要都市クンドゥズを一時、陥落させたことで深刻さを増した。

米軍が5500人程度の兵員を維持しても、情勢の好転は見込めるのか。オバマ氏は、状況に応じて、必要な兵力を柔軟に投入することをためらうべきではない。

イラクとシリアの一部を実効支配するイスラム国への対応も同様だ。イラクでは米軍撤収後にイスラム国が台頭した。

シリア内戦では穏健な反政府勢力の育成・訓練を断念した。米国が有効な手を打てない中、ロシアが軍事介入し、アサド政権を全面支援する動きを強めている。

力の空白地域には、クリミアを一方的に併合したロシアなど「力による現状変更」を辞さない勢力がつけ込んでくることを忘れてはならない。

アフガンの治安部隊強化には、政府の統治能力向上も不可欠である。日本はアフガニスタン復興支援国際会議を東京で開催し、インフラ支援や警察官の教育・訓練などにも地道に取り組んできた。そうした支援を再活性化させることも重要だ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2319/