米韓首脳会談 「対中」で日本含む連携を

読売新聞 2015年10月18日

米韓首脳会談 対中傾斜で同盟を揺るがすな

米国と韓国が強固な同盟を維持することは、北朝鮮の軍事挑発に対する抑止とアジア地域の安定に不可欠である。韓国は過度に中国に接近し、同盟を弱体化させてはなるまい。

オバマ米大統領がワシントンで朴槿恵韓国大統領と会談し、北朝鮮の核放棄に向けた協力などを柱とする共同声明を発表した。

北朝鮮が国連安全保障理事会決議を破って弾道ミサイル発射や核実験を強行した場合は、追加制裁に踏み切ると警告している。

北朝鮮は今夏以降、南北間の軍事的緊張を高め、核実験実施なども示唆した。オバマ氏が共同記者会見で、「韓国防衛への米国の責任は揺るぎない」と述べ、同盟強化を確認した意義は大きい。

ただ、米韓の「緊密な同盟」は多分に、演出されたものであることは否めない。米国内で強まっていた韓国の対中傾斜への不信感を打ち消す必要があったからだ。

朴氏は、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を決め、中国の「抗日戦勝」記念軍事パレードにも出席した。

記者会見で朴氏は、日米などが大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)について、「米韓は自然なパートナーになれる」と語り、参加の意欲を示した。米側の懸念を緩和する狙いだろう。

オバマ氏は記者会見で、中国が国際ルールを守らない場合には、「韓国も声を上げてほしい」と朴氏にクギを刺した。中国による東・南シナ海での独善的な海洋進出を念頭に置いたものだ。だが、朴氏はこの点に言及しなかった。

韓国が今後、対中姿勢を修正するかどうかは不透明だ。

中韓の貿易額は米韓、日韓の合計を上回る。韓国が経済面で中国を重視するのは理解できるが、安全保障面で米国から中国に軸足を移すことは、地域を不安定化させる危険をはらんでいる。

朴氏はワシントンで行った講演で、11月初めの日中韓首脳会談の際、安倍首相と初めて本格的に会談する意向も表明した。

就任以来、慰安婦問題の進展を日韓首脳会談を行う条件としてきた。日韓関係の改善を求める米国の再三の働きかけに、ようやく応じた格好である。

一方で、朴氏は、「慰安婦問題で進展があれば、意味ある首脳会談になる」とも強調した。

朴氏が歴史問題に偏った外交姿勢を改めなければ、日韓が山積する懸案に効果的に対処することは難しい。米国が望む日米韓の緊密な連携も実現できないだろう。

産経新聞 2015年10月18日

米韓首脳会談 「対中」で日本含む連携を

北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため、日米韓が結束して当たる。オバマ米大統領と韓国の朴槿恵大統領の会談で、ひとまずそうした方針が再確認された。

「日米」「米韓」の2つの同盟は、米国のアジア重視政策の基軸だ。3カ国が緊密に連携し、地域の平和に対する脅威に対処すべきなのは当然である。

北はさきの朝鮮労働党創建70年記念日の軍事パレードでも、弾道ミサイルを登場させるなど軍事力を誇示した。万一の事態への備えは怠れない。

来月1日には、ソウルでの日中韓首脳会談に併せ、安倍晋三首相と朴氏が会談する見通しだ。日米韓の結束を示す場としても重く位置付ける必要がある。

その意味合いは、北の核・ミサイルをにらむことにとどまらない。力ずくの海洋進出を拡大させ、南シナ海などで実効支配を強める中国に、日米韓がどう対処していくかに大きくかかわる。

注目したいのは、米韓首脳会談後の記者会見で、オバマ氏が「中国が国際規範に反する行動を取った際は、韓国が米国と同じ声を上げることを期待する」と語ったことだ。朴氏の対中傾斜にクギを刺したといえよう。

朴氏は米国から難色を示されながら、9月に北京で行われた「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードを参観した。米国内には、中韓の過度な接近を懸念する声が少なくない。

米国は高高度防衛ミサイル(THAAD)を韓国に配備しようとしているが、中国の反発が背景にあり、米韓協議が進まない。韓国が国産戦闘機開発で米国に求めている先端技術供与は、拒否されたままだ。

首脳会談は友好関係を強調するものだったが、強固な同盟が示されたかは疑問だ。これでは中国や北朝鮮に足元を見られる。

同様のことは、ぎくしゃくした日韓関係にも当てはまる。米国に促されて「日中韓」の舞台を整え、ようやく日韓首脳会談が実現すること自体、不正常だ。

朴氏は日本との関係で歴史問題での中韓連携も模索するなどしながら、日韓首脳会談を先送りしつづけてきた。

中国に対して米国や日本と「同じ声」を上げなければ、地域の現状に現実的に向き合えないことを露呈するだけだ。

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