基礎データ不正 安全安心への信頼を壊す

朝日新聞 2015年10月16日

データ偽装 信頼揺るがす不正だ

企業の信頼を揺るがす性能偽装が相次いで発覚した。

タイヤメーカー大手の東洋ゴム工業は、船や電車の振動を抑える「防振ゴム」の性能試験結果を改ざんしていた。横浜市のマンションでは、旭化成建材が請け負った杭工事の施工記録を偽装していた。

乗り物と住居という、暮らしに密接な製品だ。顧客を裏切る行為と言わざるを得ない。

両社は製品交換や補償に真摯(しんし)にあたるべきだ。同時に安全性に関する情報を開示し、不正の原因を徹底調査してほしい。

東洋ゴム工業の場合、18社に納めた189種類、8万7804個の部品が不正なデータに基づいて出荷されていた。3月に免震ゴムで性能偽装が発覚したのを受け、同社は主要製品の緊急品質監査をした。8月10日に「安全宣言」を出したが、その10日後に内部通報があり、防振ゴムの材料試験結果の改ざんが明らかになったという。

監査が不十分だったことは明らかだ。しかも出荷を止めたのは内部通報の2週間後。事実を知ってから約1年間、明らかにしなかった免震ゴム不正の教訓はどこへ行ったのか。

同社では07年にも断熱パネルの試験データ偽装が発覚し、社長が辞任している。「3度目の不祥事を起こしたら会社の存続が危うい」。免震ゴム問題を調査した社外チームはそう指摘した。なぜ相次ぐのか、性能試験に対する認識や情報開示、即応体制の構築など、社の体質を根本的に改める必要があろう。

一方、基礎杭のデータが偽装されていた横浜市のマンションでは、旭化成建材が固い地盤に達していない恐れのある38本のデータを別データと差し替え、基準を満たしているように見せかけていた。その結果、築10年足らずで建物は傾いた。

販売・施工会社を信頼してマイホームを手に入れた住民への背信行為だ。旭化成建材は、データの記録に失敗したために差し替えた可能性が高いと説明するが、データでっち上げの言い訳にはならない。

旭化成建材は、過去に杭工事をした全国の約3千棟について調査する。すみやかに進め、住民の不安にこたえるべきだ。

二つの事例に共通するのは、試験や施工といった製造過程でデータが偽装された点だ。

利用者には見えない部分で、手を抜いた側面はなかったか。専門的で特殊な作業ほど、情報はメーカーが握る。品質保証とは、顧客との信頼関係で成り立っていることを、メーカーは肝に銘じるべきだ。

読売新聞 2015年10月17日

性能データ偽装 日本のものづくりは大丈夫か

マンション建設と鉄道用防振ゴム製造を巡り、悪質なデータの偽装が相次いで明るみに出た。

日本の企業が長年かけて築いた「ものづくり」への信頼を揺るがしかねない深刻な事態と言えよう。

三井不動産グループが分譲した横浜市のマンションでは、建物を支える一部のくいが固い地盤に届いていなかった。

明らかな工事ミスで、横浜市は建築基準法違反の疑いで調査している。施工報告書には、多数の虚偽データが記入されていた。

杭打ちに代表される基礎工事は住民の安全に直結する。実際に傾きが生じている棟もある。この工事を請け負った旭化成建材の責任は、極めて重大だ。杭打ちのミスとデータ改ざんの両面で、原因究明を進めなければならない。

旭化成建材が過去10年に杭打ち工事を手がけた建物は、商業ビルなども含めると全国で約3000棟に上る。同様の傾きや改ざんがなかったか、確認が急務だ。

三井側の対応にも疑問が残る。マンションの管理組合によると、昨年11月に住民側が手すりの高低のずれを指摘したが、当初は、東日本大震災の影響と推測されるなどと説明されたという。

最終的に工事ミスが公表されるまでに1年近くを要した。日本を代表する不動産グループとして、危機管理の姿勢が問われよう。

大手タイヤメーカーの東洋ゴム工業は、船舶や鉄道の振動を抑える防振ゴムの製造工程で、性能試験のデータを改ざんしていた。

同社の性能偽装の発覚は、2007年の防火用建材と今年3月の免震ゴムに続き、3度目である。防振ゴムの偽装は8月に内部通報があるまで続いていた。

過去の失敗を生かせない企業体質にあきれるばかりだ。

マンション建設の現場担当者は基礎工事の重要性を認識していたに違いない。防振ゴムの製造現場でも、性能試験の大切さは十分に理解していたはずだ。

それなのに、いずれの担当者も安易なデータ改ざんに手を染めていた。我が国のものづくりの現場で、技術力に裏打ちされた職業意識の劣化が進んでいるのではないか、と懸念せざるを得ない。

製品の安全性や品質について、企業側から示されたデータの真偽を利用者が自ら検証するのは、まず不可能だろう。利用者の信頼を裏切った罪はあまりに重い。

一度崩れた信頼の回復には膨大な費用と時間と労力を要する。全ての企業が教訓とすべきだ。

産経新聞 2015年10月16日

基礎データ不正 安全安心への信頼を壊す

安心、安全を保証する技術力こそ、日本が世界に誇れるものではなかったのか。

その基礎となるデータに虚偽や改竄(かいざん)を加える行為などは、もってのほかである。モノづくりに従事するプライドはないのか。信用を失えば国も企業も立ちゆかない。

東洋ゴム工業は電車や船舶などに使われる防振ゴム製品で、性能データを改竄するなどの不正があったと発表した。

同社は今年、免震装置ゴムのデータ改竄が発覚し、6月に社長らの引責辞任を発表したばかりだった。平成19年にも防火用断熱パネルの性能偽装があり、当時の社長が辞任している。

これが3度目の不正である。防振ゴムの不正を受けた会見で同社幹部は「改めて再発防止に取り組む」と述べた。反省の弁は、ただただ空々しく響く。

免震ゴムの不正発覚後、同社は全社に緊急品質監査を実施し、8月10日、「新たな不正行為はなかった」と結果を公表し、問題を調査した外部の弁護士は「3回目の不祥事を起こしたら会社の存続は危うい」と総括していた。

防振ゴムの不正に関する内部告発があったのは、そのわずか10日後だ。告発後の調査、公表もあまりに遅く、あきれるばかりだ。

三井不動産グループが販売した横浜市内の大型マンションでは、基礎工事のくい打ちを担当した旭化成建材が地盤調査の一部で虚偽データを使い、複数のくいが強固な地盤である「支持層」に届いていないことが明らかになった。

マンションは傾いている。住民は当然、不安である。旭化成建材などは当面の措置として建物の補強、改修を行う方針というが、資産価値の目減りなどは防ぐことができないだろう。

昨年来、マンション建設をめぐる施工ミスで販売停止や契約解除、または建て直しに至る例が相次いでいる。いずれも住民の生命にかかわる問題だ。頻発すること自体が理解し難い。

旭化成建材は同社がくい打ちを施工した全国のマンションや商業施設などについて、同様の不正がなかったか調べる。調査対象は約3千棟に上るという。

信用、信頼は一瞬にして失われるが、これを取り戻すには膨大なエネルギーと長い年月を要する。まず調査の徹底と迅速な公表から始めるしか道はない。

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