ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で、日本代表の健闘が光った。目標の8強入りは逃したものの、グループリーグでの3勝1敗の戦績は立派である。
これまでの日本の通算成績は、1勝2分け21敗だった。厚い壁にはね返されてきた日本ラグビーが、着実に進化していることを世界に印象付けたと言えよう。
日本代表は、31人中10人が外国出身だった。日本人以外でも、この3年間、国内に居住していれば代表になれるといったラグビー特有の緩やかな条件が、多彩な顔ぶれを可能にした。
出身国はどこであれ、桜のエンブレムの付いたジャージーを身に着け、トライに突き進む選手たちの姿は感動を呼んだ。
日本代表の力が向上したのは、今大会で退任するエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の手腕に負うところが大きい。
キーワードは「ジャパンウェー」だ。体格のハンデを俊敏性、持久力で補う日本らしい戦い方で強豪に立ち向かった。素早いパスや連続攻撃、低く鋭いタックルがチームの持ち味だった。
南アフリカ戦のノーサイド寸前の逆転トライは語り草となろう。1987年から4年に1度開かれているW杯を制したのは、ニュージーランド、豪州、南ア、イングランドに限られる。その一角からの勝利だけに、価値は高い。
大会を通じ、五郎丸歩選手の正確なキックも見事だった。
今大会を機に、国内のラグビーファンは間違いなく増えた。ルールが複雑なことから敬遠していた人も、迫力とスピード感に魅了されたのではないか。
高校生らの競技人口が減少傾向にある中、日本代表の活躍は、人気回復の絶好のチャンスだろう。日本で開催される2019年W杯への追い風にもなる。
大切なのは、今の盛り上がりを一過性に終わらせないことだ。日本は来年から参戦する世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」などで存在感を示す必要がある。日本代表が注目されれば、企業からの支援も受けやすくなる。
新国立競技場問題の余波で、19年W杯の開催計画は見直しを余儀なくされている。新競技場の完成が間に合わないため、開幕戦や決勝戦の会場変更を迫られた。
準備の立ち遅れを挽回し、日本代表の活躍を収益の増加に結びつける。大会組織委員会には、W杯を成功させるための戦略的な取り組みが求められる。
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