ラグビーW杯 変化に挑む勇気を持とう

読売新聞 2015年10月15日

ラグビーW杯 日本の進化を世界に示した

ラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会で、日本代表の健闘が光った。目標の8強入りは逃したものの、グループリーグでの3勝1敗の戦績は立派である。

これまでの日本の通算成績は、1勝2分け21敗だった。厚い壁にはね返されてきた日本ラグビーが、着実に進化していることを世界に印象付けたと言えよう。

日本代表は、31人中10人が外国出身だった。日本人以外でも、この3年間、国内に居住していれば代表になれるといったラグビー特有の緩やかな条件が、多彩な顔ぶれを可能にした。

出身国はどこであれ、桜のエンブレムの付いたジャージーを身に着け、トライに突き進む選手たちの姿は感動を呼んだ。

日本代表の力が向上したのは、今大会で退任するエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)の手腕に負うところが大きい。

キーワードは「ジャパンウェー」だ。体格のハンデを俊敏性、持久力で補う日本らしい戦い方で強豪に立ち向かった。素早いパスや連続攻撃、低く鋭いタックルがチームの持ち味だった。

南アフリカ戦のノーサイド寸前の逆転トライは語り草となろう。1987年から4年に1度開かれているW杯を制したのは、ニュージーランド、豪州、南ア、イングランドに限られる。その一角からの勝利だけに、価値は高い。

大会を通じ、五郎丸歩選手の正確なキックも見事だった。

今大会を機に、国内のラグビーファンは間違いなく増えた。ルールが複雑なことから敬遠していた人も、迫力とスピード感に魅了されたのではないか。

高校生らの競技人口が減少傾向にある中、日本代表の活躍は、人気回復の絶好のチャンスだろう。日本で開催される2019年W杯への追い風にもなる。

大切なのは、今の盛り上がりを一過性に終わらせないことだ。日本は来年から参戦する世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」などで存在感を示す必要がある。日本代表が注目されれば、企業からの支援も受けやすくなる。

新国立競技場問題の余波で、19年W杯の開催計画は見直しを余儀なくされている。新競技場の完成が間に合わないため、開幕戦や決勝戦の会場変更を迫られた。

準備の立ち遅れを挽回し、日本代表の活躍を収益の増加に結びつける。大会組織委員会には、W杯を成功させるための戦略的な取り組みが求められる。

産経新聞 2015年10月14日

ラグビーW杯 変化に挑む勇気を持とう

ラグビーW杯で3勝をあげた日本代表が英国から帰国した。初戦で優勝候補の南アフリカを破るなど目覚ましい活躍だったが、わずかな勝ち点の差で目標の決勝ラウンド進出は逃した。

1次リーグ敗退は残念ではあるが、過去7大会で1勝21敗2分けだったチームが今大会は3勝1敗である。W杯史上、3勝して決勝ラウンドに進めなかったのは今回の日本が初めてだという。これもまた勲章と言うべきだろう。

8強入りこそならなかったものの、大会で最も印象に残るチームになるというもう一つの目標は実現できたのではないか。

英紙はこぞって「今大会最大の遺産」「最も不運で恐らく最も勇敢なチーム」と日本への賛辞を惜しまなかった。

国内でも低迷気味だったラグビー人気が一気に盛り上がった。小さな子供までゴールを狙う五郎丸歩選手のポーズをまねする。「ルールは分からないけれど面白い」と興奮するファンは、性別も年齢層も超えて広がっていった。

2019年W杯開催国として日本ラグビー界が最も期待していたのがこの盛り上がりだろう。大会前には19年開催国を見直すべきだとする議論も国際的にくすぶっていた。観客動員が望めないという理由からだ。そんな懐疑論もチームの活躍が吹き飛ばした。

日本の活躍はヘッドコーチ、エディー・ジョーンズ氏の指導力に負うところが大きい。「ジャパンウエー」を掲げ、猛練習にもさまざまな工夫を取り入れた。低く突き刺すようなタックルを実現させるために総合格闘家をコーチに招くこともあった。人気の的の五郎丸ポーズは、メンタルトレーナーとの共同作業で生まれた。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2313/