中東の安定を図り、難民を支援するうえで、地域大国のトルコの重要性は増している。日本は、協力関係を戦略的に強めるべきだ。
安倍首相が、来日したトルコのエルドアン大統領と会談した。中東情勢について、難民支援や過激派組織「イスラム国」対策で連携を強化することを確認した。
内戦下のシリアと国境を接するトルコには、190万人超もの難民が流入したとされる。
安倍政権は、シリアやイラクの難民・国内避難民への人道支援を拡充すると表明している。食料・医療支援、受け入れ施設整備などでトルコと緊密に連携し、支援の実効性を高めることが大切だ。
シリア周辺での難民の生活が改善すれば、欧州への流出を抑える効果も期待できる。欧州連合(EU)との協調が欠かせない。
トルコは7月、「イスラム国」に軍事攻撃を行った。自国基地を米軍が空爆の出撃拠点として使うことも容認した。テロの脅威拡大を踏まえ、積極姿勢に転じた。
8月末には、米軍主導の有志連合に参加し、「イスラム国」の拠点を空爆した。有志連合の体制強化は日本にとっても有益だ。「イスラム国」によるテロでは、2人の日本人も犠牲となっている。
凶悪な犯罪集団の封じ込めは、各国共通の課題だ。日本も、テロ資金対策やテロリストの渡航阻止などで、より積極的な役割を果たす必要がある。
首脳会談では、外相らの政治対話の促進や、経済連携協定(EPA)交渉の加速で一致した。
首相は「両国は広いアジアを東西から支える二つの翼だ。手を取り合って、翼を羽ばたかせたい」と語り、政治、経済両面で両国関係を発展させたい考えを示した。エルドアン氏は、「日本は戦略的パートナーだ」と応じた。
エルドアン氏は昨年1月にも来日した。首相は2013年にトルコを2回訪問している。両国は20年五輪の招致を競ったが、首脳間の信頼関係を基礎に、関係を進展させてきたことは評価できる。
近年、経済力を強めるトルコは11月、主要20か国・地域(G20)首脳会議の議長国を務める。
トルコには、ボスポラス海峡の海底を通る地下鉄や、黒海沿岸の原発4基の建設などを巡って、多数の日本企業が進出している。
さらなる日本の投資拡大やインフラ整備での協力を望む声は、双方に強い。企業の海外展開は、安倍政権の成長戦略に資する。官民の連携で積極的に進めたい。
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