軍事力を誇示して、米国との対決も辞さないと挑発する。北朝鮮の不毛な戦術は、国際社会での孤立を深めるだけだ。
北朝鮮は、朝鮮労働党の創建70年を記念して大規模な軍事パレードを行った。金正恩第1書記は演説で、「経済と国防の並進路線」によって、国民生活と軍事力がともに向上したと自画自賛してみせた。
しかし、現実は、経済が破綻し、国民を窮乏に陥らせた歴史ではなかったか。国内は、安定や繁栄とはほど遠い状況にある。
金氏は、「米国が望むいかなる形態の戦争にも対応できる」とも強調した。核兵器やミサイルの開発によって「脅威」を作り出し、米国を交渉の場に引き出そうという浅慮があるのではないか。
オバマ米大統領は、「北朝鮮を核保有国としては認めない」と断言している。北朝鮮が核に固執する限り、国連安全保障理事会の決議に基づく制裁は続き、経済再建は遠のくだけである。
看過できないのは、開発中の移動式大陸間弾道ミサイル「KN―08」の改良型とみられる兵器も軍事パレードで公開したことだ。
北朝鮮メディアは「小型化された核弾頭を搭載した戦略ロケット」と紹介した。搭載の真偽は明らかではないが、北朝鮮が目指す核弾頭の小型化は国際社会を揺るがす深刻な動きと言えよう。
中国からは、習近平政権序列5位の劉雲山・政治局常務委員が軍事パレードに出席した。2013年の北朝鮮の核実験などで中朝関係が冷却化して以降、最高位の中国要人の訪朝である。
中国には、北朝鮮が衛星打ち上げの名目で、事実上の長距離弾道ミサイルを発射することを自制させる思惑があったのだろう。
劉氏はパレードに先立つ金氏との会談で、「中朝関係の新しい未来を切り開きたい」と述べ、関係修復を演出した。ただ、本格的な改善の道筋はまだ見えない。
劉氏は、核問題について、中国が議長国を務める6か国協議の早期再開に応じるよう求めた。
金氏は、中朝友好の重要性を訴えたが、劉氏の働きかけに対する具体的な回答は伝えられていない。核放棄につながる言質を与えるのを避けたとみられる。
中国が地域の安定維持に役割を果たしたいのなら、北朝鮮が具体的な行動をとるよう圧力を一層強めるべきだろう。
北朝鮮の軍事挑発を防ぐには、日米韓3か国も連携し、抑止力を向上させることが肝要だ。
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