対北朝鮮政策 対話局面に転換を

朝日新聞 2015年10月12日

対北朝鮮政策 対話局面に転換を

北朝鮮の朝鮮労働党がおととい、創建70年を迎えた。平壌では過去最大規模の軍事パレードがあり、国を挙げて祝った。

パレードでは移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)の改良型とみられる兵器や、核保有国であることを誇示するかのような物々しい隊列が続いた。

約25分間にわたって演説した最高指導者の金正恩(キムジョンウン)・第1書記は、経済と国防の両方を追い求めるという「並進路線」の意義を改めて強調した。

だが現実をみわたせば、だれも核に執着する北朝鮮との関係改善など望まない。正恩氏が人民の生活向上を願うのなら、並進路線を捨てるしか道はない。

大規模な軍事パレードに踏み切ったのには二つの狙いがあったとみられる。国内向けの威信高揚と国際社会への威嚇だ。

発足して3年が過ぎても新政権には、誇れるような実績はない。大仰な兵器を示すようなことでしか国内の結束を高められないのだろう。

パレードを通して北朝鮮は、とりわけ米国に強いメッセージを放った。米西海岸にも到達可能とされるICBMの披露に加え、正恩氏は「(米国との)いかなる形の戦争にも応じられる」と述べた。

一方で北朝鮮は党創建日の直前、米国に秋波を送っている。朝鮮戦争の休戦協定をやめて、平和協定を結ぼうと公式に伝えた。久しぶりの対米融和の意思表明の方が、強気の威嚇よりも本音に近いのではないか。

中朝関係も動き始めている。今回の式典には中国共産党序列5位の劉雲山(リウユンシャン)・政治局常務委員が参席した。正恩氏との会談で「血で結ばれた関係」を確認し、中国の北朝鮮政策の本質に変化はないことを強調した。

主に米国や中国向けに微妙に軟化の兆しがみえるとはいえ、北朝鮮は相変わらず、長距離弾道ミサイルの発射実験を示唆している。無謀な行動を控えさせるためには引きつづき、中国の役割が欠かせない。

今回、劉氏は正恩氏に対し、日米韓ロを加えた6者協議の再開を呼びかけたという。北朝鮮問題を話し合う大切な会合だが、7年近く中断している。

周辺国が北朝鮮を核保有国と認めて、協議を再開させることはありえない。ただ、南北朝鮮では関係改善のための当局者会談を開くことで合意しており、対話の芽も生まれつつある。

決して容易ではないものの、日米韓は中ロと連携して6者協議の枠組みを再び動かし、北朝鮮を交渉の席に着かせる努力を強めるべきだ。

読売新聞 2015年10月14日

朝鮮労働党70年 軍事力誇示で展望は開けない

軍事力を誇示して、米国との対決も辞さないと挑発する。北朝鮮の不毛な戦術は、国際社会での孤立を深めるだけだ。

北朝鮮は、朝鮮労働党の創建70年を記念して大規模な軍事パレードを行った。金正恩第1書記は演説で、「経済と国防の並進路線」によって、国民生活と軍事力がともに向上したと自画自賛してみせた。

しかし、現実は、経済が破綻し、国民を窮乏に陥らせた歴史ではなかったか。国内は、安定や繁栄とはほど遠い状況にある。

金氏は、「米国が望むいかなる形態の戦争にも対応できる」とも強調した。核兵器やミサイルの開発によって「脅威」を作り出し、米国を交渉の場に引き出そうという浅慮があるのではないか。

オバマ米大統領は、「北朝鮮を核保有国としては認めない」と断言している。北朝鮮が核に固執する限り、国連安全保障理事会の決議に基づく制裁は続き、経済再建は遠のくだけである。

看過できないのは、開発中の移動式大陸間弾道ミサイル「KN―08」の改良型とみられる兵器も軍事パレードで公開したことだ。

北朝鮮メディアは「小型化された核弾頭を搭載した戦略ロケット」と紹介した。搭載の真偽は明らかではないが、北朝鮮が目指す核弾頭の小型化は国際社会を揺るがす深刻な動きと言えよう。

中国からは、習近平政権序列5位の劉雲山・政治局常務委員が軍事パレードに出席した。2013年の北朝鮮の核実験などで中朝関係が冷却化して以降、最高位の中国要人の訪朝である。

中国には、北朝鮮が衛星打ち上げの名目で、事実上の長距離弾道ミサイルを発射することを自制させる思惑があったのだろう。

劉氏はパレードに先立つ金氏との会談で、「中朝関係の新しい未来を切り開きたい」と述べ、関係修復を演出した。ただ、本格的な改善の道筋はまだ見えない。

劉氏は、核問題について、中国が議長国を務める6か国協議の早期再開に応じるよう求めた。

金氏は、中朝友好の重要性を訴えたが、劉氏の働きかけに対する具体的な回答は伝えられていない。核放棄につながる言質を与えるのを避けたとみられる。

中国が地域の安定維持に役割を果たしたいのなら、北朝鮮が具体的な行動をとるよう圧力を一層強めるべきだろう。

北朝鮮の軍事挑発を防ぐには、日米韓3か国も連携し、抑止力を向上させることが肝要だ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2311/