重要なのは行政組織を作ることではない。組織にどんな役割を担わせ、いかに機能させるか。鳩山政権はまず、その点を明確にすべきだ。
政府が政治主導確立法案を国会に提出した。内閣官房の国家戦略室を局に格上げし、行政刷新会議や税制調査会の法的根拠を明確化することが柱である。
副大臣と政務官を計15人増員する関連法案も近く提出される。いずれも4月1日施行を目指す。
首相の指導力を高め、縦割り行政を排除するとともに、官僚依存から脱却するのが目的だという。だが、今回の法案でそれが実現できるのか、疑問である。
国家戦略室は、鳩山内閣の目玉組織として発足した。ところが、事務局体制が不十分なまま開店休業が続いた。昨年末、名目成長率3%という高い目標を掲げた成長戦略をようやく発表したが、肝心の具体策が物足りなかった。
今後は当面、成長戦略の肉付けなどを行う予定だが、それにとどまるべきではない。
財政と社会保障、産業振興と環境政策など、府省の枠を超えた重要テーマの将来構想を示してほしい。縦割り行政を総合調整する司令塔の役割も果たすべきだ。
国家戦略を名乗るのに、外交・安全保障問題を扱わない方針も、看板倒れと言わざるを得ない。
行政刷新会議も、事業仕分けで注目されたが、生産的で深みのある議論を行ったとは言えない。
結局、各行政組織の職務分担をきちんと定めないまま、その場しのぎで試行錯誤を続けてきたのが原因だろう。政権発足から既に5か月が経過した。いつまでも「仮免許」では済まされない。
政府は、国家戦略局や行政刷新会議の役割をきちんと整理し、取り組むべき課題の優先順位を示すことが求められる。
政治主導という方向性は誤っていない。役所の既得権益や無駄遣いにメスを入れ、前例踏襲型の非効率な仕事を見直す。それには、政治家が官僚の抵抗を排し、改革を断行せねばならない。
一方で、本来は各府省の課長や課長補佐が担当すべき事務作業にまで口を挟むのでは、かえって行政が停滞、混乱する。多くの官僚は、政治との距離感を測りかねて「指示待ち」に陥っている。
政治家が、官僚の能力や専門性を最大限に活用してこそ、行政面の成果が上がるはずだ。
政治主導は、それ自体が目的ではなく、あくまで手段であることを忘れてはなるまい。
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