日ごろから運動に親しみ、健康な心身を維持していきたい。
スポーツ庁は、体育の日に合わせ、2014年度の体力・運動能力調査の結果を発表した。東京五輪が開かれた1964年から毎年行われている調査だ。6~79歳の約6万5000人を対象に実施した。
子供の体力は全体的に向上している。90年代には、ゲームの普及や塾通いにより、外で遊ばなくなり、体力不足が深刻化した。その後、学校での体育指導を充実させた成果と言えよう。
ただ、ピークの85年の体力には及ばない。特に、握力やソフトボール投げで低下傾向が続く。生活の中で、雑巾絞りといった動作が減った影響があるという。空き地などでボールを投げる機会も少なくなっているのだろう。
「握る」「投げる」は、スポーツを楽しむ上でも、大切な動作だ。学校は調査結果を基に、指導をさらに工夫してもらいたい。
65歳以上の高齢者の体力は、概ね最高水準にある。体力を維持し、健康に過ごすシニア世代が増えているのは、喜ばしい。
調査では今回、高齢者の運動習慣と日常動作の関係も調べた。
週に3~4日以上、運動している高齢者の8割以上は、何にもつかまらずにズボンやスカートがはけた。これに対し、運動をしない高齢者では、7割弱だった。
日常生活に必要な運動機能が低下する「ロコモティブシンドローム」が進行すると、転倒や骨折につながりやすい。外出や家事を支障なくできる「健康寿命」を延ばすため、運動を習慣付けたい。
政府は、各世代が参加できる生涯スポーツの拠点として、「総合型地域スポーツクラブ」の整備に力を入れている。地域住民が運営し、学校の体育館など、既存の施設を利用するのが特徴だ。
95年にモデル事業を始めてから、助成制度により運営を支援し、現在では、全国に約3500のクラブが誕生している。
ただ、地元のクラブの存在さえ知らない住民が多い。約2割の自治体にはクラブがなく、「全市区町村に一つ以上」という目標も達成されていない。
スポーツ庁の重要な施策の一つが、運動を楽しむ環境の整備だ。総合型地域スポーツクラブの普及と活用に力を入れてほしい。
住民が運動すると、ポイントがたまり、商品券などと交換できる制度を導入している自治体もある。体を動かし、汗を流す人が増えるよう、知恵を絞りたい。
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