全国民に12桁の番号を割り当てる共通番号(マイナンバー)制度が始まった。来月にかけて番号が通知され、来年1月以降、行政手続きなどで番号が利用される。
公正で効率的な税や社会保障の実現に向けた重要な基盤だ。生活に密接に関わるだけに、定着させるには国民の理解と信頼が欠かせない。政府には丁寧な説明と十分な体制整備が求められる。
マイナンバーは、所得や納税、年金など、別々に管理されてきた個人情報を一つの番号で結びつける仕組みだ。希望者には身分証になる番号カードが交付される。
行政機関は、これらの情報を照らし合わせて、適正な課税や社会保障給付に役立てる。大幅な事務の効率化も期待できる。国民は児童手当の申請時などに番号を提示すれば、手続きが簡単になる。
マイナンバーの利用範囲は、当面、税と社会保障、災害時の支援の分野に限定される。個人情報の保護を重視し、慎重に運用を始めるのは妥当だろう。
ただし、制度を有効に機能させるには、段階的に利用範囲を広げていく必要がある。
2018年以降は、本人の同意を条件に預貯金口座にマイナンバーを連結できるようになる。個人資産を正確に把握し、脱税や生活保護の不正受給などを防ぐ狙いだ。政府は21年を目途に義務化することも検討している。
社会保障費が膨張する中、高齢者にも経済力に応じた負担を求め、本当に援助すべき人に絞って給付する方式への転換が必要だ。そのために、収入や資産の正確な把握が重要なのは確かだろう。
医療分野での活用も課題だ。診療や検診の情報が連結されれば、検査や投薬の重複防止など医療の効率化と費用の抑制に役立つ。
日本年金機構の個人情報流出問題を受け、国民には情報漏洩や悪用への不安が強い。政府は、番号を扱う自治体や企業も含め、情報管理体制の強化を急ぐべきだ。
制度導入に便乗した詐欺などの犯罪も警戒せねばならない。
疑問なのは、消費税率10%時の負担緩和策として、財務省が唐突に番号カードを利用する案を示したことだ。カードを店頭の情報端末にかざすと飲食料品の購入額データが蓄積され、申請すれば2%分が給付されるという。
消費者に煩雑な手続きを強いる上、カードの紛失や盗難の危険も増す。マイナンバー制度導入への国民の不安感を高めかねない。即刻撤回されるべきである。
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