2日続きの快挙だ。
東京大宇宙線研究所の梶田隆章所長が、今年のノーベル物理学賞を受賞することになった。
前日には、北里大の大村智・特別栄誉教授に生理学・医学賞が贈られることが決まった。日本人研究者の相次ぐ受賞決定を心からたたえたい。
梶田さんは、物質の究極の姿である素粒子の中でも、多くの謎が残る「ニュートリノ」に質量があることを突き止めた。
研究グループを率い、岐阜県飛騨市の旧神岡鉱山内に設置した観測装置で、飛来するニュートリノを測定した。宇宙や物質の成り立ちなど、万物の理論に見直しを迫る画期的なデータとなった。
共同受賞するカナダ・クイーンズ大のアーサー・マクドナルド名誉教授は、地球の反対側にある観測装置で、同様の現象を観測した。両者の協力が結実した。
このテーマは1960年代から探究されてきた。梶田さんは「しっかり(観測を)続けてきたことが良かった」と喜びを語った。
49年に湯川秀樹博士が物理学賞を初受賞して以来、日本の素粒子研究は綿々と受け継がれてきた。その伝統が生きた。
大村さんの授賞理由は、アフリカや南米に多い寄生虫病・オンコセルカ症(河川盲目症)などの特効薬を開発したことだ。
開発に協力した米ドリュー大のウィリアム・キャンベル博士との共同受賞で、「革命的治療をもたらした」と称賛された。
人の命を救うという医学の原点に立った業績と言える。
大村さんは「人の役に立てたことがうれしい」と述べた。熱帯病の治療や解明に尽力した野口英世を思い浮かべた人も多かろう。
地中などにいる微生物は、抗生物質のような天然化合物を作り出す。大村さんは、多数の微生物を地道に収集した。受賞対象の特効薬「イベルメクチン」のもとになる化合物を見つけ、産学連携で製品化にこぎ着けた。
マラリアの治療薬を開発した中国中医科学院の屠●●氏も、同時に受賞する。(●は口へんに幼)
エボラ出血熱などの感染症対策は、人類の重要課題だ。今回の受賞は、病原体との闘いへの力強い後押しとなろう。
近年、日本の科学研究の地盤沈下が目立つ。次の世代が育っていないためだ。研究論文数は伸び悩んでいる。ダブル受賞は多くの研究者の刺激となるに違いない。若い研究者たちには、さらなる高みを目指してもらいたい。
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