2邦人逮捕 中国は容疑の詳細を示せ

読売新聞 2015年10月03日

中国2邦人拘束 「法治」による統制が目に余る

中国の習近平政権が共産党の一党独裁を死守するため、国内統制を一層強めていることを象徴する動きと言えよう。

日本政府は、邦人2人が今年5月、中国遼寧省と浙江省で、それぞれ中国当局に拘束されたと発表した。2人は日本から渡航した民間人男性だ。

中国外務省は、拘束理由として「スパイ活動」を挙げ、「法に基づいて審理し、処罰を進める」と強調した。だが、容疑の詳細は公表していない。

中国は昨年11月施行の「反スパイ法」を適用し、拘束したのではないか。この法律は国家機密の窃取や公務員の扇動・買収、国家安全への危害のほか、「その他のスパイ活動」も摘発対象だ。

菅官房長官は「我が国は、そうしたことは絶対していない」と反論し、早期解放を求めた。

懸念されるのは、当局があいまいな規定を恣意しい的に運用する事態だ。中国が「法治」を一党支配の手段として利用することに、日本や欧米は警戒する必要がある。

遼寧省で拘束された男性は、北朝鮮との国境の拠点都市、丹東を訪れたとされる。浙江省は中国海軍の施設などがある要所だ。日本も、中国や北朝鮮の諜報ちょうほう戦と全く無関係ではいられない。

4か月に及ぶ2人の拘束期間がさらに長期化する恐れもある。中国では、欧米諸国に比べて、起訴前の手続きに時間がかかる。国家安全絡みの事件では、不透明さが一段と高まるとみられる。

今年3月には、ビジネスツアーで訪中した米国人女性が「国家安全に危害を加えた疑い」で拘束され、調査を受けているという。

2010年、中堅ゼネコン「フジタ」の日本人社員4人が中国当局に拘束された際、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を巡る中国の「報復」との見方が出ていた。

中国は今回、拘束した2人についても、対日圧力の外交カードとして、安倍政権を揺さぶる思惑がないとは言い切れまい。

習政権は、反スパイ法に加え、今年7月、治安対策強化を狙った新法の国家安全法も施行した。経済が減速する中、社会の安定に危機感を募らせているのだろう。

欧米から中国に民主主義や人権などの価値観が流入、浸透するのを警戒し、外国の民間活動団体(NGO)の監視などを目的とする法案も提出している。

習政権が国際社会の批判に背を向け、強権統治を続けるのなら、「異質の大国」の姿がますます際立つだけである。

産経新聞 2015年10月03日

2邦人逮捕 中国は容疑の詳細を示せ

中国当局が、国内でスパイ活動を行った疑いがあるとして日本人男性2人を逮捕した。身柄の拘束は今年5月から長期にわたる。だが、容疑の詳細が明らかにされないのは、どうしたことか。

中国の洪磊報道官は2人の逮捕を認め、「法に基づき調査し処理する」と述べたが、その詳細については言及を避けている。逮捕容疑を具体的に開示すべきだ。

2人の拘束に適用したとみられる「反スパイ法」は昨年11月に施行された新法で、スパイ活動の定義は「国家安全に危害を加える活動」とされた。治安当局が幅広く定義を解釈できることから、恣意(しい)的な運用が危惧されていた。

さらに刑法のスパイ罪で逮捕、起訴されれば、特別規定で死刑の適用もあり得る。

中国は7月、人権派弁護士や活動家らを対象に過去最大規模の摘発を行い、100人以上を連行、拘束して国際社会の非難を浴びたばかりだ。

2010年に尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で中国人船長を逮捕した際には、対抗措置のように中国国内で日本企業の社員ら4人がスパイ行為を疑われ、身柄を拘束された。処分保留による船長釈放の判断には、社員らへの配慮もあったとされる。

習近平政権はしきりに「法に基づく統治」を唱える一方で、「法治」は党の指導下にあるとも強調している。

中国による法の恣意的運用を疑いだせばきりがない。これを抑止するためにも、正確で詳細な情報の開示を求め続けるべきだ。日本人が逮捕されながら、情報が小出しに判明する現状は、異常であるとしか、いいようがない。

洪磊報道官はまた、「日本側にはすでに状況を通知した」とも述べている。菅義偉官房長官も「邦人保護の観点から、在外公館を通じて適切に支援を行っている」と説明した。

日本政府が詳細な情報を得ているとすれば、これもやはり開示されるべきだろう。

情報公開に消極的な理由が、今後の交渉に支障をきたすなどの外交的配慮にあるとすれば、「今後の日中関係を考慮した」として中国人船長を釈放した尖閣諸島沖衝突事件の二の舞いである。

日本政府はあらゆる機会をとらえて、情報の開示と日本人男性の釈放を強く求めるべきだ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/2301/