職場の喫煙対策 全面禁煙の道筋示せ

朝日新聞 2010年02月19日

職場の禁煙 さらば「煙が目にしみる」

働く人の健康を守るために、職場は原則として禁煙にする。

他の人のたばこの煙を吸う、いわゆる受動喫煙による健康被害をどうすれば防げるかを検討している厚生労働省の有識者検討会が、こんな考え方を報告書の案の中心に据えた。

4月にもまとめる報告書を受けて、労働政策審議会が労働安全衛生法にどう盛り込むか、議論するという。

今度こそ、受動喫煙による健康被害を確実に防ぐための法整備を実現させてほしい。受動喫煙の防止をうたう健康増進法はあるものの、努力義務にとどまっている。

「たばこの煙にさらされることからの保護」を求めるたばこ規制枠組み条約(FCTC)が発効して今月末で5年。そのガイドラインは、受動喫煙を防ぐための法整備も求めている。

鳩山政権が誕生して、たばこ値上げなどの政策がやっと動き出した。民間のシンクタンク、日本医療政策機構の世論調査によると、現政権の医療政策の中で、たばこ増税は、事業仕分け、医師数の増加に続いて高い評価を得た。たばこ対策のいっそうの推進が、国民の期待に応える道だ。

報告書案はまず、受動喫煙による健康への影響は、科学的な証拠によって明白であることが世界的に認められているとした。

そのうえで、それを防ぐには、一般の事務所や工場は全面禁煙とするか、煙のもれない喫煙室以外では禁煙にすることを提案している。

飲食店などはどうか。従業員の健康を守るには、一般の事務所と同様の原則が必要だ。しかし、成人男性の喫煙率が依然として3割以上あり、客の喫煙を一律に禁止するのは難しいと飲食店などには抵抗が強い。それを考慮して、換気の徹底などによって、可能な限り従業員の受動喫煙を防止することを求めるにとどめている。

だが、成人人口の8割近くはたばこを吸わず、喫煙者の7、8割は禁煙を望んでいることにも目を向けたい。

海外に目を転じれば、たばこと酒は切り離せないと思われていた国々でも政治の指導力で着実に禁煙が進む。

英国はブレア政権が1997年に禁煙への取り組みを宣言、10年後の2007年に衛生法が施行されてパブなども禁煙となった。

台湾でも昨年、たばこ煙害防止法が施行され、公共の場からあっというまに煙が消えた。今や、ホテルも禁煙ルームだけだ。

世界でこれだけ禁煙が進めば、煙たい日本は、禁煙が進む外国からの観光客に文字通り煙たがられる。

何より、受動喫煙を確実に防いですべての国民の命を守らなければならない。職場の全面禁煙を目標に掲げて一歩を踏み出すときだ。

毎日新聞 2010年02月16日

職場の喫煙対策 全面禁煙の道筋示せ

職場での受動喫煙防止を議論してきた厚生労働省の有識者検討会が15日、従業員の健康を守る観点から企業や飲食店などの経営者がとるべき対応策の骨子をまとめた。

事務所や工場などは禁煙とし、やむを得ない場合は喫煙室を設置する▽禁煙化が経営上の問題となる飲食店や旅館などは換気の徹底などの対策をとる--といった内容だ。4月に最終的にとりまとめる報告書を基に、労働安全衛生法改正を前提にした審議会の議論が進む。

健康増進法による「努力義務」にすぎなかった職場の対策が、労働基準監督署の検査や指導なども可能な法規制に組み込まれるのは一つの前進と言える。受動喫煙を防ぐ効果がそがれかねない「分煙」ではなく、「禁煙」を基本線としている点も評価できるだろう。

07年の厚労省による労働者健康状況調査では、対策に取り組んでいる事業所は75%に達するものの、非喫煙者の4割近くは受動喫煙で不快や不調を感じている。新たな法規制で、あらゆる事業所が対策をとらねばならず、対応策もより厳格なものにしなくてはならなくなる。

問題は飲食店や旅館などサービス業の扱いだ。接客する従業員の受動喫煙を防ぐには客席や客室を全面禁煙にする必要がある。だが、営業上の障害になったり設備投資の負担が増えたりするため、換気の徹底などに対策を緩める方向のようだ。

4月施行の神奈川県の受動喫煙防止条例も、業界の反対で飲食店の7割以上、宿泊施設の約半数などを対象からはずし、規制対象でも分煙も容認したが、同様の緩和措置がとられることになりそうだ。

海外では、多くの国が公共の場での喫煙を厳しく規制している。

07年施行の英国・イングランドの禁煙法はパブやバーなども完全禁煙とし違反者への罰金を設けた。喫煙率が高かったイタリアでも、05年の禁煙法で喫煙を見逃した店主らにも罰金を科した。

米国では90年代から禁煙化が進み、全米50州のうち37州で飲食店が禁煙だ。タイでもエアコン設置の建物内が禁煙になり、日本のように喫煙できるホテルの客室は極めて少ない。

当面は飲食店など小規模経営への配慮も必要だろうし、欧米のような罰則導入は性急だとの意見もある。しかし、飲食店も含めた段階的な全面禁煙へのスケジュールくらいは示してもらいたい。

05年発効の「たばこ規制枠組み条約」は、屋内の職場と屋内の公共的施設の全面禁煙を日本を含む批准国に求めている。海外の動きを見ても、日本の対応は遅いうえ、このままでは内容も腰が引けている。

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