またか、のため息が出る。同じ団体が再び、政治へ不正にカネを注いだ疑いが強まった。
歯科医師会を束ねる政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)の前会長ら3人が、東京地検特捜部に逮捕された。
支援する国会議員に対し、法定の上限を超える寄付をしながら、収支報告書でうその記載をした疑いがもたれている。
上限を超えていないように見せかけるため、一部を別の国会議員の後援会にいったん寄付した形にする、いわゆる「迂回(うかい)」の手口を使ったとされる。
あきれるのは、日歯連自身の過去の事件が、この上限枠を設けるきっかけだったことだ。04年に自民党の旧橋本派へのヤミ献金疑惑が発覚し、政治資金規正法が改正された。
自分の手で「政治とカネ」をめぐる不信のタネをまき、そこから生じた法の網をまた、かいくぐろうとする。日歯連の指導層には、まっとうな倫理観があるのかさえ疑われる事態だ。
組織内から「迂回寄付では」と疑問の声があがると、会計責任者は「法的に問題ない」と答えていた。関係団体はそれぞれ独立した組織だから、などと説明していたが、カネの動き方をみれば、意図的な規制逃れとみられても仕方ない。
こんなやり方が許されるなら、法は意味をなさない。特捜部は寄付金の目的などを含めて、事件の全容を徹底解明してもらいたい。
驚くのは、議員1人を誕生させるまでに、日歯連が4億円もの資金を動かしていたという実態だ。13年の参院選の前に、議員の各地での遊説会場費などに約2億円。会員たちの集会までの旅費に約7800万円などを使ったとされる。
選挙や政治にカネがかかる。そのカネを通じて企業や団体が政治家とつながれば、腐敗の芽が生まれる。ならば企業・団体献金をなくし、国民の税金を政治資金にあてて、政治をクリーンにする。その前提で政党交付金が生まれたはずだった。
それから20年。いまも政党への企業・団体献金は続き、違法な事件や疑惑はあとを絶たない。それでも、「政治とカネ」のしくみを抜本的に改めようという政治の動きはにぶい。
寄付の上限枠についても、法改正の当初から「抜け穴だらけ」と指摘されてきた。だが、迂回を禁じる規定をつくることも、各党間で合意できないありさまだ。
責められるべきは、カネを出す側だけではない。問題を放置してきた政治家の責任は重い。
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