紛争地域から脱出した難民や国内避難民を多角的に支援する。安倍政権は、「積極的平和主義」の一つの柱として、真剣に取り組むべきだ。
安倍首相がニューヨークでの国連総会で演説した。内戦が続くシリアや、イラクの難民・避難民を支援するため、今年は約8・1億ドルを拠出する方針を表明した。昨年の3倍に上る。食料提供や保健・医療、教育支援に充てる。
中東から欧州へ流出する大量の難民の問題は今や、国際社会全体の優先課題だ。中東に対する日本の支援拡充は時宜に適う。
足りない援助物資は何か。生活にどんな支障が生じているのか。的確に見極めて、効果的な支援を行わねばならない。現地で活動する日本の民間活動団体(NGO)との連携にも力を入れたい。
難民の移動の途上にあるセルビア、マケドニアの受け入れ施設整備などの支援は有効だろう。
首相は「私たちの変わらぬ原則は、問題の根元へ赴き、状況を良くすることだ」と強調した。
中東の紛争の根底には、貧困や疾病がある。「人間の安全保障」を脅かす問題の克服にも、中長期的に関与することが重要だ。
安全保障関連法の成立で、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)での任務と権限が拡大される。
自衛隊は、カンボジアや東ティモールなどで国造りに貢献した。現在も南スーダンで活動中だ。従来の経験や知見を生かし、活動の幅をどう広げるか。政府は、前向きに検討する必要がある。
首相は演説で、創設70年の国連について「21世紀にふさわしいものとする」と語り、安全保障理事会の改革と日本の常任理事国入りへの決意を改めて訴えた。
安保理は、5常任理事国の対立により、シリア、ウクライナの危機などで機能不全を露呈している。常任理事国が地域的に偏っているうえ、現在の国際情勢を反映していないとの批判も根強い。
日本、ドイツ、インド、ブラジルの4か国(G4)は、常任理事国を11に、非常任理事国を10から14~15に拡大する改革案をまとめている。来年秋の国連総会に向けて、改革実現を目指す。
改革には、米中などが消極的なほか、関係国の利害が複雑に絡み合う。いかに193加盟国の3分の2以上の賛成を取り付けるか、G4の戦略が問われる。
日本は来年1月から2年間、11回目の非常任理事国を務める見通しだ。安保理改革をにらみつつ、実績を着実に上げたい。
この記事へのコメントはありません。