中韓国連演説 「反日宣伝」利用を憂慮する

朝日新聞 2015年10月01日

首相国連演説 いかに「国を開く」か

大切なのは、日本の閉鎖性を乗り越え、国際社会と連携していかに「国を開く」かという意識を持つことである。

安倍首相が国連総会の一般討論演説で、シリアとイラクの難民と国内避難民に向けた支援を手厚くし、昨年実績の3倍となる約970億円を拠出すると表明した。

難民問題は、地球規模の対応が迫られる深刻な人道問題だ。日本の資金提供は、いままさに苦難のなかにある人々への緊急の支援として評価できる。

ただ、それだけでは物足りない。日本として、国際社会とともに、もっと多様な難民の受け入れ策を打ち出せないか。

確かに、地理的な距離も難民の希望も、欧州と日本の事情は異なる。だとしても、昨年、日本が受け入れた難民はわずか11人。国際的な責任を果たしているとはとても言えない。

たとえば、来週予定される内閣改造で、難民・移民問題の担当閣僚を置いてはどうか。民間の知恵と経験を借りながら、省庁横断で本格的に検討する態勢を作る必要があるからだ。

日本の厳しすぎる難民認定基準は見直す必要がある。永住を想定するだけでなく、難民の若者を留学生として受け入れることもできるだろう。医療先進国の日本で治療を希望する難民を受け入れることも、日本にふさわしい貢献だろう。

さまざまな支援策を官民あげて検討し、できるだけ早く国際社会に示してほしい。

首相は演説で「私たちの変わらぬ原則とは、いかなる時にも、問題の根元へ赴き、状況を良くしようとすることだ」と語った。きのう公布された安保法制にも言及し、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊の役割拡大を強調した。

資金支援も、自衛隊のPKO派遣も、日本にとって重要な国際貢献なのは確かだ。

気がかりなのは、日本政府の発想が、資金を出すか、自衛隊を出すか、その二者択一にとどまっているように見えることだ。国際社会の問題を国内に受け入れ、解決に寄与するという発想が感じられない。

首相は「国際協調主義にもとづく積極的平和主義」が日本の旗だと強調した。ならば、喫緊の課題である難民問題にもっと柔軟な発想で取り組むべきだ。そんな姿勢があればこそ、積極的平和主義に対する国内外の理解も進むだろう。

国を開き、国際社会とともに歩む。そのために何より重要なのは、政治のリーダーシップにほかならない。

読売新聞 2015年10月01日

首相国連演説 難民支援を多角的に強めたい

紛争地域から脱出した難民や国内避難民を多角的に支援する。安倍政権は、「積極的平和主義」の一つの柱として、真剣に取り組むべきだ。

安倍首相がニューヨークでの国連総会で演説した。内戦が続くシリアや、イラクの難民・避難民を支援するため、今年は約8・1億ドルを拠出する方針を表明した。昨年の3倍に上る。食料提供や保健・医療、教育支援に充てる。

中東から欧州へ流出する大量の難民の問題は今や、国際社会全体の優先課題だ。中東に対する日本の支援拡充は時宜にかなう。

足りない援助物資は何か。生活にどんな支障が生じているのか。的確に見極めて、効果的な支援を行わねばならない。現地で活動する日本の民間活動団体(NGO)との連携にも力を入れたい。

難民の移動の途上にあるセルビア、マケドニアの受け入れ施設整備などの支援は有効だろう。

首相は「私たちの変わらぬ原則は、問題の根元へ赴き、状況を良くすることだ」と強調した。

中東の紛争の根底には、貧困や疾病がある。「人間の安全保障」を脅かす問題の克服にも、中長期的に関与することが重要だ。

安全保障関連法の成立で、自衛隊の国連平和維持活動(PKO)での任務と権限が拡大される。

自衛隊は、カンボジアや東ティモールなどで国造りに貢献した。現在も南スーダンで活動中だ。従来の経験や知見を生かし、活動の幅をどう広げるか。政府は、前向きに検討する必要がある。

首相は演説で、創設70年の国連について「21世紀にふさわしいものとする」と語り、安全保障理事会の改革と日本の常任理事国入りへの決意を改めて訴えた。

安保理は、5常任理事国の対立により、シリア、ウクライナの危機などで機能不全を露呈している。常任理事国が地域的に偏っているうえ、現在の国際情勢を反映していないとの批判も根強い。

日本、ドイツ、インド、ブラジルの4か国(G4)は、常任理事国を11に、非常任理事国を10から14~15に拡大する改革案をまとめている。来年秋の国連総会に向けて、改革実現を目指す。

改革には、米中などが消極的なほか、関係国の利害が複雑に絡み合う。いかに193加盟国の3分の2以上の賛成を取り付けるか、G4の戦略が問われる。

日本は来年1月から2年間、11回目の非常任理事国を務める見通しだ。安保理改革をにらみつつ、実績を着実に上げたい。

読売新聞 2015年09月30日

中韓国連演説 「反日宣伝」利用を憂慮する

安全保障や歴史認識を巡って韓国と中国が共闘し、国連を「反日宣伝」の舞台として利用することは看過できない。

韓国の朴槿恵大統領は国連総会の一般討論演説で、北東アジア情勢に関し、「安保秩序に重大な影響を及ぼしかねない新たな動きがあり、地域諸国の憂慮を生んでいる」と主張した。

日本の安全保障関連法については、「透明性をもって履行されねばならない」と注文をつけた。

自衛隊の活動は法律に従い、国会の承認なども必要となる。「透明性」を日本に求めるのは根拠がない。むしろ中国の軍備増強に向けて主張すべきではないか。

安保関連法は、日米同盟を深化し、北朝鮮の軍事的挑発などを抑止するもので、韓国にも役立つ。米国は無論、アジア諸国の大半も高く評価している。日本への警戒感をあおるのは筋違いだ。

朴氏は、9月初めに行われた中国の「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードに出席するなど、露骨に対中傾斜を強めている。安保政策でも、日米韓の枠組みを軽んじるつもりなのだろうか。

今回の演説では、元慰安婦を念頭に、生存者が少なくなっており、「心の傷を癒やす解決策」が早急に必要だとも述べた。

問題は、朴氏が具体的な解決策を提示せず、日本の歩み寄りだけを求めていることだ。日本のアジア女性基金の活動を評価したこともない。基金は、韓国の元慰安婦61人に首相のおびの手紙とともに「償い金」を支給している。

朴氏は「国連人権委員会の特別報告者らの努力を無駄にしてはならない」と語った。クマラスワミ報告は、慰安婦を「強制連行された軍用性奴隷」とするなど、事実誤認が多い。これに依拠した日本批判は受け入れがたい。

中国の習近平国家主席も演説で歴史問題に言及した。「中国は死傷者3500万以上の犠牲を出して、日本の軍国主義の主要な兵力に抵抗した」と強調したが、数字のり所は示さなかった。

中韓は、日本に関する一方的な見解を、客観的事実であるかのように喧伝けんでんしている。

習氏は、国連や多国間の平和事業に関する総額10億ドル(約1200億円)規模の基金の創設も表明した。経済力をてこに、中国の国際社会への影響力を強めようとする意図がうかがえる。

東・南シナ海で力による現状変更を図り、地域の緊張を高めている中国に、国際秩序を主導する資格があるとは言えまい。

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