中東やアフリカなどから難民や不法移民が流入するスピードを抑え、秩序だった難民支援の体制を構築できるのか。欧州連合(EU)の協調の真価が試されよう。
EUは、首脳会議を開き、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など国際機関に少なくとも10億ユーロ(約1300億円)を追加拠出することを決めた。シリア周辺国で難民を支援するためだ。
内戦が続くシリアからは、400万人以上がトルコやヨルダンなどに流出した。
欧州に向かう難民を減らすには、周辺国での難民生活を安定させることが肝要である。EUの支援は、内戦終結の道筋が見えない中での苦肉の策と言えよう。
首脳会議は、難民流入の玄関口であるギリシャとイタリアに、難民登録や指紋採取を行う施設を、11月末までに設置することでも合意した。難民と不法移民を区別する狙いだ。EUと加盟国が連携して国境警備を増強するという。
EUにとっての難題は、欧州入りした難民の受け入れについて、加盟国がどう分担するかだ。
首脳会議に先立って開催された法相・内相理事会では、ギリシャとイタリアが抱える難民12万人を2年間で、加盟国が共同で受け入れることを決めた。
ハンガリーやスロバキアなど東欧4か国が反対し、異例の多数決で決着せざるを得なかった。
欧州での難民申請者は今年、100万人を超えると予測されている。今回の分担決定は焼け石に水ではないか。持続的な受け入れ体制を作ることが急務である。
EUが流入抑制を含む対策を打ち出したのは、大量の難民らが殺到することが各国の社会の安定を脅かすという危機感からだ。
財政危機のギリシャで20日行われた総選挙では、反移民を掲げる極右政党が第3党になった。
経済大国ドイツは難民を寛大に受け入れてきたが、今月中旬、国境検問による制限を始めた。流入急増で収容能力を超えた地元当局が抗議の声を上げたことが大きい。受け入れに反発する極右集団の活動も顕在化している。
欧州への難民流入は今や、国際社会全体が取り組むべき問題だ。米国やオーストラリアはシリア難民の受け入れ拡大を表明した。
日本は、シリア周辺国の難民に対する食料供与や上水道整備など支援に力を入れ、11億ドル(約1300億円)以上を拠出してきた。人道危機の深刻化を受け、一層の貢献へ知恵を絞る時である。
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