財務省が示した消費税率10%時の負担緩和案に対する批判が、一段と強まっている。
15日の与党税制協議会では、公明党から「我々が訴えてきた軽減税率とは違う」「消費者の負担が大きい」などの異論が相次いだ。
このため協議会は、負担緩和策について、本来の軽減税率の導入を軸に、財務省案などと並行して検討していくことになった。
財務省案は、全品目に税率10%を課した上で、酒類を除く飲食料品の税率2%相当額を後日、消費者に給付する。1人年5000円程度の上限を設ける方向だ。
財務省は「日本型軽減税率」と称しているが、お金を広く薄く配る給付金制度にほかならない。痛税感を和らげる効果に乏しく、国民に多大な不便を強いる。
与党は、軽減税率導入に絞って具体策を詰めるべきだ。
財務省案では、消費者は買い物の際にマイナンバー(共通番号)カードを持ち歩かねばならない。紛失や盗難のリスクは大きい。
カードの製造が追いつかず、消費税率10%が予定される2017年4月までに、全国民に行き渡らない可能性も高いという。カード不足で給付が行えない状況での見切り発車は許されまい。
自民党内には、軽減税率の導入に関し、中小企業などの事務負担が重くなるとの反対論がある。
取引ごとに税額を記入するインボイス(税額票)の作成が必要になるためだ。
ただ、インボイスは簡略化しようと思えば、請求書に税率や税額などを書き加える程度で済み、さほど負担が増えるわけではないと指摘する専門家も少なくない。
軽減税率を導入している欧州各国のほか、アジアにも韓国やタイなどインボイスを採用する国がある。日本だけ作成が難しい事情があるとは思えない。
全国の食品店にカードの読み取り機を設ける財務省案は、インボイス方式より手間も費用もかかるのではないか。企業の負担を軽くするため、顧客の国民に面倒を押しつけるのは筋が通るまい。
先進国最悪の財政事情を抱える日本ではいずれ、消費税率の10%超も視野に入ってくる。
財務省案では、税率を上げる度に、いったん支払う消費税の痛税感が大きくなる。給付額は膨らみ、受給の回数や手間も増そう。
食料品や新聞など必需品の消費に支障が出ないよう、税率が低いうちに、軽減税率の枠組みを整えておくべきだ。
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