頻発する豪雨に、どう対処すべきなのか。教訓を今後の対策に生かさねばならない。
東日本を襲った記録的な大雨は、各地に大きな被害をもたらした。死者や多数の行方不明者が出ている。茨城県や宮城県では河川から濁流があふれて、広い範囲で住宅街が水没し、避難所に身を寄せる人も多い。
とりわけ鬼怒川が決壊した茨城県常総市の被害は甚大だ。現地を視察した安倍首相は、行方不明者捜索や被災者の生活再建に「全力を挙げる」と述べた。
政府は自治体などと連携し、早急に対策を講じてもらいたい。被害が拡大した経緯の徹底的な検証も必要である。
今回、警察、消防、自衛隊、海上保安庁が速やかに出動し、逃げ遅れた住民をヘリコプターも使って救助した。政府の総力を挙げた対応は評価できよう。
だが、課題は少なくない。
鬼怒川の堤防には、「10年に1度」程度の大雨で越水する箇所が多い。国土交通省は、決壊現場付近のかさ上げ工事などを計画し、昨年度から用地買収を始めたが、着工に至っていなかった。
流域の住民に、洪水の危険性は十分に周知されていたのか。
気象庁は10日午前0時過ぎ、鬼怒川上流の栃木県を対象に、大雨の特別警報を出した。間もなく常総市も流域の一部地域に避難指示を発令した。ただし、浸水が及んだ全域に指示を広げたのは、決壊した後だった。
結果として、避難指示発令の在り方に教訓を残した。
今回の大雨は、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」が長時間、被災地域にとどまったことが原因だ。台風18号から変わった低気圧と台風17号により、湿った空気が関東、東北地方に流れ込み、積乱雲が次々に発生した。
地球温暖化の影響もあり、近年、豪雨災害が各地で相次ぐ。9月に限ってみると、大雨の発生日数が20世紀初頭より3割増えた。
どの河川でも、同様の事態は起きると考えるべきだろう。
国交省は、全国の河川で堤防改修などに取り組んでいる。首都圏の荒川などでは、200年に1度の増水にも耐え得るというスーパー堤防の建設が進んでいる。
予算上の制約を考えれば、全河川の堤防を直ちに強化するのは現実的ではない。優先度を見極めることが大切だ。
住民の避難が迅速かつ円滑に進むよう、自治体が日頃の備えを再点検することも不可欠である。
この記事へのコメントはありません。