司法試験漏洩 倫理観の欠如が不祥事招いた

読売新聞 2015年09月10日

司法試験漏洩 倫理観の欠如が不祥事招いた

公正さが求められる司法試験の信頼を揺るがす不祥事である。

今年の司法試験の問題作成に携わった明治大法科大学院の男性教授が、教え子の女性に問題の一部を漏らしたことが判明した。

法務省はこの教授を国家公務員法の守秘義務に違反した容疑で、東京地検特捜部に告発した。問題作成や採点を担う考査委員からも解任した。女性については採点対象から外し、今後5年間、司法試験の受験を禁じた。

漏洩ろうえいの動機や経緯の徹底的な解明が必要だ。法務省は再発防止を図り、試験に対する不信感を払拭しなければならない。

司法試験では毎年、裁判官や弁護士ら法律実務家や法科大学院の教員の中から、非常勤の国家公務員として、200人以上が考査委員に任命される。

明治大の教授は、自ら作成に関与した論文式試験の問題内容を事前に女性に教え、何度も解答の添削をしたという。

考査委員としての倫理観が欠如していたと言うほかない。

教授は2005年から考査委員を務めていた。過去にも不正行為がなかったかどうか、しっかり調べてもらいたい。

今回、改めて浮かび上がったのが、受験生に接する法科大学院の教員が、司法試験の問題を作成する仕組みの危うさだ。

司法試験を巡っては07年に、考査委員だった慶応大法科大学院の教授が、試験問題と類似する論点を、事前の勉強会で学生に説明していたことが発覚している。

これを機に、考査委員の順守事項が定められ、最終学年の法科大学院生や修了生への指導が禁止された。ただ、違反した場合の罰則はなく、結果として、不正防止に効果があったとは言い難い。

一方で、法務省は、教員が考査委員を兼ねる形態を残してきた。法科大学院の教育内容を試験に反映させる必要があるという理由からだ。今後は、問題作成を法律実務家に委ねるべきだとの声が高まることが予想される。

今年の司法試験で、法科大学院の修了生の合格者は1664人、合格率は約22%にとどまった。各法科大学院は生き残りをかけて、自校の合格実績を上げねばならない状況に置かれている。

司法試験の合格率の低迷などを背景に、法曹志願者も減少している。今回の事件で、法曹離れに拍車がかかる可能性がある。法務省は危機感を持って、実効性のある不正防止策を検討すべきだ。

産経新聞 2015年09月12日

司法試験漏洩 法の正義はどこへ行った

法律家の「正義」とは買いかぶりだったのか。法曹への入り口で行われた不正にあきれる。

司法試験の問題作成者である考査委員の明治大法科大学院の教授が、教え子の女性に出題内容を漏らしていた。

国家公務員法の守秘義務違反容疑で東京地検が捜査している。法務省や大学側にも再発防止への徹底した検証を求めたい。

漏洩(ろうえい)は今年の司法試験で起きた。教授は自身が作成にあたった憲法分野の論述式試験の問題を女性に漏らし、解答の添削指導もしていた疑いが持たれている。

女性の答案が模範解答に近かったことなどから不正が発覚した。教授は法務省の調査に問題を漏らしたことを認め、「かわいがっていた教え子なので何とか合格させてやりたかった」などと動機を説明したという。考査委員の立場を忘れ、理由にもなっていない。

司法試験の問題作成や採点にあたる考査委員は、裁判官や検事、弁護士、大学教授などから選ばれ非常勤の国家公務員として任命されている。厳正さが求められる任務だからだ。倫理性を欠く人間には任せられない。

法務省は問題の教授を考査委員から解任し、女性についても5年間、司法試験受験を禁じる措置をとった。同省は、漏洩はこの女性1人に対するものとみているが、捜査を通し、漏洩経緯など早急な解明を行い、再発防止につなげてもらいたい。

過去に考査委員の慶応大法科大学院教授が学生への答案練習会で試験と類似の論点を教える問題が起きている。対策として考査委員の学者枠を減らすほか、受験予定の学生らへの直接指導を禁じた。その反省が生かされていない。

問題の教授は十数年にわたって考査委員を務めていた。憲法学者として法の順守を説く立場で、その資質自体が疑われる。

法務省は考査委員の選定を含め、再発防止策を早急にまとめるべきだ。

そもそも司法試験は、高い見識を持つ信頼に足る法律家を多く育てるため、法科大学院でじっくり学び合格できるよう改革されたはずではなかったか。今回の不正は改革の趣旨と対極にある。

明治大学は調査を行い厳正に処分するとしているが、学内に不正の温床をつくっていた責任も重く受け止めるべきだ。

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