改正派遣法成立 雇用安定の実効性は高まるか

朝日新聞 2015年09月12日

改正派遣法 権利守る改正が必要だ

改正労働者派遣法が成立した。悪質な派遣会社を排除するため、全て許可制にするなど、派遣会社への規制を強化したことが特徴で、派遣社員として働く人たちにとって、有益な点も含まれている。しかし、派遣社員の権利をどう守り、強化するか、という視点からの改正ではなかったために、積み残された課題が多い。さらなる法改正が必要だ。

これまでは、派遣社員を受け入れられる期間が業務によって規制されていた。専門的とされる「26業務」には制限がなく、それ以外は原則1年・最長3年だった。今回の改正では、業務によって違う期間にすることをやめて、派遣可能な期間は一律「原則3年」となった。

これまでの規制のもとでは、26業務であるかのように装ってそれ以外の仕事に就かせて期間の規制をすり抜ける不正も起きてきた。その余地がなくなる点も、評価できる点ではある。

しかし、改正によって、労働組合などの意見を聴いたうえで人を代えれば、同じ仕事を派遣社員に任せ続けることも可能になる。この点が国会での論議の焦点となり、野党は「不安定な派遣労働を広げる」「生涯派遣で低賃金の人が増える」と反対してきた。

そうした危惧が生じるのは、派遣社員の権利が強化されていないことに原因がある。

確かに、派遣会社には様々な義務が課せられ、派遣社員の能力を向上させ、雇用を安定させる仕組みが改正法には盛り込まれてはいる。しかし、派遣社員の処遇を改善するには、「均等待遇原則」を明示して、法律で裏打ちする必要がある。

派遣法と同時に成立した議員立法では、同じ価値のある労働の賃金を同じにする「同一労働・同一賃金」を進めるために調査・研究を進めることになった。こうした調査・研究を生かして、派遣社員が派遣先の企業で働く人たちと同等の待遇を求められるよう法改正をすることが、次の課題だろう。

派遣社員が派遣先と団体交渉をする権利を法制化することも検討するべきだ。

派遣先は「雇用主ではない」として、団交を拒むことが多く、その結果、派遣社員が低い労働条件に甘んじることにつながっていた。労働条件に大きく影響しているのは派遣先の判断だ。派遣社員の正当な主張が通る道筋を整えるべきだ。

派遣労働者の権利を拡大することで、派遣労働の乱用を防ぐ。そうした視点で、早急に次の法改正を目指すべきだ。

読売新聞 2015年09月12日

改正派遣法成立 雇用安定の実効性は高まるか

今国会の焦点の一つだった改正労働者派遣法が自民、公明両党などの賛成多数で成立した。30日に施行される。

派遣労働者の雇用安定と処遇改善に着実につなげることが大切だ。

改正法は、企業が派遣労働者を受け入れられる期間の制限を事実上なくすことが柱である。

従来は、正社員の仕事を守るため、受け入れ期間を最長3年に制限してきた。秘書など26の専門業務は例外だったが、改正法では、この区分を廃止し、全業務で労働組合などの意見を聞けば、企業は期間を延ばせるようにした。

一方、個々の派遣労働者については、様々な仕事を経験して技能向上を図る観点から、同じ職場で働く期間を原則3年までとする新たな制限を設ける。

派遣会社に対しては、計画的な教育訓練など派遣労働者のキャリアアップ支援や、派遣先への直接雇用の依頼といった雇用安定措置を義務づけた。

働き方の多様化を踏まえ、手薄だった派遣労働者の保護を強化する改正案は、妥当な内容である。企業が派遣労働者を活用しやすくなる利点もある。

これまで長く働けた専門業務の人も、3年で職場を変わることになる。「雇い止め」の不安を抱く人は多い。政府は、派遣先や派遣会社の動向を注視し、雇用安定への努力を促すべきだ。

国会審議では、政府・与党が「正社員への道を開き、処遇改善を図るもの」と強調したのに対し、民主など野党は「一生派遣」が増える、と強く反発した。

改正法には、野党の主張を取り入れた39項目に上る付帯決議が参院で採択された。その結果、衆院厚生労働委員会で、採決前に委員長の入室を妨害するなど「実力行使」に出た野党も矛を収めた。

付帯決議は、派遣会社が得る「マージン」に関する規制や、派遣労働者の直接雇用に消極的な派遣先への指導などを求めている。検討すべき課題だ。

改正法では、一部で認めていた派遣会社の届け出制を廃止し、全てを許可制とした。

教育訓練などを怠った業者に対し、許可取り消しも含めて厳しく指導監督する。厚生労働省にその能力があるかどうかが、改正法の実効性を確保するカギを握る。

許可制が有効に機能すれば、低コストのみが売り物の業者は淘汰とうたされよう。良質な業者を育てることで、派遣労働をキャリアアップの機会として定着させたい。

産経新聞 2015年09月15日

派遣法改正 処遇と技能の向上進めよ

労働者派遣法改正で、企業が派遣社員を受け入れられる期間の制限が実質的に撤廃される。

企業側が派遣社員を活用しやすくする一方、派遣会社には処遇改善と雇用安定を義務付けた。

問題は、派遣社員に対する教育訓練や派遣先への直接雇用の依頼などについて、それを担う事業者がどこまで実践できるかだ。これを欠いたままでは、改正は空証文に終わる。

派遣会社の届け出制を廃止し、審査などが必要な許可制に統一することも決まった。要件を満たさない事業者には厳しい姿勢で臨む必要がある。監督する厚生労働省の能力が問われることを忘れてはならない。

これまで企業が派遣社員を受け入れられる期間は、業務内容によって制限されていた。秘書や通訳など専門業務には制限がなく、それ以外の業務は最長3年だった。だが、専門業務と称して一般業務に就かせるなどの不正が問題になっていた。

今回の改正法では、業務による区分をなくし、派遣制度の透明化を図る。労働組合などの意見を聞けば、企業は人を交代させることで派遣社員に同じ業務をずっと任せることができるようになる。

課題はこれまで手薄だった派遣社員の保護が強化されるかだ。

許可を受けた派遣会社は、派遣社員への教育訓練のほか、継続して雇用するための措置を義務付ける。これを怠った事業者には、許可取り消しなど厳しく指導するという。悪質事業者を排除しなくては、派遣社員の待遇向上につながらない。

野党の求めに応じて参院で採択された付帯決議では、事業者が得る派遣料金と支払う賃金の差額(マージン率)規制も盛り込まれた。一考に値する提案だ。

3年ごとに職場を変えるのは、さまざまな仕事を経験して技能向上を目指してもらうためだという。ただ、これまで期間制限がなかった専門業務に携わる人には雇用への不安が強い。派遣会社の雇用安定化の実態を調べ、必要に応じて見直しを加えてほしい。

派遣労働の乱用は論外だが、高齢者や子育て中の女性らには、働き方を選べる派遣労働の方が適しているとの指摘もある。

多様な働き方の一環と位置付けて、制度の適正化を進めていくことが重要だ。

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