党首討論 時間延長したらどうか

朝日新聞 2010年02月18日

党首討論 より頻繁に、より工夫を

鳩山政権発足から5カ月、ようやく初めての党首討論が開かれた。中身は政治とカネの問題一色。国会内の熱気とは裏腹に、残念ながら、貧しく、物足りない論戦で終わってしまった。

党首討論は、国会論戦を活性化することを目指した制度である。

政権を争う党首同士が正面から切り結ぶ。それを見て聞いて、どちらに政権をゆだねるのがいいか、有権者が品定めする。政権交代時代の最も大切な政治の舞台となるべき機会である。

そうした観点からは、きのうの討論は「不合格」といわざるをえない。

谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表とも、母親から巨額の資金提供を受けながら、納税していなかった首相への納税者の憤りを取り上げた。

小沢一郎幹事長の土地取引問題に、小林千代美衆院議員側への労組からの資金提供。民主党議員のカネの問題に、約45分の大半が費やされた。

相手の弱みを突く。反論する。国会の攻防として当然のことでもあろう。

首相は答弁で、小沢氏が国会で説明するよう「私から進言することは十分にあろうかと思う」と述べた。

秘書などの会計責任者が政治資金収支報告書にウソを書いた場合、議員本人も公民権停止にしやすくする公明党提出の政治資金規正法改正案を「望ましいもの」と評価し、こうした問題をめぐる与野党の協議機関設置に「賛成したい」と語った。ぜひ実行してもらわなければならない。

しかし、国会、なかでも党首討論は本来、予算案審議をはじめとする幅広い政策論争を通じ、将来ビジョンを競い合う場である。

経済と雇用、財政をどう立て直すのか。日米同盟の「深化」や、台頭する中国、アジアとの関係は。難しいが、いよいよ待ったなしの課題はどこかへいってしまった。「いのちを守りたい」「新しい公共を」といった首相の政治哲学をめぐる応酬も聞きたかったが、取り上げられずじまいだった。

こうした党首討論のあり方でいいのか、与野党ともに考えてもらいたい。

党首討論が充実しない大きな原因は、その時々の政治状況への思惑が優先されるあまり、開かれる機会が極めて少ないこと、時間も短いことにある。もともとは原則週1回開くのがルールだったではないか。5カ月で初めてというのはひどい。

民主党は今国会に、政治家同士の議論を活性化するため、官僚答弁を禁止する法案を提出する予定だが、これでは言うこととやることが違う。

可能な限り、毎週開く。時間を延ばす。なにより、毎回事前にテーマを決めておく。そうした工夫や改善を真剣に考えるべきである。でなければ、自民党長期政権時代の与野党対決の姿とどこが違うのかということになる。

毎日新聞 2010年02月18日

党首討論 時間延長したらどうか

鳩山政権が発足して約5カ月。鳩山由紀夫首相と自民党の谷垣禎一総裁らとの党首討論が17日ようやく実現した。しかし、討論の中身は「消化不良」の一語に尽きた。やはり、50分そこそこの時間では短過ぎる。討論の回数を増やすとともに時間の延長も検討すべき時だ。

谷垣氏や公明党の山口那津男代表が、鳩山首相の偽装献金事件や小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体の土地購入をめぐる事件など一連の「政治とカネ」の問題を真っ先に取り上げたのはやむを得まい。各種の世論調査を見ても首相らのこれまでの説明で「納得した」と感じている国民は少ないからだ。

しかし、谷垣氏らは「首相は脱税王」「国民の間には納税がばかばかしいとの気持ちが起こっている」などと激しく非難したものの、新たな追及材料には乏しく、首相も自らの事件に関して「私は知らなかった」と繰り返すだけだった。

ただし、とりわけ小沢氏の問題に関しては、関係者抜きの究明には限界があるのも確かだ。谷垣氏はこの日、首相の元秘書らのほか小沢氏本人の証人喚問を要求し、首相も小沢氏が国会で説明することに関しては「必要であれば私から進言することは十分ある」と応じた。ひたすら新年度予算案審議を急ぐ与党だが、早期の成立を目指すというのなら、むしろ積極的に小沢氏らの説明責任を果たす場を設けるべきだろう。

また、首相は企業・団体献金の全面禁止に改めて前向きな姿勢を示し、この問題に関して公明党が呼びかけている与野党協議機関の設置にも応じる考えを示した。政治家の監督責任の強化を含め、首相の言葉通り、今国会で実現してもらいたい。

このほか谷垣氏は最近、閣僚の中から子ども手当の満額支給は11年度も難しいといった声や、消費税増税の議論の開始を早めるとの意見が出ている点を挙げ、「民主党のマニフェストの基本構造に対する疑念が閣内からも出てきている」と指摘。首相が言うように消費税率を4年間引き上げず、マニフェスト政策を実行する場合、どのようにして財政の見通しを立てるのか、具体的な数値目標を掲げるべきだとも主張した。

いずれも真っ当な指摘である。ところが、首相が「これからも歳出削減に努力する」と語ったところで時間切れとなってしまった。

首相も谷垣氏らも「政治とカネの問題以外にもテーマは山積している」と語りながら、どの議論も中途半端で深まらない。かねて毎日新聞は党首討論は毎週でも開けばいいと主張してきたが、消化不良の討論を繰り返さないためには、時間延長も早急に検討する必要がある。

読売新聞 2010年02月18日

党首討論 かみ合わなかった政治とカネ

鳩山首相と谷垣自民党総裁、山口公明党代表による、政権交代後初の党首討論が行われた。

谷垣総裁は、鳩山首相の母親による巨額資金提供問題で「二の矢」を放てず、首相も、「全く知らなかった」と突っぱねて終わった。

この問題は、まじめな納税者に「政治家だけが特別扱い。ばかばかしい限りだ」という強い不信感を抱かせている。

野党党首がともに納税者の気持ちを代弁したのに対し、首相は「誠に申し訳ない」と謝ったが、首相は徴税を含む行政の最高責任者だ。「知らぬ存ぜぬ」では納税者の納得は到底得られまい。

今後、資金提供の問題は、関係者の国会招致によって、真相の究明を図らなければならない。

谷垣氏は、先月の衆院予算委員会で、母親からの資金提供を首相が知っていたと証明された場合、議員辞職して責任をとる、との言質を首相から得ている。

予算委の集中審議では、与謝野馨・元財務相が、首相の弟の鳩山邦夫・元総務相の話を引用する形で、首相が知らなかったとすることに疑問を投げかけていた。

しかし、党首討論で谷垣氏は、首相の「全くの作り話」という反論を崩せなかった。結局、首相の元秘書らの証人喚問要求にとどまり、論議はかみ合わなかった。

小沢民主党幹事長の資金管理団体による土地購入事件では、小沢氏の国会での説明について、首相は「必要なら私から進言することは十分ありうる」と述べた。

そう言う以上、小沢氏に対し、野党が要求している国会招致に応じるよう求めるべきである。

公明党の山口代表が、企業・団体からの献金を禁止するなどの政治資金規正法改正に関する与野党協議機関設置を求めたのに対し、首相は「民主党も賛成したい」と応じた。法改正の論議が必要なことは間違いないだろう。

だが、民主党としては、首相や小沢氏の政治資金に絡む疑惑はもちろん、北海道教職員組合側から違法な選挙資金が、同党議員の陣営に流れたとされる問題についても、徹底的に調査し、国民に説明することが先決ではないか。

党首討論の持ち時間は谷垣氏35分、山口氏10分間に過ぎない。時間の制約もあり、消費税率引き上げの議論も消化不良だった。

首相も谷垣氏も、今後は頻繁に党首討論を開く意向を表明した。もっと政策論議を充実させていかなければ、党首討論の存在意義が問われることになる。

産経新聞 2010年02月18日

党首討論 やはり証人喚問が必要だ

鳩山由紀夫首相は党首討論で、母親から提供された巨額資金について全く知らなかったという従来の説明を繰り返し、資金の趣旨について母親に尋ねることも拒んだ。

さらに首相は、資金管理団体の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で3人の現元秘書が起訴された小沢一郎幹事長に対し、責任をとるよう求める考えがないことも明言した。

政権交代後、初の党首討論に国民は注目し、国会の自浄能力が発揮される契機となることが期待された。だが、首相の姿勢は小沢氏ともども開き直りを続ける印象を与えただけではないか。

政党トップが直接論じあう党首討論で何ら解明につながらないのは残念だ。国会の存在意義さえ問われよう。やはり、国政調査権に基づく証人喚問が必要だ。

自民党の谷垣禎一総裁は、首相が贈与税を納めていなかったことが国民の納税意識に悪影響を与えているとして、母親に資金提供の趣旨を確認するよう求めた。

だが、首相は自分と母親、秘書のそれぞれの弁護士が事件を処理しており、母親に聞く必要はないとの見解を示した。直接、母親に聞くと、新たな違法行為が発覚する心配でもあるのだろうか。与謝野馨元財務相から、首相が資金を要求したのではないかと質問された際には、首相は「母に聞いてもらってもいい」と述べていた。

首相の元秘書2人が起訴された偽装献金事件で、首相は不起訴となったが、弟の鳩山邦夫元総務相の発言などから「首相の無心」の疑いも残っている。現金授受の認識を明確にしておくべきだ。

谷垣氏は首相の元秘書や資産管理会社の社長、小沢氏らの証人喚問を改めて要求した。首相の母親についても、国会として聴取する必要性が高まったといえよう。

谷垣氏は13億円近い資金の使途についても厳しく追及すべきだった。ここが本質的な問題であり、解明されねばならない。

公明党の山口那津男代表は政治資金規正法改正に関する与野党協議機関の設置を求め、首相も同意した。秘書の監督責任を政治家に厳しく問う法改正などを協議するのは急務だが、まずは首相や小沢氏の疑惑解明が必要だ。

来年度予算の早期成立を目指す民主党は、党首討論をそのおぜん立ての一つにしか考えていないのではないか。いつまで真相解明に背を向けるのか。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/228/