鳩山政権発足から5カ月、ようやく初めての党首討論が開かれた。中身は政治とカネの問題一色。国会内の熱気とは裏腹に、残念ながら、貧しく、物足りない論戦で終わってしまった。
党首討論は、国会論戦を活性化することを目指した制度である。
政権を争う党首同士が正面から切り結ぶ。それを見て聞いて、どちらに政権をゆだねるのがいいか、有権者が品定めする。政権交代時代の最も大切な政治の舞台となるべき機会である。
そうした観点からは、きのうの討論は「不合格」といわざるをえない。
谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表とも、母親から巨額の資金提供を受けながら、納税していなかった首相への納税者の憤りを取り上げた。
小沢一郎幹事長の土地取引問題に、小林千代美衆院議員側への労組からの資金提供。民主党議員のカネの問題に、約45分の大半が費やされた。
相手の弱みを突く。反論する。国会の攻防として当然のことでもあろう。
首相は答弁で、小沢氏が国会で説明するよう「私から進言することは十分にあろうかと思う」と述べた。
秘書などの会計責任者が政治資金収支報告書にウソを書いた場合、議員本人も公民権停止にしやすくする公明党提出の政治資金規正法改正案を「望ましいもの」と評価し、こうした問題をめぐる与野党の協議機関設置に「賛成したい」と語った。ぜひ実行してもらわなければならない。
しかし、国会、なかでも党首討論は本来、予算案審議をはじめとする幅広い政策論争を通じ、将来ビジョンを競い合う場である。
経済と雇用、財政をどう立て直すのか。日米同盟の「深化」や、台頭する中国、アジアとの関係は。難しいが、いよいよ待ったなしの課題はどこかへいってしまった。「いのちを守りたい」「新しい公共を」といった首相の政治哲学をめぐる応酬も聞きたかったが、取り上げられずじまいだった。
こうした党首討論のあり方でいいのか、与野党ともに考えてもらいたい。
党首討論が充実しない大きな原因は、その時々の政治状況への思惑が優先されるあまり、開かれる機会が極めて少ないこと、時間も短いことにある。もともとは原則週1回開くのがルールだったではないか。5カ月で初めてというのはひどい。
民主党は今国会に、政治家同士の議論を活性化するため、官僚答弁を禁止する法案を提出する予定だが、これでは言うこととやることが違う。
可能な限り、毎週開く。時間を延ばす。なにより、毎回事前にテーマを決めておく。そうした工夫や改善を真剣に考えるべきである。でなければ、自民党長期政権時代の与野党対決の姿とどこが違うのかということになる。
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