先進各国の大規模な金融緩和と、中国など新興国の高成長に牽引されてきた世界経済の構図が、転換を迫られている。
いかに金融危機の再燃を防ぎ、安定成長を図るか。先進国と新興国が結束をさらに強め、構造改革や成長戦略を推進することが欠かせない。
主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は、「世界の成長は期待する水準に達していない」との認識を示した。「回復維持のため、断固たる行動をとる」とも言及した。
先進国と新興国で構成するG20が危機感を共有し、金融市場の安定確保へ、コミュニケーションを強化する重要性を確認したのは、評価できよう。
今回のG20は、中国経済の先行き不安や米国の利上げ観測を背景に、世界的な株価の乱高下や為替相場の急変動に歯止めがかからない中で開催された。
特に、混乱の震源地となった中国に対して、日米や他の新興国から、十分な説明と適切な対処を求める声が相次いだ。
中国側も、構造改革を進め、内需主導型の経済への転換を目指す意向を強調したという。
だが、麻生財務相が「建設的な話はなかった」と不満を漏らしたように、中国は肝心な改革の具体策を説明しなかった。
中国は、世界2位の経済大国として、経済安定への覚悟を実効性のある行動で示していくことが求められよう。
自国の輸出拡大を狙い、唐突に人民元の切り下げを始めるなど、身勝手な中国の政策運営に、各国は苛立ちを募らせている。経済統計が実態を正しく表していないとの疑念も一段と強まってきた。
場当たり的な政策運営を改めるとともに、情報開示を徹底し、不信感を払拭する必要がある。
G20で約束した構造改革の着実な履行も忘れてはなるまい。金融自由化や国有企業再編などでの成果が問われよう。
声明は、「先進国で金融政策を引き締める可能性が高まっていることに留意する」との表現も盛り込んだ。名指しを避けつつ、米国に拙速な利上げに踏み切らぬようクギを刺したのは、妥当だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、新興国からの急激な資金流出など、負の影響にも目配りし、慎重に政策決定すべきである。
日本への厳しい注文はなかったが、景気回復の足取りは怪しくなっている。政府・日銀は、経済再生の手を緩めてはならない。
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