いつ起こるか分からない自然災害への備えを再点検したい。
防災の日の1日、大地震を想定した防災訓練が全国各地で行われる。
政府は、首都直下地震を想定した総合防災訓練を東京都内などで実施する。負傷者を北海道や福岡県など全国7か所に自衛隊機で搬送する訓練を初めて行う。
首都直下地震では、最大で死者2万3000人、けが人は約12万人に上ると予想される。首都圏の医療機関だけでは、負傷者を収容し切れない恐れがある。
今回のような広域の医療活動訓練を通じ、救助・救援の協力体制を築くことは意義があろう。
被害の拡大を防ぐ上で、重要なのは火災の抑止だ。電気ストーブやヒーターなどが火元になりやすい。20年前の阪神大震災では、原因が分かった火災の6割が電気関係によるものだった。
火災防止には、揺れを感知し、電源を切る「感震ブレーカー」が有効とされるが、内閣府の調査では、設置率は1%に満たない。
低価格の製品なら、3000円程度で購入できる。横浜市は、高性能タイプの感震ブレーカーを配電盤に設置する市民への補助制度を導入している。7月に今年度分を募集したところ、既に予定の300件に達したという。
こうした例を参考に、他の自治体も普及に努めたい。
震源域が静岡県沖から九州沖に及ぶ南海トラフ巨大地震の対策も怠れない。高さ30メートル以上の津波の襲来が想定される地域がある。
減災のためには、迅速な避難が何より大切だ。沿岸住民は、日ごろの訓練を重ね、避難ルートを認識しておく必要がある。
日本は災害列島である。地震だけでなく、このところ頻発している火山噴火への対応にも万全を期さねばならない。
長野・岐阜県境の御嶽山で昨年9月に発生した噴火は、戦後最悪の火山災害となった。
鹿児島県の口永良部島・新岳の噴火では、警戒レベルが最高の5に引き上げられ、住民の島外避難が続く。桜島の活動も予断を許さず、住民が一時避難した。
気象庁が常時観測の対象としている47火山の周辺自治体のうち、8割以上が住民の避難計画を策定していない。
御嶽山噴火をきっかけに、活動火山対策特別措置法(活火山法)が改正され、自治体や観光施設が住民、観光客を対象にした避難計画を整備するよう義務付けた。速やかな対応が求められる。
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