世界経済の先行き懸念が高まる中、成長戦略の加速につながる予算とすることが重要だ。
2016年度予算の概算要求総額が、102兆円を上回る見通しとなった。
100兆円超えは2年連続である。歳出の伸びを今後3年で計1・6兆円程度に抑えるとする政府目標を踏まえれば、5兆円規模の削減が必要となる。
無駄を排除しつつ、いかに日本経済を底上げするか。財務省は、メリハリを利かせた査定に努めねばならない。
ポイントは、安倍政権の優先課題に予算を重点配分するため、3年連続で設けられた特別枠を、有効に機能させることである。
公共事業などの「裁量的経費」の要求額を15年度予算から10%削減する一方で、成長戦略関連の予算などについて、計4兆円の要求を認めた。各府省から、ほぼ満額の要望が集まった模様だ。
ただし、人口減対策や雇用創出を名目とした地方道路の建設といった、旧来型の要求も見られる。特別枠の趣旨に沿った事業に厳しく絞り込むべきだ。
複数の府省から、類似の要求が出されるケースも少なくない。
例えば、経済産業省と総務省はどちらも、情報通信技術を活用した企業の競争力強化や産学官連携を推進する施策を盛り込んだ。
地方創生や女性活躍などの分野でも、多くの府省が手を挙げた。財務省には、重複の解消を図る府省横断的な調整が求められる。
懸念されるのは、来夏の参院選を意識し、与党内で歳出拡大への圧力が強まっていることだ。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の妥結を視野に入れ、農林水産省は、土地改良事業やコメ農家への交付金に関する予算要求を大幅に増やした。
これに呼応して、自民党の農林部会などは、予算増額を求めることを決議した。
年末にかけて、社会保障費削減のため、医療機関に支払う診療報酬の引き下げが検討されるが、医師会を支持母体とする与党の強い反発が予想される。
16年度には、政府の財政健全化計画の集中改革期間がスタートする。その初年度から、要求額が32兆円と歳出の3分の1に迫る社会保障費に、しっかりメスを入れられるかどうかが問われよう。
国の借金は1000兆円超に膨らみ、元利返済にあてる国債費は前年度比11%増の26兆円と、過去最大になる見込みだ。歳出抑制のタガを緩めてはならない。
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