2020年東京五輪までの残された時間を考えれば、もう失策は許されない。
政府が一体となって、建設計画を遅滞なく進めてもらいたい。
政府が新国立競技場の新たな整備計画を決定した。総工費の上限は、1550億円に設定した。関連工事費を加えた旧計画の工費2651億円から、約1100億円削減した計算になる。
今回の上限額も、他国の五輪スタジアムと比べると、決して安価ではない。それでも、旧計画の甘いコスト意識を教訓に、無駄の排除に努めた姿勢はうかがえる。
仕切り直した整備計画は、新国立競技場を原則として競技専用にすることを打ち出した。これが、工費削減の最大のポイントだ。
旧計画では、五輪後のイベント収入を見越し、巨大アーチ構造による開閉式屋根の設置に固執した。今回、工費膨張の元凶をとりやめ、屋根を観客席上部に限ったのは、現実的な判断である。
観客席数は、旧計画から4000席減の6万8000席とした。五輪後に、陸上トラック部に席を増設すれば、8万席になる。
国際サッカー連盟がワールドカップ(W杯)決勝の会場の条件としている「常設8万席以上」に対応することが念頭にある。
W杯招致のメドすら立たない段階で、サッカー界に過度に配慮した印象は拭えない。
常設の陸上サブトラックの設置が見送られたのも、残念である。東京五輪は、仮設トラックで対応するというが、五輪後も競技専用として有効活用するには、やはり常設トラックは不可欠だろう。
陸上競技関係者が不満を抱くのも、無理はない。用地確保について、検討を続けるべきだ。
新たに持ち上がっているのが、完成時期の前倒し問題だ。政府は五輪開幕の3か月前の20年4月末に完成させる予定だが、国際オリンピック委員会(IOC)は20年1月までの完成を求めている。
確かに、リハーサルなどを実施する相応の準備期間は必要である。政府は、工期の可能な限りの短縮に努めてほしい。
その点で、建設業者の選定は、極めて重要になる。政府は、設計と施工を一括発注する方式を採用する。専門家の意見を聞きつつ、コスト削減と工期短縮を両立できる業者を選ばねばならない。
整備計画は、建設費の具体的な財源を示していない。東京都の財政負担や、スポーツ振興くじ(toto)の活用などについて、理解を得ることが大きな課題だ。
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