今国会で最も重要な安全保障関連法案の審議への影響を小さくする観点を重視して、自民党総裁選の日程を決めたのは、妥当である。
自民党が、安倍首相の9月末の総裁任期満了に伴う総裁選について、8日告示―20日投開票とすることを決定した。
任期満了に伴う総裁選は通常、秋の臨時国会前に行われる。今回は通常国会の大幅延長に伴い、異例の国会開会中となった。
自民党は、15日告示―27日投開票の日程案なども検討した。だが、安保法案の参院審議がやや停滞している中、法案の審議・採決や首相の外遊日程への影響を考慮し、総裁選を規定上、最も早い日程で実施することにした。
総裁選では、安倍首相が無投票で再選される公算が大きい。
首相の出身の細田派など、党内の7派閥は、そろって首相への支持を決めた。国会閉会後の10月の内閣改造・党役員人事におけるポスト獲得をにらんだ動きだ。
2012年9月の総裁選で首相と争った石破地方創生相は今回、閣内にいることもあり、出馬しない意向だ。立候補を模索する野田聖子・前総務会長は、推薦人20人を確保できないとみられる。
確かに、首相の3年間の実績を踏まえれば、対抗馬の擁立は簡単ではあるまい。衆院選2回と参院選に大勝し、強固な基盤を築いた。低下したとはいえ、40%台の内閣支持率も維持している。
昨年9月には、菅官房長官、麻生財務相ら内閣の骨格を維持しつつ、党執行部に谷垣幹事長、二階総務会長を配した。長期政権を見据えて、重厚な布陣を敷く戦略が安倍体制を安定させている。
複数の候補が総裁選に出馬すれば、今後3年間の日本の針路に関する政策論争を行う機会になる可能性はある。ただ、今の自民党にその余裕があるだろうか。
世界経済は不安定化し、日本の景気回復も足踏みしている。首相の経済政策「アベノミクス」に対立軸を掲げて、政権内で戦い、エネルギーを費やすことが、果たして生産的なのか。
安保法案は、日本と地域の平和と安全を確保するうえで極めて重要だが、国民の理解は必ずしも広がっていない。
法案審議が大詰めを迎える中、全国遊説や党員投票などを伴う本格的な総裁選を行う環境を確保するのが難しい事情もある。
難局を切り抜けるうえで、自民党が一致結束することも、一つの前向きな選択肢ではないか。
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